近くの横須賀線の線路脇の小径に,沢山の植物が,雑多に生い茂っています.
ほとんどが,いわゆる雑草に当たるものですが,どなたかが植えたと思われる植物,どこかのお宅の庭から逃げ出してきたと思われる植物もあって,季節ごとの花や実を見ながら通るのを楽しみにしています.
今,どのような花が咲いているかというと---
まず目についたのは,今の季節を代表するアジサイ.立派な花を咲かせていました.
目立つ点では負けていないタチアオイ(ホリホック)こちらもかなり立派.多年草とされていますが,すぐ衰えてしまい一年草扱いで栽培したことがあります.どなたかが,育てている!?.
以前は立派なバラも花を咲かせていましたが,今日見たのはツルバラ.ツルバラとしては大きな花を付けていました.肥料をやっている方がいるようにも思います.
なかなか趣のあるコバンソウ.最近よく見かけます.逸脱してきたのでしょうか?そして,白い花は多分ハタケニラ.こちらは雑草扱いが普通か?
この線路脇の土手には,かなり大きな木も育っています.その代表の一つが桑の木.私には種類を見分けることができないのですが---
マグワ(カラヤマグワ)?ヤマグワ?それとも他の品種?
マグワの方がヤマグワより実が長いといいますが,比べてみないことには分かりません.
ご近所のフラワーショップでは,単に「マルベリー」として販売していました.実はかなり大きめ.改良種?
桑の実が,店頭で売られている光景は見たことがありませんが(多分,傷みやすいため),とても美味しいと思います.この小径を通るときは,手の届くところの黒くなった実を一粒二粒口に入れています.他の人が食べているのを見たことがありませんが.
養蚕が全国で行われていた頃には,桑の実は初夏の生活に当たり前にある彩りとして記憶に刻まれていたに違いありません.赤とんぼの歌詞にも歌い込まれているように.
子どもたちにとっては,遊びの間に食べる大事なおやつでもあったと思います.有名な歌人も,桑の実を食べた記憶を懐かしそうに詠つています.
赤とんぼ 三木露風
夕焼 小焼の あかとんぼ 負はれて見たのは いつの日か
山の畑の 桑の実を 小籠に つんだは まぼろしか
十五で 姐やは嫁にゆき お里の たよりも たえはてた
夕やけ 小やけの 赤とんぼ とまつてゐるよ 竿の先
(この歌詞の解説はネット上に沢山ありますが,同志社大学の吉海氏のコラムが簡潔にまとめられて良いかと思います.ご一読を.ただし,桑については触れていません.
https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2018-10-09-11-19)
桑の実を詠んだ短歌
(古今短歌歳時記より)
桑のみのかく黒く熟るる水無月の雨あがり野を我は歩むも 島木赤彦 柿蔭集
たらちねの母の辺(べ)にゐてくろぐろと熟める桑の実を食ひにけるかな 斎藤茂吉 赤光
紫に土染まるまで桑の実のつぶれし小径咽喉(のど)こそばゆく 植松壽樹 渦若葉
桑の実を食みし記憶に重なりきてをさなく恋ひしひとのおもかげ 木俣修 呼べば谺
生あたたかき桑の実はむと桑畑に幼き頃はよく遊びけり 佐藤佐太郎 軽風