トビを詠んだ短歌2  タカ目タカ科.改めて鷹の一種と聞くと,一瞬驚きますが.生息数が多いだけではなく,日本人には古来よりなじみ深い鳥.腐肉食が強調されすぎていますが「容易に得られる餌動物を捕食している」猛禽類です. 手に振りて小魚みすればゆらりゆらり鳶まひくだるわが窓の上に 大岡博  鷹たらず鳶と生まれし夕空にあはれ豊かに映えてゐたるよ 馬場あき子  雨と風と花のふぶきにわしたか科わしたか目の鳶が身ぶるう 鳥海昭子  ひとひらの感じに高く舞ひ上がり鳶はをりをり冬の陽のなか 松坂弘

昨日出かけた安国論寺で,アイフォン画面に飛び込んできたトビ.その舞う姿の美しかつたこと.

鎌倉でも,いえ,日本中どこでも沢山見かける,タカの一種.

改めて鷹の一種と聞くと,一瞬ビックリしてしまいますが.

https://peerj.com/articles/14505/

現在日本での生息数が多いだけではなく,日本人には古来よりなじみ深い鳥ですね.

日本書紀には,「金鵄(きんし)」が描かれます.神武天皇長髄彦(ながすねひこ)征伐のとき、天皇の弓の弭(ゆはず)にとまった日本国語大辞典金のトビです.

後世になると,その地位はかなり下がってきて,「鳶が鷹を生む」が「平凡な親がすぐれた子を生むたとえ」として用いられます.

現代日本では,「トビは腐肉食」が強調されすぎていて(例えばhttps://www.city.sapporo.jp/zoo/),このこともトビの地位の低下を後押ししているのかもしれません.腐肉やヒトの残飯をあさりはしますが,魚や小鳥,ネズミ,昆虫等を幅広く捕らえています.

(「生息地や季節によって容易に得られる餌動物を捕食している」とのこと:

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/23900/p247.pdf https://rcin.org.pl/Content/45202/PDF/WA058_61075_P257-T34_Acta-Ornith-Nr-1-7.pdf 

 

トビは,世界中に分布している「最も成功した猛禽類」.英語ではBlack Kiteと呼ばれています.

 

 

以下はearth lifeという英文解説から(一部抽出・改変したもののDeepL翻訳)

 

トビ Black Kites

https://earthlife.net/black-kites/

トビ(The Black Kites 黒トビ,Milvus migrans)は,eagles(ワシ),buzzards(英ノリス/米アメリカハゲタカ),harriers(チョウヒ)など他の多くの昼行性猛禽類を含むタカ目タカ科の中型猛禽類です.上昇気流に乗って滑空する姿や,角度のついた翼と特徴的なフォーク状の尾で識別は容易です.

分布

トビはユーラシア大陸の温帯から熱帯,そしてオーストラレーシア(南洋州:オーストラリア,ニュージーランドおよびその付近の南太平洋諸島の総称)の一部に広く生息しています.(不思議なことに,インドネシア群島では見られない)

ヨーロッパの個体数は少ないものの,南アジアの個体数は非常に多い種です.

ヨーロッパと中央アジアの亜種(それぞれM. m. migrantsとM. m. lineatus)は渡り鳥で,冬には熱帯に移動します.温帯地域の個体群は移動する傾向がありますが,インドの亜種M. m. govinda(Pariah Kite)やオーストラリアの亜種M. m. affinis(Fork-tailed Kite)のような暖かい地域の種は留鳥です.

https://earthlife.net/black-kites/

食餌

他の猛禽類とは異なり,好機をうかがって獲物をあさる習性( they are opportunistic hunters)を持ちます.

クロトビは餌を探すため,上昇気流に乗って滑空したり急上昇したりする姿をよく見かけます.

飛翔は浮力があり,簡単に方向を変えながら滑空します.脚を下げて急降下し,小さな生き餌,魚,家庭ごみ,腐肉をついばみます.

 

トビを詠んだ短歌2

(古今短歌歳時記より)

手に振りて小魚みすればゆらりゆらり鳶まひくだるわが窓の上に  大岡博 南麓

 

暁の波のとどろく渚には鳶が降りをりこゑも鳴かなく  佐藤佐太郎 しろたへ

 

氷湖の雪巻き上げて吹く疾風に流されて舞うとびは鳴きつつ  武川忠一 氷湖

 

群れなさぬ鳶のいとしさ風受けて岩に塑像のごとく立ちゐる  竹内温 蟹

 

羽搏(う)ちて掠め去りつつ鳶鳴けり澄みたるこゑの油垂るごと  片山貞美 鳶鳴けり

 

鷹たらず鳶と生まれし夕空にあはれ豊かに映えてゐたるよ  馬場あき子 晩花

 

雨と風と花のふぶきにわしたか科わしたか目の鳶が身ぶるう  鳥海昭子 花いちもんめ

 

ひとひらの感じに高く舞ひ上がり鳶はをりをり冬の陽のなか  松坂弘 春の雷鳴