菊という名前
世界で最も菊を愛する中国と日本.ともに名前としては「菊」が使われています.
https://www.google.com/search?中国開封菊文化祭
https://www.google.com/search?日本の菊展
日本に菊が渡来したとき(奈良時代後半〜平安時代初期)に,この漢字も同時にもたらされたのでしょう.
ところで,「キク」という読み方は,音読みですか訓読みですか?という問いかけがネット上にありました.
正解は,「音読み」.
(吉海直人 菊にまつわるお話
https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2015-08-31-09-00)
中国の古い時代には菊を「kuk」(くく)と発音していたそうで,この音が転化して「きく」となったと考えられます.
漢字の音読みは,もちろん意味は通じても,一般的に使われる日本語名になっている例は,それほど多くはないように思いますが---実際には?
なお,漢字の菊は,「艸と、音符匊キクとから成る」(角川字源)とのこと.
菊の英語名は,chrysanthemum.
語源をさかのぼると「黄金の花」を意味する言葉だそうです.初めは黄色い花だったためと思われます.
https://www.etymonline.com/word/chrysanthemum
ラテン語のchrysanthemum,さらにさかのぼれば,ギリシャ語のkhrysanthemon(意味は"marigold"、文字通り「黄金の花」).khrysos「金」+ anthemon「花」.
ただし,最近では,chrysanthemumを省略したmumが一般名として多様されているようです.
上記の語源のサイトetymonlineには,「あまり信用ならない(probably unreliable)」としながらも,言葉使用のトレンドを図示しています.
この図では,近年は圧倒的に「mum」が用いられている!
2019年:chrysanthemumは,0.15/millionに対し,mumは6/million.
https://www.etymonline.com/word/chrysanthemum
https://www.etymonline.com/word/mum#etymonline_v_19262
菊を詠んだ短歌3
(古今短歌歳時記より)
まくらべに黄菊の鉢を置きしから一夜の夢にきみを見にけり 岡野直七郎 林の道
宿酔(ふつかよひ)の濁りはくらき目を伏せて何にもの云ふ残菊の花 斉藤史 うたのゆくへ
花瓶のくさぐさの菊一花はま白にひらきてわれと向きあふ 窪田章一郎 六月の海
道のべに咲く菊の花日にうとき冬の光に花びら強し 佐藤佐太郎 黄月
菊の花冴えつつ曇の下に咲き何にいらだちくるおもひぞも 宮柊二 日本挽歌
菊の香に手術のあとの友眠るこの夜ただに惜しひとつ身命 大野誠夫 象形文字
冷えびえと細きはなびら十方に咲ききはまりて菊ひとつたつ 長澤一作 雪境
菊を焚く年々にしていや寒き心の色の白菊を焚く 馬場あき子 晩花
髪に挿す黄菊白菊にほへども狂はねば告げ得ざらむこころ 藤井常世 草のたてがみ
ゆっくりと菊人形の義経の顔を伝わる一筋の雨 小高賢 耳の伝説