菊を詠んだ短歌1  洋ギクを多く見かける昨今ですが,今でも和ギク中心の菊花展は秋の風物詩.江戸時代『当世後の花』には現在つくられている花形がほとんど全部載せられている」とのこと. 露ながら折りてかざさむ菊の花老いせぬ秋の久しかるべく 紀友則  秋風の吹きあげに建てる白菊は花かあらぬか波の寄するか 菅原道真  心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花 凡河内躬恒  いく秋に我があひぬらむ長月のここぬかにつむ八重の白菊 西行

日本の秋の花と言えば,古来よりキクが定番.

 

和ギクは仏事用というイメージが定着しているせいか,一般のフラワーショップの店頭では,ポットマム,スプレーマム,ポンポンマムなどの洋ギクが主流のようにも思いますが---

https://greensnap.co.jp/columns/chrysanthemum_variation

 

今でも和ギク中心の菊花展は秋の風物詩といえます.

先日出かけた大船フラワーセンターでもよしず張りの小屋に和菊が並べられていました.

 

鑑賞用に育てられているキクは,栽培種.

キク目 Asterales,キク科 Asteraceae,キク属 Chrysanthemum,

キク Chrysanthemum ×morifolium

 

近縁の野生種から改良されてできたものと考えられていますが,起源については諸説あり不詳.

https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=927

https://kotobank.jp/word/キク-763829

 

日本へは,奈良時代末〜平安時代に渡来したと考えられ,『万葉集』には歌われず,『古今和歌集』や『源氏物語』などから登場.

https://kotobank.jp/word/キク-763829

江戸時代正保年間(1644〜1648)に中国から改良品種が導入され,その後,日本での改良も急速に進み,「1713年の『当世後の花』には現在つくられている花形がほとんど全部載せられている」とのこと.

https://kotobank.jp/word/キク-763829

 

https://www.jataff.or.jp/kiku/kiku03.htm

 

菊を詠んだ短歌1

(古今短歌歳時記より)

 

露ながら折りてかざさむ菊の花老いせぬ秋の久しかるべく  紀友則 古今集

 

秋風の吹きあげに建てる白菊は花かあらぬか波の寄するか  菅原道真 古今集

 

秋の菊にほふかぎりはかざしてむ花よりさきと知らぬ我が身を  紀貫之 古今集

 

心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花  凡河内躬恒 古今集 小倉百人一首

 

秋の夜も深くなるとやきくのはなかげさへとひて君にみゆらん  伊勢 古今六帖

 

菊の露若ゆばかりに袖ぬれて花のあるじに千代はゆづらむ  紫式部 紫式部

 

朝まだき八重咲く菊の九重に見ゆるは霜のおけるなりけり  藤原長房 後拾遺集

 

山川の菊のした水いかなれば流れて人の老いを堰くらむ  藤原興風 新古今集

 

九重の外(と)の重(へ)もにほふ菊の宴(え)に詞のつゆもひかりそへつつ  藤原定家 拾遺愚草

 

いく秋に我があひぬらむ長月のここぬかにつむ八重の白菊  西行 山家集