昨日にもまして秋晴れの日.
英勝寺の駐車場で立派なススキを見たことを思いだし,出かけてみましたが,残念なことに,今年の花穂はやや貧弱.
ただ,英勝寺前の線路の路肩にススキの大群が自生していました.
線路内には入れませんが,土手から花穂を見上げて撮影.
キラキラ耀いた花穂は青空に映えていました.
以前,荒れ地を花壇に改造しようとしていたことがあります.ススキはホントにやっかいな相手で目の敵にしていましたが---
こうしてゆったりした気持ちで眺めると,他の花にはない美しさを感じます.
枕草子 64段
草の花は撫子(なでしこ),唐(から)のはさらなり,-----
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これに薄(すすき)を入れぬ,いみじうあやしと,人言ふめり.
秋の野のおしなべたるをかしさは,薄こそあれ.穂先の蘇枋(すおう)にいと濃きが,朝霧に濡れてうちなびきたるは,さばかりの物やはある.
秋の果てぞ,いと見所なき.色々に乱れ咲きたりし花の,かたもなく散りたるに,冬の末まで頭の白くおほどれたるも知らず,昔思ひいで顔に風になびきてかひろぎ立てる,人にこそいみじう似たれ.よそふる心ありて,それをしもこそ,あはれと思ふべけれ.
〈現代語訳〉
https://esdiscovery.jp/knowledge/japan5/makura037.html
草の花は撫子(なでしこ),唐のものは言うまでもないが,----
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この中に薄(すすき)を入れないのは,とても怪しい(とても納得できない)という人もいるだろう.
秋の野原の情趣が漂う風情というのは,薄あってのものなのである.穂先が赤くなった薄が,朝露に濡れて風になびいている姿は,これほどに素晴らしいものが他にあるだろうか.
しかし秋の終わりになると,本当に見所のないものになる.色々な色彩で咲き乱れている秋草の花が,跡形もなく散ってしまった後,冬の終わり頃に頭がもう真っ白に覆われてしまったのも知らずに,昔を思い出しながら風に顔を吹かれてゆらゆらと立っている,これは人間の人生にとても良く似ている.それに寄り添うような心があって,それを哀れと思っているのである.
有名な山上憶良の歌では「尾花」が使われているので,これが薄の古名かと長い間思っていました.
しかし,「尾花」は花穂のことで,獣の尾に似ていることからつけられた名前だそうです.
萩(はぎ)の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(をみなへし)また 藤袴(ふぢばかま) 朝貌(あさがほ)の花 山上憶良 万葉集 第八巻 1538
万葉集でもススキが使われています.
▽婦負(めひ)の野の すすき押しなべ 降る雪(ゆき)に 宿(やど)借る今日(けふ)し 悲しく思ほゆ 高市連黒人(たけちのむらじくろひと) 万葉集 巻十七 :4016
(婦負(めひ)の野のすすきをなびかせて降る雪(ゆき)の中で宿を借りる今日は悲しく思われます. たのしい万葉集 https://art-tags.net/manyo/seventeen/m4016.html )
▽ススキ 文化史 ニッポニカ ススキとは - コトバンク
ススキは屋根材として有史前から利用されていたと考えられ,『万葉集』にもその情景が歌われている.
「秋の野の美草(みくさ)刈りふき宿れりし宇治の京(みやこ)の仮廬(かりいほ)し思ほゆ」(巻1)の美草のような表記のほか,『万葉集』にはススキの名で17首,オバナが19首,カヤが10首みられる.うち5首は庭のススキを詠む.[湯浅浩史]
ススキは
イネ目 Poales,イネ科 Poaceae, ススキ属 Miscanthus,
ススキ M. sinensis
花のつくりをながめたことはありませんが,ネットからお借りした理科の教科書的には次の通り.
花の分類③:イネ・ススキ・ヒマワリ・ホウセンカ―「中学受験+塾なし」の勉強法
NHKの動画も公開されています.
ススキの漢字表記「薄」は,中国での用法に合致しない、日本でのよみ方.
「芒」とも表記しますが----
中国語でススキは芒草.「芒」一字では,“「のぎ」の意をあらわす”(角川 字源)とのこと.知りませんでした.「のぎ」は上図花のつくりをご参照ください.