ビーチ・ボーイズの「サーフィン・USA」.
The Beach Boys - Surfin Usa - Remastered 2014
レスリー・ゴーアの「涙のバースデイ・パーティ」.
Lesley Gore - It's My Party 1964
こちらは,1963年にアメリカのヒットチャートをにぎわせていた名曲たち.
そんな中,ある日本の歌が1位を獲得しました.
sukiyaki kyu sakamoto - Google 検索
Sukiyaki (Ue o Muite Arukou) - Kyu Sakamoto (English Translation and Lyrics)
全米で1位を獲得した日本の歌は,今も,この曲だけです.
その歌は,国境を越えた.
(映像:曲を聴かされて口ずさむ外国人たち)
「ララララ---.この曲は知ってるよ.『SUKIYAKI』だろ?とても感傷的で,泣けてきちゃうんだ」
「携帯のプレイリストに入れてる.お気に入りの曲だよ」
この曲を歌ったのは,まだ10代の坂本九.
当時の歌謡界で,その歌声は異端だった.
「歌がストレートに歌えなくてね.バイブレーションがついちゃうの.歌の音がとれないような歌手だったのよ」
しかし,彼の歌はアメリカで発売されると,すぐにヒットチャートを駆け上がり,ビルボード誌で1位を獲得(=全米音楽チャート1位).3週にわたってトップに君臨し続ける.
1963年6月15日、坂本九「SUKIYAKI」が米ビルボードチャートにて1位を獲得 | Daily News | Billboard JAPAN
その快挙は,誰も予想できないものだった.
「アメリカで1位になるなんて,思ってもいなかった.ビックリしてたっていうしか言いようがない」
なぜ,日本語の歌が,全米を制したのか?
ヒットの裏にあったのは,異国の地で,この歌に思いをはせた日系人たち.「誇りになったんだよ.以前は日系人であることを恥じていたけど」
世紀の名曲---その知られざる舞台裏.
アナザーストーリーズ 運命の分岐点
運命の分岐点は1963年6月15日.
「上を向いて歩こう」が,ビルボード誌で1位を獲得した日です.
アメリカでのヒットをきっかけに,世界60カ国以上でカバーされ,1300万枚もの売り上げを記録したこの曲.
第一の視点は,この曲を歌った坂本九 本人.
視点1 歌手 坂本 九
「上を向いて歩こう」のヒットで,一躍,日本を代表する歌手となった坂本九..
実は,当時の歌謡界では,決して歌がうまい歌手という評価ではありませんでした.
そんな坂本九に,この曲を歌わせたい.そこにあったのは,彼の才能を信じ,曲を託した人びとの思い.
この曲との出会いが,1人の若者の運命を変えたアナザーストーリーです.
彼の自宅には,今もその記憶が大切に残されている.
(ピンポーン)「はい」
取材者「気になるんですけど,あのお写真」
「あれ?あれは最後の曲『心の瞳』という曲を作ったときにジャケット用に撮った写真なんですけども,気に入ってて」
「坂本九」の歌詞・動画・ニュース一覧|歌詞検索サイト【UtaTen】
「えっと---こちら.この上にずっとあるのが,いろんな国で出したレコードジャケットっていうんですか.69カ国とかいわれていますけど,ねえ,すごいなあと思いながら---」
1961年に日本で発売され,累計1300万枚以上を売り上げたといわれる「上を向いて歩こう」
坂本九 / 上を向いて歩こう (EP) - キキミミレコード
しかし,この曲と出会う前の坂本九は,まだ,ソロデビューもしていない若者だった.
柏木由紀子「みなさんが思っているような坂本九=上を向いて歩こう,生きざまっていうか---坂本九のそのままっていう感じですね.あれに全部が含まれているのかな〜みたいな」
生前,その曲について,多くを語らなかった坂本九.彼にとって,「上を向いて歩こう」はどのようなものだったのだろうか.
それは,半世紀以上前の,まだ,東京タワーができたばかりの頃.
ニッポンでは,若者の間ではロカビリーと呼ばれる音楽が,一大ブームを巻き起こしていた.そんな若者の一人が,後に「上を向いて歩こう」を歌うこととなる坂本九.当時高校生だった彼は,ほうきをギターになぞらえて,クラスメートの前で,あるロックスターのまねを披露していた.
それが,ロックの王様,エルヴィス・プレスリー.
Elvis Presley - Jailhouse Rock (監獄ロック / エルヴィス・プレスリー)
エルヴィスに憧れた少年は,高校に通うかたわら,ドリフターズ(井上ひろしとドリフターズ)にバンドボーイとして加入.
付き人をしながら,米軍キャンプを回る日々.
【西条昇のドリフターズ史研究】坂本九や井上ひろし在籍時のドリフターズの写真:西条昇ブログ お笑いエンタメ人生!:SSブログ
その初舞台で披露したのもエルヴィスのモノマネだった.当時の坂本がうかがい知れる貴重な映像が残されている.
(映像 Elvis "Troble" を歌う坂本九
If you're looking for trouble
You came to the right place
If you're looking for trouble
Just look right in my face
I was born standing up
And talking back
My daddy was a green-eyed mountain jack
Because I'm evil, my middle name is misery
Well I'm evil, so don't you mess around with me)
Elvis Presley - Trouble w/lyrics
学業とバンドボーイの二足のわらじ.寝る間も惜しんで,坂本はデビューのチャンスをうかがっていた.
妻・柏木由紀子「米軍の所へ行って歌う.それも付き人をしているときかな.朝方帰って来て,新宿駅のろころに着いて,みんながお風呂に入るのを,背中流したりとかやって,それから学校に行ったっていう話は聞いたことありますけど.だから,学校来ると寝ちゃってみたいな」
そんなある日,彼は自分の運命を変える一人の女性と出会う.
芸能事務所で働いていた曲直瀬(まなせ)信子.水原弘や森山加代子を世に送り出した敏腕マネージャーだった.
彼女はライブの終わりの打ち上げの席で,坂本九を売り込まれた.
曲直瀬「歌舞伎町のラーメン屋さんの2階に行ったんですよ.そしたらね,みんな部屋に入ってきて,そしたら,その男の子がね,部屋と廊下の境の敷居の所に座ってるの.あの子足が痛いだろうなと思いながらね.普通の男の子でね.『にんじん』の映画みたいなボサボサの頭の髪でニキビ面で.
それで,背もそんなに大きくないしね.ん〜って思ったんですよ」
人なつっこい性格で,先輩からもかわいがられていた坂本は,バンドのマスコット的な存在だった.
そんな彼の悩みはニキビ.そのコンプレックスこそが,歌手になる原点だった.
“オレの顔はこんないまずいけど,歌手になれば女の子もキャーキャーさわいでくれる.
そんな考えが,心の底にあったことはたしかだ. 1967年 坂本九 講演会パンフレット”
しかし,当時の歌謡界において,坂本の歌声は異端だった.
曲直瀬「大体あの人はね,歌がストレートに歌えなくてね.バイブレーションがついちゃうの.あんまりちゃんと歌えないから.音痴っていうと言葉がそのままになっちゃうけど,歌の音がとれないような歌手だったの」
引き受けた手前,投げ出すわけにもいかない.思い悩んだ曲直瀬は,あるアイデアを思いつく.
曲直瀬「どうしたらいいんだろう,どうしたらいいんだろう.そうだ,あの男の子を,もうお茶の間にいるみたいな感じでね,あのキャラクターのまんまで,テレビから送り出せないもんだろうかって.そう思ったんですよ」
目をつけたのは,当時,普及し始めたばかりのテレビ.
今までの銀幕のスターとは一味違う,コミカルなキャラクターを前面に打ち出した.
タレントとして売り出された坂本は,一躍,お茶の間の人気を獲得.その親しみやすさから「勝手口のスター」と呼ばれた.
しかし,そんな坂本に歌手としての素質を見出していた男がいる.
作曲家の中村八大.
日本屈指のミュージシャンとして活躍し,作曲家としても「黒い花びら」などのヒットを飛ばす売れっ子だ.
曲直瀬「森山加代子がすごく売れていたとき,八大さんのコンサートに森山加代子を入れてくれって言って,打ち合わせに行ったらば,『ねえ,坂本九もどうだろう?』って言うんで,私ビックリしちゃって.タイプじゃないからね,八大さんの.八大さんは,雪村いづみとか江利チエミとか,そういう歌手が好きだったから,坂本九っていうのは,全然違うからね.へ!?って思ったんだけど」
なぜ,中村八大は坂本九に注目したのか?
(続く)
Izumi Yukimura - THE CALL OF THE FAR AWAY HILLS
江利チエミ テネシー・ワルツ(3) 1962 / Tennessee Waltz
1. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/08/003000
2. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/09/003000
3. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/10/003000
4. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/11/003000
5. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/13/001500