一人暮らしを選んだ後,実際どうやって生活を作っていくのか? 奥原さえ子さん.重い知的障害と自閉症があり,言葉で意思を伝えるのが難しい.ヘルパーが交代で付き添うさえ子さんの自立生活. 19年前に始まった.母親が亡くなり,父親も体調を崩してしまった.急きょ始まった自立生活では,問題が続出.答えが見つからなくても,さえ子さんの生活は続く.日々,現場で試行錯誤をくり返してきた.「フフフフフフ.魅力的な人なので,楽しい」NHKEテレ/バリバラ 障害者殺傷事件3年 まちで暮らす 3

障害者殺傷事件3年 まちで暮らす NHKEテレ/バリバラ

初回放送 2019年7月25日(木)夜8:00

アンコール 2019年12月5日(木)夜8:00

 今から3年前(2016年7月26日),相模原市の障害者入所施設で,19人が殺害される事件が起きた.「障害者は不幸しか生まない」 元職員の男の言葉が,衝撃を与えた.

障害のある人は,事件をどう思っているのか?「バリバラ」は取材をしてきた.

 

NHKEテレ/バリバラ 障害者殺傷事件3年 まちで暮らす 1 ( + NHK首都圏ネットワーク「やまゆり園」運営法人見直しへ)

重傷を負った尾野一矢さん.ある決断を迫られている.「施設に戻ることは考えていない?」「ないです.ぜひ,一矢にも健常の人と同じようなね,暮らすことをさせてあげたいな」ここへは戻らないことにした尾野さん.

実は2年前に取材したときには,全く逆の考えだった.

 

NHKEテレ/バリバラ 障害者殺傷事件3年 まちで暮らす 2

一人暮らしに向けて,一矢さんは,去年夏から,定期的にヘルパーと過ごしている.施設で暮らしてきた一矢さん.食事を自分で選べる生活ではなかった.一矢さん「これ」 ヘルパー「前は言わなかった自分の意思を,やりとりする場面が出てきたりしているみたいですよ」 

自立に向けて〈point 本人の意思を確かめるのが難しい!〉〈point “一人暮らし”の理解,選択が難しい.⇒まず体験させる〉〈point 子ども時代から“ヘルパー付き自立”を体験〉

  

NHKEテレ/バリバラ 障害者殺傷事件3年 まちで暮らす 3

 

一人暮らしを選んだ後,実際どうやって生活を作っていくのか?

支援者にとっては,難しいところも多いそうよ.

 

取材したのは,大阪にある知的障害者が通う事業所.

(いばらき自立支援センター「ぽかぽか」)

奥原さえ子さん「大丈夫よ.見てもらうし」

 

ここのサポートを受けて一人暮らしをしているのが,奥原さえ子さんだ.

(映像 作業所内.昼食の準備中)

さえ子さん「カレーだけ.カレーつけたらあかんよ」

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http://www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.html?i=1109

さえ子さんには,重い知的障害と自閉症があり,言葉で意思を伝えるのが難しいという.仕事は昼食づくり.

作業の横で献立表を撮影していると,

さえ子さん「あ〜」

カメラマン「ビックリした」

スタッフ「これはどういうこと?」

作業スタッフ「何か,メニュー表にはこだわりがあるのか,他の方が見ているときもじっと目で追って『持っていかへんか』と気にしている.それで怒ったんじゃないかと思うんですけど」

 

12人ほどのヘルパーが交代で付き添うさえ子さんの自立生活.

それは19年前に始まった.

さえ子さん「オロナイン,オロナイン,オロナイン」

 

それまで家族と暮らしていたが,母親が亡くなり,父親も体調を崩してしまった.

そこでスタッフが,アパート暮らしを提案.

しかし急きょ始まった自立生活では,問題が続出.

突然,ヘルパーにかみつき,夜な夜な,自分の服を破って,買い直すのに,月3万炎上かかることも.

問題の数々に,耐えきれず,一週間で辞めていったヘルパーもいた.

藤原刀季子さん(ヘルパー/元作業所スタッフ)「何でこんなことをしているんだろう.いつまで続くんだろう自立生活できるのかと思ったときに,ボロボロ泣いてしまって.

『なんでさえ子さん,こんなことになるんだろう』って.

独り言で私が言ってたら,そういう時は,すごく優しいんです.

『どうしたんや?』みたいな感じで.泣いてるのに『どうしたん?刀季子さん』みたいな顔して.心配してくれたり」

 

問題行動の裏には,何か訴えたいことがあるはずだ.

ヘルパーたちは,さえ子さんの気持ちを考え続けてきた.

 (映像 ヘルパーたちによる話し合い場面)

「自宅では,土日と昼食は,最後の一口を吐くことが多いです」

この日の話題は,ごはんを吐き出してしまうこと.特に昼は,好き嫌いに関係なく,ほとんど毎日,吐いている.

 

「吐かずに食べようなって言ったら『それはダメ』って言う」

「食べる時と食べない時を自分で決めたのかなと」「決めた?」

「気持ちよさとかがあるんだったら,わからへんで,わからへんけど」

「ほんまは,さえ子さんに(理由を)聞いて答えてもらうのが一番正解なんでしょうけど,それができなので,ここで,経験と自分たちが見たことをつきあわせて,じゃあどうするっていう」

 

答えが見つからなくても,さえ子さんの生活は続く.

ヘルパーたちは,日々,現場で試行錯誤をくり返してきた.

 

(映像 キャベツを切るさえ子さん)

さえ子さんの日課.夕飯づくり.

動作が激しく,頻繁に食器が割れていた.

当初,ヘルパーたちは,皿を割るたびに,さえ子さんを注意.しかし,それがお互いのストレスになっていた.

藤原刀希子さん「本人は片づけてるつもりでも,荒い,雑なんで,割れるだけのことなんで.注意されて,『いーっ』となって,ガブッと噛んだりする.

 

(映像.さえ子さんと藤原さん.テーブルについて)

さえ子さん「いただきます」藤原さん「いただきます」

 

藤原さんたちは,皿をプラスチックにするなど工夫.さえ子さんが安心できる生活を一番に考え,支え続けて来た.

 

(映像 さえ子さん素早く食べ終えて,テーブルを離れカーテンの奥の部屋へ)

藤原さん「取り残されてしまいました」

(さえ子さん,戻ってきて,日課?のメモの交換?)

 

(映像 スーパーの食料品売り場.さえ子さんとヘルパーの買い物.次々商品を籠へ入れるさえ子さん)

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http://www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.html?i=1109

家の外でも,さえ子さんは,自分のペースで突き進む.それでもヘルパーは,無理におさえることはしない.

(陳列棚を見ている客を押しながら商品を手にするさえ子さん)

ヘルパー「ごめんなさい」

地域の人とトラブルにならないよう,間に入って,見守り続ける.その中で,さえ子さんは,毎日,自分らしく生きている.

 

(映像 仕事を終え,出てきたヘルパーに,声をかけるスタッフ)

スタッフ「お疲れさまでした.さえ子さんと過ごすのは?」

新有紀さん「あ〜なんだろう.すごく魅力的な人.純粋だし」

(中からさえ子さんの声)

さえ子さん「かわもとさん」

新有紀さん「フフフフフフ」

(さえ子さん,窓を開けて)

さえ子さん「かわはらさん」

スタッフ「はい.川原です」

さえ子さん「撮影」

スタッフ「撮影です」

さえ子さん「手袋オーバー」

スタッフ「撮影してます」

さえ子さん「撮影してます」

スタッフ「ちょっと,コメント撮ってる」

新有紀さん「フフフフフフ.魅力的な人なので,楽しい」

 

続く