相模原施設殺傷事件
相模原市の知的障害者施設で,46人が殺傷された事件から明日で1年です.
殺人などの罪で起訴された,施設の元職員植松聖被告が,障害者への殺意を持ったきっかけの一つとして,事件の半年ほど前,アメリカ大統領候補だったトランプ氏の演説のニュースを見ているときに,周囲にいた他の職員に入所者の殺害について言葉にしたと供述していることが,捜査関係者への取材でわかりました.
捜査当局は,自らの考えを正当化する理由にしていると見ています.
NHKニュース7 7月25日火曜日
【キャスター】鈴木奈穂子,【サブキャスター】高井正智,【気象キャスター】平野有海
植松被告から送られてきた手紙です.
NHKは事件の真相に迫ろうと,先月から今月にかけて,横浜拘置所に勾留されている植松被告(27)本人と4通の手紙のやりとりを行いました.
手紙には,「意思疎通がとれない人間を安楽死させるべきだ」「障害者を育てることは莫大なお金と時間を失うことにつながります」と,事件から1年経っても,重い障害がある人たちに対する差別的な考えが書かれていました.
これまでの手紙には犠牲者や負傷者,それに遺族への謝罪の言葉はありません.
尾野剛志(たかし)さん(73)です.事件で息子の一矢さん(44)が首や腹などを切られて大けがをしました.
被告の手紙について
「自分を正当化しようと書いているだけなので,だから,反省の色など,サラサラあるわけじゃないしね.自分の気持ちが耐えられないぐらい情けない.悔しい」
手紙では,事件を起こそうと考えたきっかけについても聞きました.
植松被告は,「やまゆり園で見たニュースが始まりです」としています.
その上で,「ニュースでは,過激化組織IS,イスラミックステイトの活動と,トランプ大統領の選挙演説が放送されました.世界には不幸な人たちが沢山いる.トランプ大統領は,真実を話していると思いました」と答えました.
捜査関係者によりますと,植松被告は,これまでの調べでも.「事件の半年ほど前,アメリカ大統領候補だったトランプ氏の演説のニュースを施設のテレビで見ているときに,周囲にいた他の職員に,入所者の殺害について言葉にした」と供述しているということです.
植松被告が,どのような演説の内容を聞いたのかや,どう影響を受けたのかはわかっていません.
捜査当局は,「自らの歪んだ考えを正当化する理由にしている」とみています.
植松被告の手紙を,犯罪と差別の関係に詳しい専門家が分析しました.
東京造形大学 前田 朗 教授
「恣意的に人間の尊厳が認められる人と認められない人を作り出している.事件を引き起こして,その重大性に気づくチャンスがあるわけですよね.事件そのもの,事件に対して警察や世間やメディアがどういう対処をしたか.1年後も同じように考えているとすれば,相当根強い差別意識が心の中でも固まっているだろうと考えられます」
津久井やまゆり園の入所者の家族で作る家族会の会長,大月和馬さんは次のように話しています.
「家族としても,『障害者はいらない』という言葉は,私たちにとって本当に心を傷つけているんですよね.非常に間違った言葉を世の中に発しておりますんで,それを是非取り消して欲しいなと,本当に心から思ってます」