2品種あって,多くは黄色がかった新芽.一本だけ赤い新芽.
ナンテンの新芽で検索すると,かなりの数の画像がアップされていています.多数の方が目にとめるだけの美しさ.ナンテンは紅葉・赤や白の実だけではありません.
ナンテンは縁起の良い植物とされています.
“ナンテンは難転に通じるとして,縁起植物に扱われ,盗人,火災,魔除(まよ)けに植えられた.”(日本大百科全書(ニッポニカ) ナンテン/なんてん / 南天) ナンテン(なんてん)とは - コトバンク
「難転に通じる」という語呂合わせ!
それ以上の深い意味はないように思っていましたが----
寺院での祭事にも用いられるとのこと:
“京都鞍馬寺(くらまでら)の祭事,竹伐会式(たけきりえしき)や火祭りにはナンテンの小枝を身につける.”(日本大百科全書(ニッポニカ) ナンテン/なんてん / 南天) ナンテン(なんてん)とは - コトバンク
京都・鞍馬寺「竹伐り会式」2017 | wakasa15thfd 鞍馬寺 竹伐り会式 2013年 | 京都旅屋 ~気象予報士の観光ガイド・京都散策~
また,京都の「鬼門除け」を調べた文献 ( “藤野正弘 「鬼門除け」に見られる京都の魔除け習俗の研究” 京都産業大学 学術リポジトリ ) によれば,
京都では「鬼門除け」トップがナンテン.
“京都田のう宇地区・調査対象地域666「両側町」(行政単位の「町」ではなく、通りを挟んだ両側を一つの単位とした)で鬼門除け総数1,098 を確認.
そのうち,ナンテンの植栽は132,ナンテンの植木鉢が332,ナンテンと柊の植木鉢8”
ナンテンは鬼門除け断然トップ.2位は単なる四角い囲み.植栽2位は柊.
ただし,上記文献の中での記述によれば,
“民俗学大辞典では,植栽として用いるのはナンテンではなく,「梅・桃・梨・槐を植えたり、植え込み」”
一方,現役陰陽師の方のブログでは
「北東の方角に木を植えたり、木を植えた鉢などを置くことはお勧めできます。特に楓(かえで)や樫(かし)の木などの強い木を置くことで、鬼門封じの効果があります。ただし、実をつける木はいけません。実を成すという本来は喜ばしいことが、災厄にさらされることになりますのでご注意ください」.陰陽道とは何か【その3】: 第27代目陰陽師・安倍成道 公式ブログ
少なくとも京都の一地区では,南天は鬼門に植える樹木として認められ,現在多く植えられていることは確か.
特別ないわれを持つ風習ではない「語呂合わせ」,“難を転じる「ナンテン」” 信仰は,広く民間に受け入れられたようです.
“南天研究所”のサイトによると,広まった時代はかなり古いとのこと.
“江戸の百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』には,「南天を庭に植えれば火災を避けられる.とても効き目がある(現代語訳)」という記述があります.” 南天研究所|南天豆知識
(同じ文章が沢山のサイトに転載されています.和漢三才図会の原文を探そうとしましたが見付けられませんでした. yachikusakusaki)
しかし,「ナンテンの厄除けとしての効能云々は,庭木や生け花としてナンテンが認められた後のこと」は,銘記すべきでしょう.
ナンテンは鎌倉時代から記録され,藤原定家(ていか)は1230年(寛喜2),中宮権大夫(ちゅうぐうごんのだいぶ)が前栽(せんざい)に植える,と『明月記』に書き留めた.足利義満(あしかがよしみつ)が建てた金閣寺の夕佳亭(せっかてい)には,ナンテンの床柱が使われたとの伝承がある.いけ花では最古の花道書『仙伝抄(せんでんしょう)』にすでに取り上げられている.元禄(げんろく)(1688~1704)のころには普及し,園芸品種が作出され始め,『草木錦葉集(そうもくきんようしゅう)』(1829)には斑入(ふい)りを中心に41の品種が載る.明治年間には120品種に増えたが,その後衰退し,現在は40品種ほどが維持されている.(日本大百科全書(ニッポニカ) ナンテン/なんてん / 南天) ナンテン(なんてん)とは - コトバンク
ナンテン(南天)の漢名は南天竹または南天燭(日本国語大辞典).
南天竹は,現代中国語でも用いられているようです(ナンテン⇒南天竹Nántiān zhú グーグル翻訳).
漢名「南天竹」を受けて,英語では,“heavenly bamboo(天国の竹)” or “sacred bamboo(神聖な竹)”と呼ばれているとのこと.Nandina - Wikipedia
ただし,ナンテン属の学名Nandinaも英語で使われていて---
この属名Nandina.
元をたどれば日本語のナンテンをラテン語に当てはめた近代ラテン語!
Mid 19th century: modern Latin (genus name), adapted from Japanese nanten. nandina | Definition of nandina in English by Oxford Dictionaries
The scientific name given to it by Carl Peter Thunberg is a Latinized version of a Japanese name for the plant, nan-ten.