菊(2) 嵯峨菊は,江戸時代のブーム「正徳の菊」の名残り? 江戸期以降の華やかな菊とはことなり,平安貴族にとっては,菊は「色あせればあせるほど、美しさが深くなる」とされていたとか.今週の土曜日28日,旧暦で菊酒を飲んで重陽の節句を祝うのも1つの考え方?  「秋風の 吹きあげに立てる 白菊は 花かあらぬか 浪のよするか」(菅原道真) 

昨日買いもとめた嵯峨菊.

古典菊は,江戸中期に各地の殿様の保護奨励によって地域独特の発展を遂げた「古典菊」とのこと.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/10/25/015846

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江戸時代には,様々な園芸植物にブームが起きたことはよく知られていますが,菊もその対象の1つ.

「正徳の菊」といわれ,菊合わせという新花の競い合いが初めは京都,後に江戸で大流行したそうです.

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伝統園芸植物の歴史 | 庭園都市 東京トラベル&ヒストリー

 江戸時代のブームには遠く及ばないものの,現代でも各地で開かれる菊展は,秋の風物詩の1つ.様々な形に仕立てられた菊が,各地に並びますね.

 

菊には沢山の種類があり,分類の仕方もいくつかあります.

日本の華「キク」https://www.jataff.jp/kiku/index.htmlより簡単にまとめてみましょう.

▽大菊

    大菊は,花の直径が18cm以上のもので,花型によって「厚物」(更に「厚物」、「厚走り」、「大掴み」),「管物」(「太管」、「間管」、「細管」),「広物」(一重咲きの「一文字」と八重咲きの「美濃菊」)に分けます.

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https://www.jataff.jp/kiku/index.html

▽古典菊

    古典菊は,江戸中期に各地の殿様の保護奨励によって地域独特の発展を遂げた菊の総称で,昔の地名で呼ばれています.

嵯峨菊,伊勢菊,肥後菊,江戸菊,美濃菊,奥州菊

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https://www.jataff.jp/kiku/index.html

▽小菊

    小菊(山菊)は,山菊とも呼ばれる小輪の菊で,花型も丁字,平弁,サジ弁など変化が多く,花色も豊富で,極めて丈夫です.

 

▽その他の菊

  大丁字咲,クッションマム,

  ポットマム(アメリカで小鉢栽培用に改良された品種)

  スプレー菊(オランダで改良されて日本に里帰りした菊)

  デルフィマム,マイクロマム  

  洋菊

  食用菊  

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https://www.jataff.jp/kiku/index.html 

 

▽“ノギク”

ノジギク Chrysanthemum japonense

コハマギクChrysanthemum yezoense

ハマギクChrysanthemum nipponicum

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ノジギク - Wikipedia ノコンギク - Wikipedia

 

キクという名前を持ちながらキク属ではないノコンギクなどもある一方,

ノギク以外の園芸種は全て「イエギク Chrysanthemum × morifolium」とされ,日本には中国で改良されたものが奈良時代中期に遣唐使などによってもたらされたと言われています.

https://www.jataff.jp/kiku/index.html

 

菊の伝来が奈良中期以降であったことは和歌の世界にも反映され,万葉集にはキクを詠んだ歌は見られないのに対し,古今集にはキクを詠んだ歌が沢山あります.

wakadokoro.com

菊(聴く)ほどに味が出るスルメ歌 - 「平成和歌所」~ひたすら楽しむ歌文化~

ただし,平安貴族の歌の対象は白菊がほとんど.

「秋風の 吹きあげに立てる 白菊は 花かあらぬか 浪のよするか」(菅原道真

(秋風が吹く吹上の浜に立っている白菊は花なのか,それともちがうのか.なみがよせているのか  高田祐彦 古今和歌集 角川ソフィア文庫

 

しかも「色あせればあせるほど、美しさが深くなる」とみていたとのこと.

「色かはる 秋の菊をば ひととせに 再びにほふ 花とこそ見れ」(よみ人しらず)

(色が変わる秋の菊を一年に二度美しく咲きにおうはなとみるのだ   高田祐彦 古今和歌集 角川ソフィア文庫

菊(聴く)ほどに味が出るスルメ歌 - 「平成和歌所」~ひたすら楽しむ歌文化~

江戸時代,そして現代とはなんと見方が違うことでしょうか.

 

今週の土曜日28日は旧暦では9月9日.江戸時代以前なら重陽節句に当たります

第百一回 重陽の節句|京都ツウのススメ京阪電気鉄道株式会社によれば:

平安時代に宮中で始まり、貴族たちは菊花を鑑賞して菊酒を飲み、長寿を祈願しました.菊が延寿の力を持つとされた中国の風習が起源.

江戸時代になり、これが端午の節句や七夕と同様、五節句のひとつとされ、庶民の間でも菊酒を飲む風習が広がりました」

とのこと.

しかし,現在では社寺等を除いて,ほとんど祝われなくなっています.

明治維新後、暦が旧暦から新暦に変わると、菊の花期ではなくなり、一般の家庭で親しまれることは減りました」

現代では,新暦9月9日にも菊がたくさん出回るようになりましたが,

今週の土曜日28日,旧暦で菊酒を飲んで重陽節句を祝うのも1つの考え方ではないでしょうか?

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貴船神社 菊花神事