「戦争は人間のしわざです. 戦争は人間の生命の破壊です. 戦争は死です. この広島の町,この平和記念堂ほど強烈に,この真理を世界に訴えている場所はほかにありません.(ヨハネ・パウロ二世)」「人間の心にとって、憎しみよりも愛の方がずっと自然なのだ.(故ネルソン・マンデラ):オバマ氏のツイートから」

戦争は人間のしわざです 

ヨハネ・パウロ二世 広島にて 一九八一年二月二十五日

 

戦争は人間のしわざです.

戦争は人間の生命の破壊です.

戦争は死です.

この広島の町,この平和記念堂ほど強烈に,この真理を世界に訴えている場所はほかにありません.

もはや切っても切れない対をなしている2つの町,日本の2つの町,広島と長崎は,「人間は信じられないほどの破壊ができる」ということの証として,存在する悲運を担った,世界に類のない町です.

この2つの町は,「戦争こそ,平和な世界をつくろうとする人間の努力を,いっさい無にする」と,将来の世代に向かって警告しつづける,現代にまたとない町として,永久にその名をとどめることでしょう.

教皇ヨハネ・パウロ二世 広島『平和アピール』 | カトリック中央協議会

 

ヨハネ・パウロ二世の来日については,一部の方々を除いて,記憶の彼方になっているかもしれません.

f:id:yachikusakusaki:20170818013439j:plain

カトリック伏見教会 公式ホームページ - カトリック伏見教会 沿革史  教皇ヨハネパウロ二世青年との対話1-5.wmv - YouTube 教皇ヨハネパウロ二世青年との対話2-5.wmv - YouTube 1981年 教皇ヨハネ・パウロ2世来日 | カトリック東京大司教区 ウェブサイト

 

しかし,テレビ報道を通し,冒頭の言葉がとても流暢な日本語で語られたことに驚き,その内容が胸を打ったことを私はしっかり覚えています.

平和へのメッセージとして,私も含め,カトリック信者ではない多くの日本人の心をも捉えた言葉でした.

 

先にブログで取りあげた NHK原発と沈黙 〜長崎 浦上の受難〜”では,被爆者西村勇夫(いさお)さんは,教皇の言葉を聞いたときの気持ちを,次のように語っていました.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/08/16/013514

 

f:id:yachikusakusaki:20170814235348j:plain

NHKドキュメンタリー - ETV特集「原爆と沈黙~長崎浦上の受難~」

「人間の仕業だったのか.戦争もね.まさか,ローマ法王が『人間の仕業』と言うことをね.改めて何か重くな.

人間は何でもできるんだ.戦争もできる.平和も作りうる.なるほどな.

戦争ばかりはやったら駄目だな」

「原爆は,人間の仕業なのだ」

  

“浦上のピカドンと言われよった.差別があったと.原爆というのは隠す.隠し通した”西村さんは,封印していた被爆体験と向き合う覚悟を決めます.

 

カトリック信者にとっては,教皇の言葉は,私のような異教徒には分からない重みを持つものだと思います.たしかに,日本での教皇の言葉は,カトリック信者に向けられたものが,当然のことながら多かった.しかし,上記の広島でのスピーチはカトリック信者だけではなく,全世界の人々に向けられたものでした.

これが西村さんの心に届いた.

心に届くメッセージは,一人一人の生き方を変えることができることを,改めて確認することができました.

 

 

折しも,今日のNHKニュース9の冒頭で,オバマ前大統領のツイートが,ツイッター史上最高の「いいね」を獲得したことを,報じていました.

新聞各紙も,このニュースを取りあげています.

Barack Obama (@BarackObama) | Twitter ツイッター:「人を憎まず」オバマ氏に史上最多「いいね」 - 毎日新聞 【白人至上主義衝突】オバマ氏のツイッター、過去最高の支持 - 産経ニュース

 

 米南部バージニア州で起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件を受け、オバマ前大統領による「生まれながらに他人を憎む人はいない」とのツイッターへの投稿に共感が寄せられている。16日までに、ツイッター史上最多となる360万超の「いいね」が付いた。

オバマ氏のツイートは,次の写真に添えて,故ネルソン・マンデラ氏の次の言葉を三回に分けて投稿したもの.

f:id:yachikusakusaki:20170818015351j:plain

"No one is born hating another person because of the colour of his skin, or his background, or his religion.

People must learn to hate, and if they can learn to hate, then they can be taught to love,

for love comes more naturally to the human heart than its opposite."

和訳 by CNN CNN.co.jp : 「生まれながらに人を憎まず」、オバマ氏の投稿に記録的反響 - (1/2)

「生まれた時から肌の色や出自や宗教を理由に他人を憎む人などいない。

憎しみは学ぶものだ。そして、もし憎しみを学べるのなら、愛することも教えられるだろう(NHKは「愛することも学ぶことができるだろう」)

なぜなら人間の心にとって、憎しみよりも愛の方がずっと自然なのだから」

f:id:yachikusakusaki:20170818014943j:plain

 http://www.wisdomtoinspire.com/t/nelson-mandela/Ny-Y3Gsv/no-one-is-born-hating-another

CNN日本語サイト(2017.08.16 Wed posted at 11:58 JST)では,250万以上の「いいね」

毎日新聞(08.17.7:39) では,

「米南部バージニア州で起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件を受け、オバマ前大統領による「生まれながらに他人を憎む人はいない」とのツイッターへの投稿に共感が寄せられている。16日までに、ツイッター史上最多となる360万超の「いいね」が付いた」

産経新聞(08.17.8:52)370万「いいね」

 

そして,今現在(08.18.0:52)はというと,4,191,430 の♡.Barack Obama (@BarackObama) | Twitter 

 

SNSが世界を覆って,真っ暗闇のような印象まで持ってしまっていた昨今ですが(トランプ氏のツイッター等),当たり前の事ながら,SNSも両刃の剣.

現在でも,戦争や差別に抗する,力強い真摯な言葉が多くの人の心に届くことが,SNSを通して再々確認できた夜でした.

 

 

0時を過ぎて,8月18日.私事ですが,今日で,このブログを始めるきっかけにもなった,Sの死去から一年.一周忌です.

彼女はカソリックの洗礼を受けていました.

彼女も一緒に祈るであろう,神への祈りを含めたヨハネ・パウロ二世の広島でのスピーチの最後の部分を引用して,今日のブログを終わらせて頂きます.

 

全スピーチは,流れに従い,節ごとに,日本語,英語,フランス語,スペイン語ポルトガル語ポーランド語,ドイツ語と,異なった言語で語られました.最終盤は,全世界の若者へ(ロシア語),神を信ずる人々へ(ロシア語),そして,最後は日本語による祈りで締めくくられます.中井俊巳「ヨハネ・パウロ二世,愛と勇気の言葉」PHP研究所

f:id:yachikusakusaki:20170818015723j:plain

:この本には,教皇がどのように日本語を学ばれたかも書かれています.また,中井氏は,「各のメッセージには,それぞれの国の言葉で語られるべき内容が選ばれているように思われます」と記しています.ロシア語で語られた部分は,最も大切な呼び掛けとも言えるものですが,1981年が,ソ連邦崩壊の10年前,ゴルバチョフ就任の5年前の冷戦期であったことを考えれば,中井氏の説にうなずきたくなります)

 

全世界の若者たちに,次のように申します.

 ともに手をとり合って,友情と団結のある未来をつくろうではありませんか.

 窮乏の中にある兄弟姉妹に手をさし伸べ,空腹に苦しむ者に食物を与え,家のない者に宿を与え,踏みにじられた者を自由にし,不正の支配するところに正義をもたらし,武器の支配するところには平和をもたらそうではありませんか.

 あなたがたの若い精神は,善と愛を行なう大きな力を持っています.

人類同胞のために,その精神をつかいなさい.

 

すべての人々に,私はここで預言者の言葉を繰り返します.

 「彼らはその剣を鋤に打ちかえ,その槍を鎌に打ちかえる.国は国に向かいて剣を上げず,戦闘のことを再び学ばない」(イザヤ2・4).

 

神を信じる人々に申します.

 われわれの力をはるかに超える神の力によって勇気を持とうではありませんか.

 神がわれわれの一致を望まれていることを知って,団結しようではありませんか.

 愛を持ち自己を与えることは,かなたの理想ではなく,永遠の平和,神の平和への道だということに目覚めようではありませんか.

 

最後に,わたしは自然と人間,真理と美の創り主である神に祈ります.

  神よ,わたしの声を聞いてください.それは,個人の間,または国家の間でなされた,すべての戦争と暴力の犠牲者たちの声だからです.

 

 神よ,わたしの声を聞いてください.それは人々が武器と戦争に信頼をおくとき,いの一番に犠牲者として苦しみ,また苦しむであろうすべての子供たちの声だからです.

 

 神よ,わたしの声を聞いてください.わたしは,主がすべての人間の心の中に,平和の知恵と正義の力と兄弟愛の喜びを注いでくださるよう,祈ります.

 

 神よ,わたしの声を聞いてください.わたしはすべての国,またすべての時代において戦争を望まず,常に喜んで平和の道を歩む無数の人々にかわって,話しているからです.

 神よ,わたしの声を聞いてください.

わたしたちがいつも憎しみには愛,不正には正義への全き献身,貧困には自分を分かち合い,戦争には平和をもってこたえることができるよう,英知と勇気をお与えください.

 おお,神よ,わたしの声を聞いてください.

 そして,この世にあなたの終わりなき平和をお与えください.

 

(全文は以下のサイトで読むことが出来ます)

www.cbcj.catholic.jp

360万超の「いいね」