「芳根さん,貴女は素晴らしい.餃子を作って粉まみれになりながら質問に答えている.貴女は肝がすわっている」チーフ演出の梛川善郎『芳根京子と板東すみれは,心の奥底で強い同盟関係ができあがっていることに確信があった.だから商店街の日常を表現するためには芳根さんをアドリブ状況にポンと放り込むことが,最も良い表現方法だと考えた』 NHKあさイチ プレミアムトーク 芳根京子さん

改めて役者根性というか,肝がすわった女優魂のすごさも垣間見せてくれるトークでした.話しの中身も,そして,なんと番組を通して餃子を作りながらインタビューに答えたのです!

3月31日「あさイチ」プレミアムトークは,芳根京子さん.

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プレミアムトーク 芳根京子|NHKあさイチ

 

主演板東スミレ役で出演した朝ドラ「べっぴんさん」,---このドラマは飛び飛びにしか見ていなかったのですが---,の舞台裏を語ってくれました.

若い俳優さんたちが,実年齢からおばあさん・おじいさん役までこなす姿には感嘆していました.その辺りを中心に再録します.

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いよいよ最終回、芳根京子主演「べっぴんさん」 | エンタメウィーク

出演した女優さんでは,しっかり者役の蓮佛美沙子さん,谷村美月さん,不思議な魅力たっぷりの百田夏菜子さんに目が行っていましたが---.冒頭に書いたとおり,このトーク芳根京子さんはまさに主演女優の凄さを垣間見せてくれます.

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http://static.pinky-media.jp/.jpg ももクロ・百田夏菜子の『べっぴんさん』での演技評価

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先月28日べっぴんさんの撮影が無事終了,

芳根さん「一年で10代から50代までやって,本当にぶっ飛んだ一年だったなって思うんですけど,私は本当にこのチームが大好きです」

 

撮影現場での芳根さんについてこの方に証言してもらいました.

永山絢斗(夫紀夫役)「お早うございます.芳根ちゃーん.朝早いのに自分でご飯作って食べて,お弁当とか作って持ってきていましたね.現場に.いつセリフを覚えてるの?って思いましたもんね.」

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べっぴんさんのすみれの夫役は?名前は永山絢斗!

 

そうなんです,実は芳根さん大の料理好き.忙しい撮影の間に,見て下さい.お総菜をこんなに作り置き.これ全部芳根さんの手作りなんです,

(映像)ゴボウのごま和え,ほうれん草のみそあえ,豚肉と梅と紫蘇のサラダ----

ベテラン主婦も顔負けのラインナップですよね.

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今日はスタジオで芳根さんの料理の腕を生披露していただきます.

(というわけで,皮から餃子を作りながらのトーク

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「“べっぴんさんでの裏設定” すみれは料理をキヨさんに習ったので,スミレが作る料理は和食が中心.派手さはない.裁縫が上手で手先が器用なので料理も几帳面でキチンとしている.板東家はお金はあるので食材はいい物をつかう.大急百貨店の生鮮物売り場で野菜や肉を買ってくることもある”」

芳根さん「ユリさんちは洋食が多くって我が家は和食が多いって皆で話してましたね」

「あーそういう設定があったんですね」

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「おかあさまはどんな方ですか?」

芳根さんスーパーポジティブです.会社から『職場を明るくしてくれてありがとう』という賞をもらって」「それは絶対明るいわ」「はははは,来てくれないかな」

視聴者から「芳根ちゃんが思う自分自身とスミレとの共通点はどこですか」

芳根さん「ちゃんと自分の思っていることが心にあるっていうのは,私も心がけていますね.常に考えていたいというか.現場にいても自分ができることはないかなとか.ちゃんとそこにいる理由を自分の中で作っておきたい」

「それはなにかきっかけがあったんですか」

芳根さん「うーん,なんだろう.ずっとお仕事をしたくて始めた訳ではなかったので,スカウトしてもらって始めたりしたので,はじめは意識が誰よりも低すぎて,反省したというのもありますね」

 

「マネージャーから情報を得ておりまして」

芳根さん「えっ」

「済みませんね.はじめから二人三脚で頑張ってこられたマネージャーさんが

『当初芳根は全くやる気がなかった.ブログを書きなさいと言っても全く書かない.小説を読みなさいと言ってわざわざ読みやすい本を渡してもまったく読まない.オーディションに落ちても悔しがるでも反省するわけでもない.業を煮やして一年ぐらい経ったとき,もう止めたらと言ったら号泣して大げんかになった』」

「なんなの?マネージャーからしたら何なのってなりますよ」

芳根さん「そうなんですよ.ホントにはじめはやる気がなくて---.ケンカの時に『今お前が止めても事務所に損も得もない』って言われて,カッチンと来たんですよ.『だったら私,止めたら困るぐらい大きくなって止めてやる』って思ったのがきっかけで」

芳根さん「でもそこからどんどん楽しくなって.今その話し出さないでほしいって心から思ってます」

芳根さん「すごい負けず嫌いですね.だからスイッチ入れ方上手だなって」

「裏を返せば,事務所も止めて得もないって言うわけだから--」

芳根さん「それもあるから恩返ししたいって言う気持ちも,応援して下さっているん方はもちろんですけど,マネージャーさんにも事務所にもちゃんと恩返ししないと」

「一年頑張ってきたわけですから十分恩返しできたここからような気もしますけど,まだまだですか?

芳根さん「ここからかなって.ここから自分がどう生きるかだって思ってます」

 

「朝ドラのヒロインをして変わったことは何ですかって,10代の方からの質問ですが」

芳根さん「そうですね,変わったことは---.あっ,おじいちゃんおばあちゃんから声をかけてもらえるようになりましたね.町中で」

芳根さん「すみれちゃんって言って下さったりするんですけど.今別の撮影で制服着ているんですよ.だから,あれっ,っていう顔を良くされますね」

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「お席の方で餃子のあんと皮を寝かせている間に--」

 

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「実年齢をはるかに超えた役柄を演じるということで,一番最初に10年一気にとんだシーンがあるんですけど.スミレが20代半ばから30代半ばになるところです」

 

幼いさくらを連れたすみれ「浅田さん,いってきます」すみれこの時25歳

翌日の放送で時代は10年とんで,デパートの店頭の場面.

客に頭を下げるすみれ「ありがとうございます」34歳

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一日で10歳近く増えました.さくらを演じた井頭愛海さんとは実年齢ではたった4歳しか違わないんですよね.

すみれ「さくら高校はどこを受験するか決めた?」さくら「まだ」

すみれ「どこでもいいのよ.さくらがいきたいところやったら」

 

中でも特におばちゃんぽいと話題になったのがこのシーン.

店を走り出てきたスミレ.路地でキャッチボールをする少年に

すみれ「ストライク」少年「ボールや」

頭をなでて

すみれ「ごめんね,元気やね」走り去る.

 

「ほんと,確かにおばちゃん」「たしかに.どこにでも入ってくるんだよね.ああ言ってね」「ちょっとごまかしちゃったり」

「一部アドリブがあった?」

芳根さん「あります.台本がなかったんです.あのシーン.スケジュールの見たら,スミレの所に丸がついていてストライクって書いてあるんです.何これって思って.どこ見てもストライクなんて文字なくって,監督に確認したら,増やしたんだよね,少年たちが野球してるから,ストライクって言っててくれないって.タダそれだけを投げられて,でもボールだから,ってだけ言われて.

じゃあ---私も正解が分からなくって,ああなっちゃったんですけど,監督は大丈夫,大丈夫って,ホントかなって思ってたら,あそこがおばちゃんぽいって,言われたんで嬉しかったですね」

「実は,チーフ演出の梛川善郎(なぎかわよしろう)に聞きましたところ,

芳根京子と板東すみれは,心の奥底で強い同盟関係ができあがっていることに確信があった.だから商店街の日常を表現するためには芳根さんをアドリブ状況にポンと放り込むことが,最も良い表現方法だと考えた』

と.既にあの時には芳根京子さんにもおばちゃん入ってたということだと思いますけど」

 

「更には,40代を演じるにあたって芳根さんが意識されてることをうかがいましたらこちらだそうで--.“膝と腰が痛い” “少し根背”.設定として?」

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芳根さん「そうですね.頭の中に常に私は膝と腰が痛いって思い込んで,立ち上がったときも,いたたたみたいな,でもまだ四十代なので,行き過ぎるとこの先が不安だったので,頭の片隅に置いとくようにしました」

 

スミレ「成功って何を言うんやろね」

仕事のことで悩む健太郎にすみれが話しかけるシーン.

(すみれ49歳)

スミレ「私は誰かの笑顔を想像しながら日々過ごすことかな,湯冷めするわよ.風邪ひかないようにねいてててそしたらお休み」

 

「あー言うね。あの体勢が多分一番辛い」

芳根さん「冬なんですよ.寒い中,外でしゃがんだら絶対いたよなって」

「かたまちゃうからあそこで」

芳根さん「でもあの一瞬ではすごい自然出でました.思ってなかったんですよ」「ここで言おうとは思ってなくて?」

芳根さん「出ちゃって」「出ちゃったんだ.へー」「ホントになりきっちゃてるんですね.膝腰が痛いって」

芳根さん「痛い痛いって思いながら.病は気からかもしれませんね

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「おばちゃん,話を最後まで聞かない

芳根さん「はい」「これは」

芳根さん「これはスタッフさんと,どうやったらおばちゃんに見えるかって話しをずっとしてて,『あんま話を聞いてないよって』」「おばちゃんは?」

芳根さん「はい.いろんな人に言われて,じゃ少し意識しようかなって思って,あんまり聞かない」「つい自分がしゃべろうって思ってね.そんなことない?」「ないんですよ」「ないから--」

芳根さん「私はこういう(=耳に入ったことはそのまま出て行ってしまう)タイプ」「元々聞かない人なんですか?」

芳根さん「聞こえなくなるタイプです.百田夏菜子ちゃんもそういうタイプなんですよ,『きょんちゃんすごく一杯しゃべってくれるけど時々聞こえなくなってるから』って.(私も)『大丈夫,大丈夫,私もずっとしゃべってるから』って.他のこと考えてるとずんって(きこえなくなる).悪いことだなって」

「でもそれは考えてることに集中してるってことだから.しゃべる人が悪いんじゃない?」「たしかにね」「聞いてなくてもいい.しゃべりたいだけの人もいるから」「特におばちゃんになるとそうよね」「しゃべらしてあげてるんだからいいじゃない?」

(笑い)「お芝居に活かしたところあるんですか?」

芳根さん「そうですね.相手が話し終わるのを待たなくていいって」

「こちらのシーンで」

 

140話(このブログ最後につけた木俣冬さんのレビュー参照のこと)

(銀座の店を見に行って帰ってきたすみれ)

すみれ(皆に向かって)ステキなビルやったわ.少し古いけど趣があってね.(さくらに)おみやげ,(また皆に)あれよあれ,エレベーターも二台あってね.」

紀夫「何か美味しいものも食べてきたか?」

すみれ「皆で天ぷらを食べたの.柔らかくって,かき揚げも---.(孫の藍にむかって)ねー会いたかった」

 

「全部自分ペースなんだね.見たことある,ああいう人は」「最後自分のペースで赤ちゃんに行っちゃう」

「姿勢って言う部分でも,猫背も意識した?」

芳根さん「意識しましたね.徐々に年取っていくにしたがって丸まっていきたいな,と思っていて,誰にも言わずにちょっとずつやっていったら,演出の方に『最近,曲げてるよね』って言われて『いいと思う』って言って下さって.50代になってからも意識したんですけど,鶴瓶さんにお会いしたときに,『そんなに腰曲がってないで』って,『50代はまだや』って」

 

「役作りを含めてすみれを一番近くで見てきた永山絢斗さんにお話伺ってます」

 

「今の心境は?」

永山さん「もう終わっちゃったんだって.芳根ロスだな,これは.」

 

印象深いシーン(高台の屋敷から神戸の海を見下ろす庭で)

すみれ「たった一人の光る星よね」

 

永山さん「大事なシーンを撮るって言うことで,割とドキドキしながら,僕は結構動けなくなっていたんですけど,最後にすみれが近寄ってきてくれてさわってくれたことに,すごくなんか悔しかったですね.自分がすごい甘えてしまったなと思うところが,結構やっぱ振り返ると,自分の中でわき上がってきましたね」

永山さんだけが知る意外な一面も教えてくれました.

永山さん「スタンバイ中,こうやって椅子に座ったり,真っ正面に向き合っているときとかに,花の穴を,こうやって膨らます技を持っているんです.彼女.あれは,--できたら(スタジオで)やってもらおうかな.あらはツボになってましたよね.本番前とかにしてくるんです」

永山さん「芳根ちゃんらしく,楽しく,ほんわかとした気持ちを皆さんに届けて下さい.あっ.髪切ったね.ステキです」

 

芳根さん「涙出てきました.はじめ嬉しくて---,今変な涙になってきました」

「涙の意味が変わってしまうんだ.途中で.出ようと思った涙も.あれ?違うんだっと.意味変わっちゃったよ」

「面白い方ですね,それこっちだけにみせてもらっても?」

(両手で隠しながら顔を向けて)

「はははは,いいねー.良い技持ってますね」「予想を超えました」

「予定超えたときとか,疲れたときとかに元気出るかもしれない」

芳根さん「疲れてるときにやっちゃうので,11時過ぎたときぐらいから芳根タイムと呼ばれて『芳根タイム始まるよ』って.」

「カメラに向かってできたりする?」

芳根さん「いいや」(カメラに向かって花を膨らましてヒクヒク)

芳根さん「すっごい広がるんですよ」「なんで,なんで練習してたんですか小さいときから」「僕だけにみせてくれたときはもっと広がった.今のはテレビ用だったんだ.嬉しいわ.一生忘れないわ」

「ちょっと待って,餃子の皮づくりが押してる---」

 

「永山さんとはアドリブでやりとりがあったとか?」

芳根さん「そうですね,ああいう方なので,本番だけやって下さったりとか.私もそれに応えたいという思いで」

「本番だけやって下さるって言うことは?仕掛けてくるって言うことなんですか?」

芳根さん「仕掛けてきますね」「例えばどんなのがあるんですか」

芳根さん「サクラが合格発表の時のシーンとかに」

 

永山さん「二人とも合格や,お母さんに代わるな」スミレ「良かったね.おめでとう.きみちゃんきみちゃん」

永山さん「バンザーイ.バンザーイ」(アドリブ)

 外にバーッと出て行って,永山さん「バンザーイバンザーイ」

 

芳根さん「みんな,なに?なに?なに?みたいな」

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▽「花子とアン仲間由紀恵さん演じる宮本蓮子の娘,宮本富士子の役については

“真っ正面から初めて向き合った役”

▽ 主題歌が流れる冒頭の場面

“主題歌に合わせて歩くのがスキップになった”

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◎そして,

餃子は無事に出来上がりました.

番組最後の視聴者からの感想「芳根さん,貴女は素晴らしい.餃子を作って粉まみれになりながら質問に答えている.貴女は肝がすわっている」

 

◎エキサイトレビュー 2017年3月21日 08時30分 ライター情報:木俣冬

www.excite.co.jp

140話はこんな話

東京銀座の3階建てのビルに、お母さんと子供たちのためのワンダーランドをつくることにした。

お買い物もできてそこで遊べて、相談もお友達もできる、子育てを共有できる、そんな空間に、

すみれ(芳根京子)たちは胸をときめかせる。

お腹も夢も膨らむわ

 

すみれ「藍大きくなったかな」 

君枝「1日で・・・」

 

東京の銀座にビルを見に行ってきたすみれと君枝が帰ってきた場面。こういうナンセンスな話、あるあるである。親(おばあちゃん)バカ・エピソードだ。

その後もおばちゃんの話の飛躍を鮮やかに描き出す。

ビルの話→お土産→「あれよあれよ エレベーターも・・・」→天ぷらを食べた話→「ふんわりねえ、藍ちゃん」→「海老も」→「ふんわりねえ、藍ちゃん」

わたわたして、あれもこれもと話が飛ぶ。記憶も飛ぶ。でも最終的に、すべてが孫の藍に集約するという見事な日常のスケッチだ。

 

芳根京子の声が徐々に低くなっている。そう、年をとると声が低くなるもの。高良健吾永山絢斗もそうで、身体と所作と外観から入っていくアプローチを徹底している「べっぴんさん」。蓮佛美沙子も肩まわりの丸さなど、ちょっとふっくらした感じに見せている。なかでもメイクのテクニックにうなる。俳優、スタッフ一丸となって「老い」に挑んでいる。

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