暖かな日でした.
水をやりに庭に出て,カタクリの花が咲いているのを見つけました.
二三日前には咲いていたはず.片隅にあって遠くから見ていただけで気づかなかったという情けない話です.
もともとは薄紫色.夕方撮影したため,こんな色になってしまいましたが,以前より青みがかってきているのは確か.
5年前撮影した画像です.
可憐な花です.
古名は「かたかご」「かたかし」.万葉の時代から短歌にも詠まれていました.
かたくりを詠んだ短歌
(鳥居正博 古今短歌歳時記より)
もののふの八十娘子(やそをとめ)らが汲み乱(まが)ふ寺井の上の堅香子(かたかご)の花 大伴家持 万葉集巻19 4143
斎藤茂吉:寺に泉が湧くところがあって,そのほとりに堅香子の花が咲いている.これは単独ではなくて群生している.その泉に多くの娘が水を汲みに来て,良くとおる声で話し合う,それが可憐でいかにも楽しそうである.
山田卓三:カタクリは小川の流れるゆるやかな林の斜面や土手などに大群落を形成します.この可憐な花が咲き乱れている群落の情景に若い娘たちの群像を重ねた,この歌の幻想はすばらしいものです.
かたくりの若芽摘まむとはだら雪片岡野辺にけふ児等ぞ見ゆ 若山牧水 朝の歌
巌角につみてかなしもひと茎にひとつ花咲くかたくりの花 古泉千樫 屋上の土
かたくりの花もねむれる半夜(はんや)すぎさえざえとたつ月のまぼろし 生方たつゑ 浅光
窓すこし開けしめたれば窓ぎはのかたくりの花かすかにそよぐ 宮柊二 恒河沙
かたくりの次年花も見なむかな苔平らかにひと色の青 千代国一 冷気湖
一花(いっか)揺れ百花千花のゆれゆれて北山なだりかたくりの花 加藤克巳 石は叙情す
悲しみのほむら燃ゆると思ふまで色たちてくるかたかごの花 岡野弘彦 滄浪歌
うつむきて語るほかなきふるさとのほのむらさきの片栗の花 馬場あき子 飛花抄
チューリップ属のとなりに位置する属です.