毒きのこ1(「毒の博物館」4 菌類の毒/国立科学博物館特別展「毒」より) きのこの食毒を見分けるための万能の方法は存在しません.幻覚症状:ヒカゲシビレタケ,ワライタケ等(いくつかは所持することも禁止されている). 痙攣など:ベニテングタケ,サクラタケ等.  悪酔い:食用きのこなのにお酒と一緒に食べると酷く悪酔いする.キララタケ等. 腹痛など:野生きのこで最も頻繁に起こる中毒例. 細胞破壊:最も致死的な症状.腎臓や肝臓などの細胞が破壊されていくことで死につながる.テングタケ属.

先日出かけた国立博物館特別展「毒」.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/02/17/235453

独自に勉強したことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介しています.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.

(大阪展がもうすぐ始まります.実際にご覧になることをお薦めします.実物の力は偉大です)

 

今日は「毒の博物館」4 菌類の毒のいろいろ

(菌類の毒として,初めにマイコトキシン:カビが生産する毒の展示がありましたが,写真を撮れなかったので割愛します.

どのようなカビ毒があるかは農水省食品のかび毒に関する情報 の,「いろいろなカビ毒」をご参照下さい.https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kabi_iroiro.html 

展示では,このうちアフラトキシン;ピーナッツ,トウモロコシなどで中毒例が知られている,デオキシニバレノール;麦類などで中毒例が知られている,が紹介されていました)

 

毒きのこ1

(展示の多くはレプリカでしたが,とてもレプリカとは思えない精巧な作りをしていました.何も知らない私には「本物そっくり」とはいえませんが,多分,玄人の人が見ても感嘆するできばえなのではと思います.)

 

毒きのこには多くの「迷信」が存在しますが,派手なきのこは毒,などは全てウソで,きのこの食毒を見分けるための万能の方法は存在しません.

さらには,地球上のきのこの大半は食毒不明なのです.

きのこの毒は,食べられることに対する防御なのかもしれませんが,その進化的・生態的意義は厳密には分かっていません.

 

幻覚症状

いわゆるマジック・マッシュルームと呼ばれるきのこの中毒症状です.

花壇など意外と身近な環境にも生えますが,毒成分にシロシビンやシロシンを含む野生きのこのいくつかは,食べることはおろか所持することも法律で禁止されています.

 

ヒカゲシビレタケ

シロシビンを含む典型的な覚性このこ.所々青く変色する特徴があります.

 

 

ワライタケ

毒成分にシロシビンを含み,日本では所持することは法律違反になります.

 

オオワライタケ

シロシビンは含まないとされています.大型ですがとても苦く,食用にはなりません.

 

 

痙攣(けいれん)など

ベニテングタケを含むテングタケ属に多く見られ,イボテン酸やムシモールなどの毒性成分によって引き起こされます.

そのほか,若干の精神錯乱に加え,ムスカリンを含むきのこを食べた場合には発汗や呼吸困難などの症状が出ることもあります.

 

ベニテングタケ

致命的な毒きのこではありませんが,複数の毒成分を含み,さまざまな中毒症状が報告されています.

 

サクラタケ

大根のような匂いのする小型で可憐なきのこですが,ムスカリンを含みます.

 

カヤタケ

毒成分としてムスカリンを含みますが,以前は食用とされてきました.

 

ムスカリン ニッポニカ

毒キノコのアセタケに多量に含まれるアルカロイドで、テングタケベニテングタケにも少量含まれる。副交感神経支配のアセチルコリン受容体(レセプター)に作用して副交感神経が興奮したときと同じ作用(ムスカリン作用といい、心臓機能抑制、血管拡張、唾液(だえき)分泌、流涙、気管支収縮、胃腸刺激などをおこす)をする.

 

 

悪酔い

食用きのこなのに,お酒と一緒に食べるとひどい悪酔いをする,という変わった症状です.

その原因は様々ですが,キララタケなどのヒトヨタケ類ではコプリンという成分が,アルコール分解酵素の作用を阻害することが知られています.

(展示の写真を撮れませんでした.代わりにネット上から画像をお借りして掲載します)

https://www.jataff.or.jp/kinoko/504.htm

https://www.jataff.or.jp/kinoko/204.htm

腹痛など

下痢や嘔吐などの,野生きのこで最も頻繁に起こる中毒例といえます.

本展示で紹介するそのほかのカテゴリの毒きのこの大半も,この症状を伴います.

体質により中毒するとされるきのこの多くもこれにあたります.

 

コガネタケ

独特の匂いがあり食用とされることもありますが,多くの場合腹痛,嘔吐などを伴います.

 

https://mikawanoyasou.org/kinoko/himekatashouro.htm

ヒメタカショウロ

本種を含むニセショウロ属のきのこは一般的に毒きのことされます.

 

コロハナビラタケ

キクラゲのように見えますが,チャワンタケの仲間の毒きのこです.

 

 

細胞破壊

毒きのこの中でも最も致死的な症状です.

主成分はアマニタトキシン類で,主にドクツルタケを中心とするテングタケ属から知られています.

タンパク質の合成が阻害され,腎臓や肝臓などの細胞が破壊されていくことで死につながります.

 

ドクツルタケ

毒成分はアマニタトキシン類と総称され,タマゴテングタケなど複数種から知られています.

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000142708.html

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kinoko/dokutsur.html

 

 

ウツロイイグチ

毒成分はポラフィニン.牛が食べて死亡した例が報告されています.

コレラタケ(ドクアジロガサ)

小型きのこですが,毒成分や中毒症状はドクツルタケと同様の猛毒きのこです.