甘く,そして他の果物にないシャキシャキ感.ナシの季節になりました.
(シャキシャキ感の正体は果肉の中の“石細胞”;膜が極めて厚く,木化した細胞)
青果コーナーには,一昔前とは異なった品種が並びますが.我が家の近くの青果店の現在の主役は幸水.
幸水は,ナシシーズンのトップバターで,しかも品種別栽培面積でトップ(平成28年度).
以下豊水,新高と続き,以前からある二十世紀もがんばっていて第4位につけています.
果樹茶業研究部門:ナシ(日本ナシ)品種別栽培面積 | 農研機構
トップ3の品種の特性は以下の通り.
三つのサイトからの要約です:
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nifts/kih/hinshu/pear_nut/index.html https://www.kudamononavi.com/zukan/jpnpear/niitaka https://www.ibaraki-shokusai.net/brand/asian-pears/
幸水(こうすい)
「梨シーズンのスタートを飾る」「ソフトな歯ざわりで水分が豊富」
ニホンナシの栽培面積の40%(2012年調査)を占める主要品種です.
果実品質に優れており,新品種育成を行う上での大きな目標であるとともに,交配親として現在も利用されています.
名前は親品種の「菊水」と「早生幸蔵」の一字ずつを取ってつけられました.
露地物は8月初旬頃からから収穫が始まります.ただ,収穫時期が短く,産地を変えながら8月下旬から9月上旬頃までが出回る時期となっています.
豊水(ほうすい)
「果肉はやわらかで果汁たっぷりの梨」「甘味と酸味が見事にマッチ」
ニホンナシの栽培面積の27%(2012年調査)を占める主要品種の一つです.
「幸水」同様,果実品質,特に肉質に優れ育種の場面でも頻繁に交雑親として利用されています.
旬の時期は9月.
豊水の交配組み合わせは長らく不明とされていましたが,SSRマーカー及び葉緑体DNAの分析から,「豊水」の種子親は「幸水」,花粉親は「平塚1号」であると判断されました.ニホンナシ「豊水」の親品種の同定 | 農研機構
新高(にいたか)
「大きなものは1kg以上!」「風味もみずみずしさも一級品」
新高は1927年(昭和2年)に命名された歴史の古い品種で,菊池秋雄氏によって育成されました.
平均サイズは450~500gと大きいのが特徴.甘味があって酸味は少なめ.肉質はやわらかめで多汁です.
旬は9月頃から11月頃まで. 10月頃が出荷の最盛期.
新潟県の梨「天の川」と,高知県の梨「今村秋」が両親とされていたため,「新高(にいたか)」と名付けられました.しかし近年の遺伝子解析により,片方の親が「今村秋」ではなく「長十郎」の可能性が高いことがわかりました.
そして
これら多様な品種の系統を図示したサイトがありました.
何と沢山の品種が生み出されてきたことか!
http://yozaemon.net/history_07.html
ナシは,
バラ目 Rosales,バラ科 Rosaceae,サクラ亜科(モモ亜科) Amygdaloideae,リンゴ連 Maleae,ナシ属 Pyrus,
ヤマナシ P. pyrifolia の栽培種(変種扱い)
ナシ P. pyrifolia var. culta
ニホンナシ(日本ナシ),ワナシ(和ナシ)と呼ばれることも.
最も古くから食べられてきた果物の一つで,日本書紀(720年),正倉院文書(758年)に記載があります.
持統天皇(四十五)桑・紵・梨・栗・蕪菁を植えるよう勧める 梨・梨子(なし)とは - コトバンク
また,弥生遺跡(登呂遺跡)さらには縄文遺跡(三貫地遺跡)からも発見されています.