タマネギ基本情報1 ジャガイモ,キャベツ,大根に続いて日本で4番目に多く収穫されている野菜です.原産地は中央アジアと推定されていますが,紀元前3千年には古代エジプトやメソポタミア文明の時代に食用野菜として栽培されていました.日本では明治初期に栽培が始まり,現在は野菜の中で第4位の生産量を誇ります.生産量トップは北海道.戦後一時期第1位だった兵庫県は現在3位ですが,品質を重視した,甘さと柔らかさが特徴的な淡路島たまねぎを生産しています.

タマネギ基本情報1

昨日までNHKまんぷく農家メシ!を転載して紹介したタマネギ.

yachikusakusaki.hatenablog.com

ジャガイモ,キャベツ,大根に続いて日本で4番目に多く収穫されている野菜です.(サツマイモはこの統計には入っていません)

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作物統計調査 作況調査(野菜) 確報 平成29年産野菜生産出荷統計 年次 2017年 |

 

大根の生産が落ち込む中,もうすぐ3位になるかもしれません.

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そんなタマネギの基本的な情報を,

藤田 智さんによる解説

(もともとは,プランター栽培の解説です https://shop.takii.co.jp/flower/bn/pdf/20090841.pdf

)の一部をお借りし,補足(1)〜(4)を付け加え,やや淡路島より?に,まとめてみます.

 

タマネギの原産地については諸説ありますが,私(藤田さん)は,アフガニスタン近辺の中央アジアとする説(⇒1)を支持しています.

栽培の歴史は古く,4000年を越えるものとされ,北イランからエジプトではかなり古い時代から食用として珍重されていました.

日本へ本格的に導入されたのは明治4年(1871年)といわれ,北海道や大阪,兵庫(⇒2)で栽培が始まりました.しかし,タマネギを収穫はしたものの,実は,当時の日本人の食生活にほとんどなじみませんでした.明治後年になって,南半球のニュージーランドなどタマネギが必要な地域へ,足りない季節に輸出されるという珍しい経過をたどった野菜です.

日本における古くからの産地は,前述の北海道,大阪,兵庫でしたが,戦後,食生活の欧米化によってタマネギの消費が伸び,それとともに北海道の栽培面積が急増しました.現在では全国一の産地となっています(⇒3).

タマネギは,冬越しして育てる野菜の代表です(北海道を除く).自然状態では,越冬して5月にネギ坊主の花が咲き,6月にタネができます.しかし,ネギ坊主が出てはタマネギ栽培として失敗になるので,花芽分化の条件を知っておく必要があります.

タマネギはある一定以上の大きさになると,寒さに反応して花芽を分化する性質があります(⇒4).従って,植え付ける苗の大きさがトウ立ち(⇒5)に大きく関係します.

また,鱗茎(球)の肥大には長日条件が必要で,春先から太り始めるのはそのためです.

タマネギには多くの品種があり,収穫時期によって,極早生(ごくわせ),早生(わせ),中生(なかて),中晩生(なかおくて),晩生(おくて)に分けられています(⇒6).

 

⇒1

たまねぎの原産地は,原種が見つかっていないため,特定できていません.

Onion - Wikipedia

淡路島のたまねぎについてまとめた「淡路島 たまねぎの教科書」では,その伝播経路も含め,以下の通り紹介しています.

https://web.pref.hyogo.lg.jp/awk08/documents/tamanegi.pdf

 たまねぎの原産地は北西インド,タジキスタンウズベキスタン,天山の西部地域など中央アジアと推定され,そこから西へ広まったとされています.

紀元前3千年には古代エジプトメソポタミア文明の時代に食用野菜として栽培されていました.ピラミッド建設の従事者が,たまねぎを大量に消費していたと言われています.

たまねぎの品種分化はヨーロッパで進み,南ヨーロッパでは早生系統(甘たまねぎ)が,東ヨーロッパでは晩生系統(辛たまねぎ)が発達しました. その後,16世紀以降にアメリカに導入され,全土に広がり亜熱帯から寒帯まで生態的に適応し周年的供給が可能になりました.

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https://web.pref.hyogo.lg.jp/awk08/documents/tamanegi.pdf

 

⇒2

淡路島では,明治21年に試作したのが始まり.明治44年に,試験が本格化し,正9年頃から販売を目的とした栽培が始まりました.

昭和10年頃には三原平野の各地域において,野菜生産と酪農が飛躍的に発展し,栽培面積は増加していきます.戦争末期には肥料不足や主食増産のために減反を余儀なくされましたが,戦後には食の洋風化などによって飛躍的に増大し,昭和24年に大阪府を抜いて栽培面積が全国一となりました.

現在,兵庫県の生産量は全国で3番目ですが,検査を徹底することにより,品質を重視した,甘さと柔らかさが特徴的な淡路島たまねぎを生産しています.

https://web.pref.hyogo.lg.jp/awk08/documents/tamanegi.pdf

 

⇒3

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作物統計調査 作況調査(野菜) 確報 平成29年産野菜生産出荷統計 年次 2017年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

⇒4

専門用語では

「緑植物体春化型」と呼ばれます. 

春花現象とは

:秋に発芽して冬を越し,春に開花する植物のなかには,幼植物の時代に低温にあうことによって初めて正常に花芽を形成し,開花する種類がある.このような低温によって花成が促進される現象をバーナリゼーション春化現象とよぶ. 日本大百科全書ニッポニカ

二種類の春花現象 

:春化現象の研究が進むにつれて,ダイコン,ハクサイなどのように,発芽種子の低温処理によって花成が促進される植物と,キャベツ,タマネギ,セロリなどのように,発芽種子は低温に感応せず,ある程度の大きさになった幼植物が低温に反応して花成が促進される植物とがあることがわかった.前者は種子バーナリゼーションseed vernalization,後者は緑植物バーナリゼーションgreen-plant vernalizationとよばれる. 日本大百科全書ニッポニカ

 

⇒5

トウ立ち=抽台(ちゅうだい)

花芽をつける茎が伸長する現象を言いますが,

管理を厳しく行っているタマネギ生産者の場合,

「太くなった苗が,肥料不足や土壌の乾燥などで窒素を十分に吸収できないまま,10°C以下の低温に1ヶ月以上遭遇し,その後の高温・長日条件でトウが伸びて開花してしまうことをさす」

とのこと.淡路島では一般に「ぶち」と呼ばれるそうです.

 

⇒6

淡路島で生産されているタマネギの品種は次の通りです.晩生は,北海道以外ではあまり栽培されていないようです.

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https://web.pref.hyogo.lg.jp/awk08/documents/tamanegi.pdf