紀元前3000年には,エジプト・メソポタミアで栽培されていたというたまねぎ.https://web.pref.hyogo.lg.jp/awk08/documents/tamanegi.pdf
今では,世界中で食べられています.
現在,最も多く生産しているのは中国で,23.8MT(Million Tons)(2016年のデータ).日本が1.29MT(2017年)ですから,約20倍.
続いてインド----
種類別野菜生産量で比較すると,トマトに次いで世界第二位.
(ジャガイモ,サツマイモはこの統計に含まれていません)
• World vegetable production by type 2017 | Statistic
たまねぎの美味しさ
たまねぎが世界中でたくさん食べられているのは何故でしょうか?
栽培しやすい(栽培法が古くから確立している),貯蔵しやすい,調理しやすい,体によさそう----
いろいろな理由が重なった結果でしょうが----
様々な料理の味のベースになったり,全体を引き立ててくれる “たまねぎの美味しさ” が,世界中で認められているためでもあるでしょう.
例えば,たまねぎの入らないスープやシチューは,考えづらいのでは?(和風は別として)
そして,たまねぎの美味しさは加熱によって引き出される.料理の素人ながらそう思います.(最近でこそ,生のたまねぎの美味しさが喧伝されていますが)
そのまま煮込んでも,透き通るまで炒めても,さらに色がつくまで炒めても.どのような加熱方法によっても,それぞれ異なった,しかし,それぞれ,たまねぎ特有の味・コクが引き出されますよね.
加熱によりたまねぎの味(特に甘み)がどのように引き出されるか.
これについては,人間総合科学大学の玉木雅子先生の研究が,ネット上でも紹介されています.例えば次の1〜3.
1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/54/1/54_1_69/_pdf
2. 玉ねぎ、炒めるとなぜ甘い? | たのちから - 楽天ブログ
3. たまねぎを炒めるとなぜ甘くなるの? | NHKテキストビュー
1.は,玉木先生の論文ですので,とても専門的.でも研究者がどのように丹念に調べているかを垣間見ることができるので,興味ある方は,ご一読を.
3.は,「簡単に炒めたとき甘みが引き出される」ように見えるのは----
「生のたまねぎを食べても甘く感じないのは、生のたまねぎに含まれる辛み成分を強く感じてしまうから.火を加えると、水分とともにこの辛み成分が揮発したり、分解されたりして、その分、甘み成分を感じやすくなる」
といった内容.
2.は,玉木先生の多くの仕事をわかりやすくまとめています.3に無い部分は「あめ色状態にしたときの甘み・香り・コク」
少し引用させてもらうと---
・さらにいためると、糖類の一部が別の物質になる.一つは糖が変化したカラメル.もう一つは糖とアミノ酸が反応してできるメラノイジン---
・カラメル、メラノイジンは甘い香りがある.香りが味を強調し、より甘く感じるようになる.
・“分解された辛味成分の一部シクロアリイン”とグルタミン酸が混ざると、こくが出る.グルタミン酸はうま味のもととして有名な成分で、タマネギにも含まれている.これらの成分が混じり合って、複雑な甘味を作る.
調理の過程って複雑ですね.でも,たまねぎの美味しさの秘密がかなり明らかになってきているようです.
補足:
1の論文では,上記の“香りが味を強調” “複雑な甘み”までは解明しきれていません.かなり確からしいとはいえ,まだまだ研究の余地はありそうです.
また
“淡路島のたまねぎ”が,何故,元ラーメン店主が絶賛するコクをスープに与えるのか?http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/06/01/031437
は,玉木先生の研究からもわかりません.味・風味・コクは奥が深い!
たまねぎは
キジカクシ目 Asparagales,ヒガンバナ科 Amaryllidaceae,ネギ亜科 Allioideae,ネギ属 Allium,
タマネギ A. cepa
ネギ属が食用とされるのに対し,ヒガンバナ科のヒガンバナ亜科の植物は要注意.特にノビルと間違えてスイセンを食べてしまう事故がよく起きています.
そして,「たまねぎは,ネギ属の中では,特に長ねぎと近縁」とのデータが発表されています.