出口戦略に影響を与える治療薬.欧米では現在の第一選択が血清療法になりつつある. 尾身「第二第三の波の可能性に対し,新しいサイエンスの武器と我々の賢さで,コロナと共に生きていくことができれば」矢島「感染防止と経済活動.同じ方向をできるだけ向けるようにする」進藤「ボトムアップをしっかりして,ニューノーマルと向き合う」牧原「不満を政治が受け止めるという事.透明な中で意思決定をしていく事.新しい生活様式は,市民の創意をもってつくられていくもの」NHKBS1新型コロナウイルス 出口戦略は(6)

新型コロナウイルス 出口戦略は(6)

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NHKBS1

5月10日(日) 午後9:00~午後10:00

5月16日(土) 午前10:00~午前11:10

 

虫明「世界中が模索する新型コロナウイルスに対する出口戦略ですけれども,ここからは,治療薬についてお伝えします」

合原「WHOによりますと,世界では現在319件の薬や治療法の臨床試験が行われています.

中でも日本で今注目されているのが,こちら,レムデシベルとアビガンです.

こうした中,アメリカでは,ある治療法が緊急措置として認可されました」

 

----中略(以下概略と関連情報)

認可されたのは,罹患して回復した方からの血漿を用いた療法(番組では血漿抗体療法と呼称).

例えば以下を参照.

MIT Tech Review: 新型コロナ、回復患者の血漿が治療に役立つ可能性

新型コロナ 回復者由来の血清療法 米国で個別投与可能に | 化学工業日報

米国食品医薬品局が新型コロナから回復した患者の血液を使った重篤患者の治療を許可 | TechCrunch Japan

 

血漿療法は,ヨーロッパ・アメリカにおける現時点での治療法第一選択となりつつあるようです

日本では余り話題になりませんが,患者が少ない=血漿が手に入りにくいせいでしょうか.

ただ

「安全性については,様々なリスクがあり,あくまでも緊急的な措置としての活用」とのことです.

www.nature.com

なお,アメリカでは,レムデシベルの緊急使用も最近認可されました.

米政府、新型ウイルスにエボラ治療薬レムデシビルの緊急使用を許可 - BBCニュース

 

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虫明「このウイルスとの闘いの出口はまだ先.出口戦略を考える上で必要なのは,耐えられるリスクをとりながら,決断をしていくことかもしれません.

尾身さん,新型ウイルスは今後も第二波,第三波と感染の波が押し寄せてくることが予想されます.これに向けての対策は,どういう所が重要でしょうか」

 

尾身「第二,第三の波が来ることは,覚悟しておいた方がいいと思います.

この5月末から6月にかけて,それでも,少し希望の光が見えつつあると思います.

まず一つは,この2ヶ月,3ヶ月で,日本人は多くのことを学んだと思います.その一つが,どういう場所が感染のリスクが高いのかということ.このことが,これからの行動にも関係する.

さきほど進藤さんが抗体のことを述べていただきましたが,実は抗体検査はまだ分からないことがあるんですけど,それに比べてはっきりしているのは,迅速の抗原診断キット,インフルエンザなどで皆さんがよく使っている,どこでも簡単にできる検査ですね.これが今うまくいく可能性が出てきたんですね.

富士レビオの新型コロナ抗原検査キットが承認、陽性なら確定:日経バイオテクONLINE

それから最後に,皆さんご承知のように,期待できる薬の臨床検査の結果がそろそろ出ますので,この内の幾つかが,万能薬はありませんけれど,在る一定の効果がある(だろう).

そういうことで,第二第三の波が必ず,来る可能性があると思いますけれど,新しいサイエンスの武器というものも出てきたし,我々も少しずつ賢くなってきているということで,なんとか大きなオーバーシュートにならないで,このコロナと共に生きていくことができればと思います

 

合原「矢島さん,長期化と向き合う上で,どんな経済政策を求められますでしょうか」

矢島「出口を出られた後を考えた時に,今までは感染防止と経済活動というのがトレードオフの関係だったと思うんですけど,同じ方向をできるだけ向けるようにするっていうことが,非常に重要なんだと思います.

そういう意味では,経済の方ではゆっくりアクセルを踏んだりブレーキを踏まなくてはいけないと思うんですが,アクセルを踏むためには,感染への恐怖が残っていたらアクセルは踏めないと思うんですね.そこでは全く医療と同じ方向を向けるんだと思います.

一方,ブレーキの方ですが,ブレーキがよくきけば,アクセルも踏めると思うんですね.そういう意味で,経済の問題でブレーキの最大の問題というのは,第二波が来たときに休業と保障の問題だと思います.ここは第二波に備えて政治的には動いていただかないといけないところだというふうに思います」

 

虫明「進藤さん,世界各国の状況を見て,国民が納得しながら出口戦略にむかって行くポイントはなんだと思いますか」

進藤「この病気はトップダウンだけではダメですから,ボトムアップをしっかりやっていただきたいと思います.

一人一人が責任を持って行動し,それを支えるコミュニティーが存在すると.それを考えて,ニューノーマルとむきあっていただきたいと思います」

 

虫明「牧原さん.どのリスクを背負い決断を下すか.国民の間で意見の分かれる可能性もある難しい問題だと思うんですが,どうすれば日本は合意形成ができるでしょうか」

牧原「国民の間に,自粛疲れとか不満とかが,相当貯まっているのは事実だと思うんですよね.これに対して,政治はもう少し信頼を取り戻す必要がある.

一つは,そういう不満を政治が受け止めるということ.もう一つは,透明な中で意思決定をしていく事だと思います.

そして,この先,どこへ向かうのかというビジョンとか方向性を政治が向けていく必要性があって,それは,政府だけではなくて,市民社会が,専門家の枠を超えてお互い話し合う必要がある.市民の創意工夫ですよね.

例えば新しい生活様式っていうのは,市民の創意をもってつくられていくもの,これからどんどん枠付けしていくものだと思いますから,そういうものをつくっていく市民社会の足腰の強さが試されていくのではないかと思います」

 

虫明「いろいろな意見が出ましたけれど,今後を考えていくためには,公衆衛生の専門家だけではたりず,経済の専門家ももっと参加して欲しい.そして,コミュニティーの参加も必要だということも分かってきました.緊急事態宣言が解除されても,以前と同じ暮らしをすぐに取り戻すことは難しい状況です.何を大切にし,新しい生活へと舵を切っていくのか.立場を超えて誠実に議論を深める必要があると思います」

合原「新型コロナウイルスNHKは引き続き最新の情報をお伝えしていきます.今日は感染症対策,経済,そして政治の専門家の皆さんととともにお伝えしてきました.皆さん,ありがとうございました」