「梅/梅花の名前が付けられた植物」8
今日は,キンシバイ.同属のオトギリソウ,セイヨウオトギリについて.
キンシバイとオトギリソウ
キンシバイ(金糸梅)は,わたしには見分けられない花の一つ.
あまり見かけない花と思っていましたが,ネット上で園芸品種を中心にはたくさん販売されていますから,実際の所はどうなのでしょうか?
出会ったことが,多分,ある.定かではありません.
何年か前,たまたま通りがかったお宅の庭先で見て,あとで調べて,キンシバイの園芸品種ヒドコーチかな---.と思った次第.
美しい花でした.開花時期は6月〜7月.
キンシバイとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版
園芸品種全般はヒペリカム(Hypericum)と呼ばれていますが,これはキンシバイが属するオトギリソウ属のラテン語名(学名).
(園芸品種は属名で呼ぶのが業界の習わしになっているようですが,末端の消費者にはわかりにくい命名の仕方.目にするたびにそう思います)
キンシバイは,
キントラノオ目 Malpighiales,オトギリソウ科 Clusiaceae,
オトギリソウ属 Hypericum,
キンシバイ H. patulum
キントラノオ目には,スミレ科,ヤナギ科などよく知られた科が属しますが,オトギリソウ科とは離れたブロックに位置しています.
(hyperikon, hypereikos;おそらくhypo-下/部分を意味する接頭語 + ereikē heath/荒れ地もしくは荒野に自生する常緑低木 Hypericum | Definition of Hypericum by Merriam-Webster ).
オトギリソウ属には他に,オトギリソウ,セイヨウオトギリ,ビヨウヤナギなど.
オトギリソウとセイヨウオトギリ
キンシバイは,ビヨウヤナギとともに低木ですが,オトギリソウ/セイヨウオトギリは草本で,古来から広く知られてきた種(私はあまり知りませんでしたが).
オトギリソウ属 - Wikipedia セイヨウオトギリ - Wikipedia
▽共に伝承があり,特にセイヨウオトギリは魔除けとして有名.
オトギリソウ
オトギリソウの名は,江戸中期の寺島良安の「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」(1713)に「弟切草」と記述されています.春頼(はるより)という名の鷹匠が秘密にしていた薬草を弟が密かに洩らしてしまったことに激怒し,弟を切り捨ててしまったという伝説にその名は由来しているようです.
セイヨウオトギリ
セント・ジョンズ・ワート (St. John's wort / 他のオトギリソウ属の植物と区別するためにはCommon St. John's wort)と呼ばれていますが,英語版ウィキペディアによれば,その理由と使い方は次の通り.
セント・ジョンズ・ワートは,6月下旬, 夏至の頃,すなわち24日の聖ヨハネ(英語ではSt.John)祭の前後に花を咲かせ,収穫されるために命名されました.
収穫したハーブは,邪悪な霊魂を閉め出し,人間や家畜に対する危険や病気から守るために聖ヨハネ祭に家や牛小屋のドアにさげられます.
St John's wort is named as such because it commonly flowers, blossoms and is harvested at the time of the summer solstice in late June, around St John's Feast Day on 24 June.
The herb would be hung on house and stall doors on St John's Feast day to ward off evil spirits and to safeguard against harm and sickness to man and live-stock.
Hypericum perforatum - Wikipedia
▽東洋,西洋の違いはありますが,薬用植物として扱われてきた.
薬効として挙げられているのは次の通り.ただし,現在,公式に認定されている薬効はありません.
また,セイヨウオトギリについては,幾つかの副作用が挙げられ注意が喚起されています.欧米でも民間療法が盛んで,その副作用が懸念されていることがわかります.
オトギリソウ:
生薬で「小連翹(ショウレンギョウ)」:晩夏から初秋にかけて,果実が成熟する頃の全草を日干しにしたもの.
煎じ液:止血,月経不順,鎮痛,うがい薬
浴剤:リウマチ,神経痛,痛風
薬酒:リウマチ,神経痛の予防
生の葉:虫刺され,切り傷や打撲傷(皮膚炎に注意)
セイヨウオトギリ:
セイヨウオトギリソウ | 海外の情報 | 医療関係者の方へ | 「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
歴史的に;
精神疾患や神経痛の治療に使用.マラリアの治療,鎮痛剤,創傷や火傷,虫刺され用の軟膏にも.
うつ病に対しては,有効とする報告があるものの,その後の大規模試験で効果なしと判定されています.
(⇨2022年のNIHの判定では「軽度のうつ病に効果有り」とのこと.ただし,副作用もあります 2023.6.16
https://www.nccih.nih.gov/health/st-johns-wort
日本語訳 https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/43.html
一部抜粋
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリ)は、軽度および中等度のうつ病に対して、プラセボ(不活性物質)よりも有用であり、標準的な抗うつ薬と同等の有用であるようです。ただし、重度のうつ病や12週間を超えるような長期間の効果については、この効果が当てはまるかどうかは明らかにされていません。
研究では、セントジョーンズワートを12週間まで経口摂取しても安全であると考えられています。しかし、セントジョーンズワートは多くの薬と相互作用するため、多くの人、特に従来の薬を服用している人にとっては安全ではない可能性があります。 )
現在では,民間療法または伝統療法として;
濃縮抽出物の錠剤,カプセル,流エキス剤や局所用製剤が市販.うつ病,不安神経症,睡眠障害等に.
花はハーブティーに.