はい,本日のテーマは,私おすすめの
『精進料理』. Buddhist Cuisine」
【出演】慶応義塾大学院教授…中村伊知哉,【司会】鴻上尚史,リサ・ステッグマイヤー,【語り】日高のり子,中井和哉
COOL JAPAN~発掘!かっこいいニッポン~ - NHK
パトリック(コンゴ),ルイ(中国),ユーリ(ブラジル),ヘザー(アメリカ),ニコラ(フランス),シニパー(タイ),フラビオ(イタリア),クリスティアン(イギリス)
クールジャパン『精進料理』Buddhist Cuisine 3
もどき料理
「それでは,精進料理といえば,もどき料理」
「そうなんですよ.ニッポンの精進料理に,いろいろなもどき料理があります.
こちらご覧ください」
うなぎ,
豚の角煮
かつ
1.小豆粥 2.車麩のカツレツもどき 3.芹とれん草の胡麻和え 4.金柑の甘露煮 5.百合根の梅干和え
睦月の精進料理 | 食~foods | 鎌倉ボンズくん ボンズくんと仲間たちの鎌倉たから探し
まぐろ
一見お刺身に見えるもの、鶏肉に見えるものも工夫を凝らして調理された「もどき料理」です。素材に思いを巡らせながらじっくり味わいたい精進料理です。
滋味豊かな“精進料理”を献立に*栄養バランスの良い菜食レシピ&お食事処4選 | キナリノ
さきほど,VTRでも紹介した,すった豆腐と山芋を海苔にのせて焼いた鰻もどき.
お麩(⇒*)を醤油だれで煮込んだ豚の角煮もどき.
お麩(⇒*)に衣をつけて揚げたカツもどき.
そして,こんにゃくで作ったまぐろもどき.
「皆さんの国で,ベジタリアン料理とかビーガン料理にも,もどき風にアレンジしたやつっていうのは,何かありますか?ユーリ何かある?」
ユーリ(ブラジル)「ブラジルにはベジタリアンハンバーガーはあるよ.アメリカのものだと思うけど,味は肉そのものなんだ」
「なるほど.それからそれから?」
フラビオ(イタリア)「グルテンミートがあるんだよ.日本では『セイタン』(⇒*)と呼ばれている」「セイタン?」
フラビオ(イタリア)「それを使ったステーキやベーコンを作ったけど,がっかりだったね」(笑い)
「その,ベジタリアンやビーガンのもどき料理と,日本のもどき料理というのは違いがありますか」
シニパー(タイ)「日本はレベルが違うと思うの.他の国でもどき料理はメインディッシュにならないけれど,日本ではメインディッシュになるもの」
ニコラ(フランス)「他の国でももどき料理はつくるけれど,使う食材が違うんだよ.例えば,こんにゃくは使わないよね.鰻もどきに使っていた海苔や海藻類も大きな違いだね」
「ということは,世界のビーガンとかベジタリアン料理に,こんにゃくとかワカメとかが広がる可能性はあるのかね?」
ヘザー(アメリカ)「あると思うわ.ビーガンにとって一番大切なものは,動物性のものを食べないことだもの.喜んで使うと思うわ」
フラビオ(イタリア)「例えば,ゼラチンの代わりに日本には寒天があるよね.寒天でパンナコッタを作れるんだよ」
「なるほどね.さあ,中村さん.いかがですか?」
中村「元は仏教ですからね.アジア各国に精進料理っていうのはあるんですけど,僧侶じゃない普通の人が食べられるお店っていうのはほとんど無くって,日本は珍しいんですよね.
古くから日本,一汁一菜,野菜中心の食生活してきたわけですけど,お肉食べるようになったのが明治以降なんで,ですから,欧米よりもうんと遅かった.だから,淡泊な野菜を奥深い味にするっていう工夫をずっと重ねてきたんで,おいしいわけですね.
そのおいしいってことが大事で,そこが,今,健康志向の外国の方々に受けてるっていうことだろうと思いますし,これから世界に出ていく,広がっていくチャンスがありそうですね」
「ねえ.そうですね.はい」
⇒*
麩(フ)の歴史と麪筋(メンチン)
[全国麩工業会のサイト 全国製麩工業会 に記されたものを中心にまとめると次の通り]
麩の原形は,中国の「麪筋(メンチン)」であると考えられています.
麪筋という食べ物も,麩と同じく,小麦粉を水で練り,デンプンを水で洗い流した弾力性のある粘った物で,タンパク質(グルテン)のかたまり.
『節用集』に麪筋と思われる文字があることから,南北朝時代または室町時代に,おそらく中国へ留学した仏僧たちによって,麪筋(メンチン)が日本に伝えられたと推測されています.伝来したしばらくの間,麪筋は寺院と宮中の中でのみ作られており,社寺が多く,御所のある京都を中心に発展していったようです.
当時は,麪筋を大きな釜でゆで上げて食べられていた事が多く,他に煎麩(いりふ),炙麩(あぶりふ)として用いられていました.
桃山時代に入ると,麪筋を焼いた「ふのやき」と呼ばれるものが文献にあらわれますが,寺院の外では料理ではなく菓子として食べられていました.
麩が全国に広まったのは江戸時代.上方の寺院の奉公人や見習い,修行僧が麩の製法をこの地で覚え,各々の郷に持ち帰り,その土地の気候や風土に合わせた製法が地域特色のある麩を作っていったと考えられています.
そして,西洋の「精白小麦粉」が輸入されるようになり,従来の「挽き割小麦」を使ったものとは全く異なる現代の麩への道が開かれます.
明治時代になると現在の焼麩が作られ,「すきやき」や「味噌汁」,「酢の物」などの材料に使用されることになります.
麩の種類
[食教育WEB 伝統食品「麩」 — Site ]
湿麩(しっぷ)
小麦粉のたんぱく質には「グリアジン」と「グルテニン」があり,水を加えてよくこねると「グルテン」になります.このグルテンが「湿麩(しっぷ)」と呼ばれるものです.
生麩
湿賦をそのまま使う場合もありますが,粟やヨモギ,もち粉や白玉粉などを加えて練り,もちもちとした食感にした麩もあります.ゆでたり蒸したりした後,田楽や椀だね,煮物などにします.
焼き麩
湿麩に強力粉や山芋などを加えて焼いたものです.煮くずれしにくいので煮込みやなべ物などに使われるものや,おつゆに浮かべて食べるもの,最近ではラスクや麩菓子なども作られています.離乳食や介護食にも向くし,常温保存もできる万能選手です.
小麦粉を足して竹輪に成形したものは「ちくわぶ」と呼ばれ,おでんだねなどに使われます.主に関東で食べられている食品のようで,関西にはなかったものです.生麩と違って,「伸びる」というようなテクスチャーではありません.
「小麦たんぱく(グルテンミート,セイタン)」として市販される食品の原料は,湿麩です.から揚げなどで食べると肉の食感や風味が味わえ,植物性たんぱく質ですから,菜食主義,自然食主義などの食生活を励行する人に向くようです.
なお,セイタンは,海外での呼び名でseitanと書かれています.語源を調べると,なんとJapanese!(https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/seitan)
漢字ではどのように書くのでしょうか?
麩という言葉
[日本国語大辞典等より]
麪筋(メンチン)が「麩フ」と呼ばれるようになったのがいつ頃なのか?
はっきりとした記載は見つけることが出来ませんでした.
日本国語大辞典の例示は
『虎明本狂言』:“ふ,だいごのうどめ〈略〉種々様々取り調えて下さるる”.
室町末期〜近世初期には「麩フ」が現在の意味で使われるようになっていたことは確かなようです.
麩という漢字:「ふ」は「国訓」
[日本国語大辞典等より]
「麩」の漢字本来の意味は“ふすま”(小麦をひいて粉にするときに出る茶色の表皮のくず).
「麩」を現在の意味(小麦粉の中のデンプンを取り除いたあとの麩質または麩素といわれる蛋白質で製した食品)で用いるのは,いわゆる「国訓」(漢字本来の意味と一致しない,日本独自の読み方).
麩は蛋白質リッチ
麩は小麦蛋白質グルテンから作られます.製品にするために,後から強力粉などを加えるため,炭水化物が量としては多くなってしまいますが,それでもタンパク質リッチな食品といえ,精進料理ではタンパク源として重要な役割を果たしています.
https://fooddb.mext.go.jp/result/result_top.pl?USER_ID=16489