栗の歌
「栗」は,万葉集,古事記で,また,芭蕉,斎藤茂吉,大西民子,馬場あき子等々によって詠われてきましたが----
栗 基本情報1 日本のクリ第一回 yachikusakusaki's blog
栗 基本情報5 クリの花 / 実 : yachikusakusaki's blog
瓜食(うりは)めば, 子ども思ほゆ,栗食めば,まして偲(しぬ)はゆ,いづくより,来り(きた)しものぞ,目交(まなかひ)に,もとなかかりて,安寐(やすい)し 寝(な)さぬ 山上憶良 (万葉集 第5巻-802)
いざ子ども のびるつみに
ひるつみに わがゆく道の
かぐはし はなたちばなは
ほつえは とりゐがらし
しづえは ひと取りがらし
みつぐりの なかつえの
ほつもり あからをとめを
いざささば よらしな
(古事記)
世の人の 見付けぬ花や 軒の栗 芭蕉
栗の花 香(か)にたちて咲く ひるさがり 森鴎外先生の おくつきどころ 斎藤茂吉
霧の雨 降るとしもなき 夕空の いずこよりぞ 栗の花 匂い来る 大西民子
栗の実の 笑(え)みそむるころ 谿(たに)越えて かすかなる灯に 向ふひとあり 斎藤茂吉
丹波栗 大き実照りの 豊かなる 古国に還り 座さむか母よ 馬場あき子
しかし,私が,そして多くの方がもっとも親しんできた歌は
「大きな栗の木の下で」ではないでしょうか?
大きな栗の木の下で
あなたとわたし
なかよく遊びましょう
大きな栗の木の下で
“Under the Spreading Chestnut Tree”
Under the spreading chestnut tree
There we sit both you and me
Oh how happy we will be
Under the spreading chestnut tree.
(ネット上には,ほかの英語の歌詞も見つかりますが)
日本では,友竹正則氏が,NHK「うたのおじさん」(1961〜)で取り上げてから広まったそうです.
誠之館人物誌 「友竹正則(友竹辰)」 声楽家、童謡歌手、俳優、タレント、詩人、随筆家、料理研究家
ここまでは,楽しい子どもの歌としての「大きな栗の木の下で」ですが----.
ヤロミール・ヴァインベルゲルの編曲による(1939年)クラッシックの曲が知られていて---
グレン・ミラー編曲のジャズナンバー
子供用の伝承歌謡(nursery rhyme)
との解説Under the Spreading Chestnut Tree - Meaning and Usage もありますが,内容は男女の親密な様子を描いているようにとれるもの.
ひょっとしてこちらの方が元歌に近い?
Underneath the spreading chestnut tree
I loved him and he loved me
There I used to sit up on his knee
'Neath the spreading chestnut tree
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https://www.karaoke-lyrics.net/lyrics/miller-glenn/the-chestnut-tree-398106
そして,この歌詞を借りて----
ジョージ・オーウェルが“1984年”で用いたフレーズは,次の通り.
Under the spreading chestnut tree
I sold you and you sold me:
There lie they, and here lie we
Under the spreading chestnut tree.
Part-I, Chapter-VII of 1984 by George Orwell
Under the Spreading Chestnut Tree - Meaning and Usage https://www.goodreads.com/quotes/32773-under-the-spreading-chestnut-tree-i-sold-you-and-you
日本語訳
ブログに記載していた方 ( 雨降りと1984年 (いしかわや日誌) )
のものをお借りすると,次の通り.
旧訳
「生い茂る栗の木の下で
俺はお前を売り、
お前は俺を売った-」
新訳
「おおきな栗の木の下でー
あーなーたーとーわーたーしー
なーかーよーくー裏切ったー
おおきな栗の木の下で」
この場面は,“1984年”でも,印象深い場面の一つ.
新たな歌がyoutubeにもアップされていて,それなりの視聴数が---.