庭の菖蒲(あやめ)が開花しました.私の感覚ではアヤメは初夏を代表する花.今日は「あやめ」を詠んだ歌をいくつか取り上げます. ただし,古歌では「あやめ」といえば,今のショウブをさすことがほとんど.  五月雨に水まさるらしあやめ草末葉(うれは)隠れて刈る人のなき 源実朝 //  風の音たえたる庭に光と影あつめつつそよぐ文目草(あやめ)ひとむら 宮柊二

アヤメが咲きました.

 

例年並みの開花日かなと思います.そして,アヤメが咲くと「もう春は終わった」と感じます.

 

5月は暦の上では夏.今年の立夏は5月5日.

ただし,5月は「初夏であって」「夏ではない」という矛盾したイメージを持っていますが.

(私の季節感では,5月は初夏,6月は梅雨,7月8月が夏.5月を夏に入れると夏が4ヶ月もあることになってしまい---)

 

そして,その初夏を代表する花がアヤメというのが私の感覚.

(俳句の世界では「アヤメは仲夏:夏半ばの一ヶ月の季語」だそうです)

 

わが家の庭には,イチハツもあって,こちらは4月半ばから咲き始めています.

 

今日は,「あやめ」を詠んだ歌を,主に古今短歌歳時記(鳥居正博,教育社)から,いくつか取り上げます.

ただし,古歌では「あやめ」といえば,今のショウブをさすことがほとんど.

アヤメもショウブも漢字で書けば菖蒲.このややこしい話に関しては,以前取り上げましたので今日は割愛します.

yachikusakusaki.hatenablog.com

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▽あやめぐさ 菖蒲草

 

霍公鳥(ほととぎす) 待てど来(き)鳴かず 菖蒲草(あやめぐさ) 玉に貫(ぬ)く日を いまだ遠みか 万葉集・八・一四九〇)  大伴家持

 

“楽しい万葉集

たのしい万葉集(1490): 霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草

待っていても霍公鳥(ほととぎす)がやってきて鳴いてはくれません。菖蒲草(あやめぐさ)を玉に通す日がまだ先のことだからでしょうか。

・「玉に貫(ぬ)く」とは、霊力があると信じられていた石や植物などに糸や紐(ひも)を通して形作り邪気を払うことを指しています。

 

 

霍公鳥(ほととぎす)、いとふ時なし、あやめぐさ、かづらにせむ日、こゆ鳴き渡れ 万葉集・十八・四〇三五)  田辺福麻呂(たなべのふくまろ)

 

“万葉植物つれづれ(大悠社) 山田卓三”

ほととぎすよ,おまえを厭だと思ったことはない,あやめ草を頭に巻いて髪飾りにする五月五日には,ここを鳴いて通って欲しい.

 

 

五月雨に水まさるらしあやめ草末葉(うれは)隠れて刈る人のなき (金槐集・夏・一三二)  源実朝

 

 

 

▽あやめ 菖蒲 //花あやめ

朝じめる瀬上(せのうへ)の道をあるき来てあやめの花をかなしみにけり (あらたま)  斎藤茂吉

 

 

風の音たえたる庭に光と影あつめつつそよぐ文目草(あやめ)ひとむら (日本挽歌)  宮柊二

 

 

まず白木蓮枝垂れ桜咲き菖蒲(あやめ)咲く父母の庭夢に見ている (水憂)  道浦母都子

 

 

▽鳶尾草(いちはつ)・一八(いちはつ)

いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春ゆかんとす (竹の里歌)  正岡子規

 

 

妻がさす鳶尾草白う瓶にあふれうすぐらき家をけふ明るくす (荒栲 あらたえ)  筏井嘉一