今日は,栗の花/実を取り上げます.
栗 基本情報5
クリの花
あまり山野の花を知らない私ですが,栗の花は見たことがあります.
といっても,雄花だけ.
下から見えるのは雄花だけですよね.
https://matsue-hana.com/hana/kuri.html.
栗は5月下旬から6月7月に開花しますが,雌雄異花で雄花と雌花がある風媒花とのこと.
https://matsue-hana.com/hana/kuri.html.
ネット上には,シバグリの花の画像が沢山アップされています.
驚くほど多くの画像を掲載している「松江の花図鑑」https://matsue-hana.com/hana/kuri.html. 的確に捉えた美しい画像を載せている「里山コスモブログ」https://blog.goo.ne.jp/utyucosmos/e/96944cfb45f9228faf470808bc0f0da5.-----
また,園芸種の受粉を説明しているタキイのサイトから,花の付き方から受粉の特性まで,学ぶことができます.https://shop.takii.co.jp/shop/selection/kaju1110_02.html
以下,タキイの文章を軸に,画像は上記他サイトのものを組み込みながら,栗の花について説明してみましょう.
クリの花は穂になって咲くので「花穂」と呼ばれています.
花穂には雄花だけをつける「雄花穂」と,雌花と雄花を両方つける「帯雌花穂」の2種があります。
雌花は,枝の先端の頂芽とそれに続く2,3芽から発生した枝(果実をつける枝=結果枝)の花穂の基部に,1~4個つきます. (それより下に咲く花穂はすべて雄花穂です)
https://matsue-hana.com/hana/kuri.html. https://blog.goo.ne.jp/utyucosmos/e/96944cfb45f9228faf470808bc0f0da5.
栗は風媒花.
雌花には3個の子房があります.それぞれが受粉して三つの実ができます.
その際,真ん中の子房が先に生長し,その後両脇が伸びてきて受粉・受精を行います.
また,この三つの子房を囲んだ総苞*が,後のイガを形成します.
(*総苞/総包:本来,花序全体を包む構造を総包と呼びます.クリはやや異なり雌しべを包んでいる構造ですが,ブナ科ではこれを総包と呼ぶ意見が多いとのこと ニッポニカ総包/総苞(ソウホウ)とは - コトバンク)
なお,クリは「自家不結実性」(同じ品種の受粉では結実しない).
受粉させるためには,「受粉樹」を混植する必要があります.
1品種だけでなく2品種以上あったほうがよく,収穫期の異なる,早生,中生,晩生品種からそれぞれ1品種ずつを選んで栽培するのがおすすめです.
もうひとつ---クリには日本グリと中国グリがありますが,中国グリの結実のために日本グリを受粉樹にすると,中国グリでも渋皮が剥きにくくなることも覚えておくとよいでしょう.
歌に詠まれた栗の花
栗の花は,これを詠んだ芭蕉の句がよく知られています.
また,和歌歳時記(鳥居正博編集 教育社)によれば,斉藤茂吉,北原白秋,中村謙吉といったそうそうたる歌人も題材としています.
世の人の 見付けぬ花や 軒の栗 芭蕉
栗の花 香(か)にたちて咲く ひるさがり 森鴎外先生の おくつきどころ 斎藤茂吉
霧の雨 降るとしもなき 夕空の いずこよりぞ 栗の花 匂い来る 大西民子
クリの実
https://matsue-hana.com/hana/kuri.html.
栗の収穫期は,地域によって差がありますが,シバグリの場合,おおむね9月初旬から十月初旬とのこと(旬の食材百科).
・早生栗丹沢は9月上旬〜9月中旬.
・ぽろたんも分類は早生栗ですが,丹沢の後に収穫.
・最も収穫量の多い筑波は中生栗で,9月下旬から10月上旬に収穫,古くからある品種銀寄も同時期に収穫.
クリの実のイガは,先ほど記載したように,総苞が変化したもの.
そして,栗は,大豆などの豆類やひまわり等と同じく,胚乳がない無胚乳種子.
http://feynmanino.watson.jp/7450_persimmon.html
食べている大部分は,養分をため込んだ子葉ということになりますね.
また,
大豆の場合,発芽時,あたかも豆全体が持ち上がったかのように,子葉が地上に姿を現すのに対し,
栗は子葉を地下に残したまま発芽するとのこと(地下子葉型).ドングリも確か同じでしたよね.
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/ex_old/special_ex/2012mebae/index.htm
栗は,おいしさはもちろん,その姿も美しい.
https://twitter.com/hidakacity_pr/status/945490395101663232
栗 基本情報1 日本のクリ第一回 yachikusakusaki's blog
しかし,万葉集の他の歌では,栗のイガに三つの実があることから,「三栗の」という「中」にかかる枕詞として用いられました(鳥居正博編集 和歌歳時記).
また,近世においては,落ちる栗や栗の実の姿自体を詠んだ歌が見られます(和歌歳時記).
栗のおいしさはあまり歌には詠まれていないようですね.
食べ物を歌に詠むのは意外と難しいのでしょうか.例外的?な,山上憶良の歌が,さらに輝いて見えるようにも思えます.
栗の実の 笑(え)みそむるころ 谿(たに)越えて かすかなる灯に 向ふひとあり 斎藤茂吉
丹波栗 大き実照りの 豊かなる 古国に還り 座さむか母よ 馬場あき子