イチジクを詠んだ短歌2 人類が最初に栽培した植物の一つ.「単為結実型」が紀元前9,400~9,200年頃の遺跡から発見されています. 生きてゐてああよかったと朝露にしつとり濡れし無花果を食む 香川進  無花果の繁みに遺(のこ)る少年期も嗅ぎつけられる蟻攀(すが)りゆく 平井弘  無花果の青葉明るき下ゆくと妻病みてよりわが愉しまず 田谷鋭  無花果のしづまりふかく蜜ありてダージリンまでゆきたき日ぐれ 小中英之  恋を好むひと多すぎる無花果を食めば愚かに泣けて泣けて 山田富士郎

子供のころの思い出から,懐かしさを感じてしまうイチジクですが,イチジクの家庭での栽培が最近少なくなったように思います.

一方,季節になるとイチジクが果物売り場に並ぶようになっています.

現在多く流通している品種は,かなり日持ちが良い桝井ドーフィンという品種だそうです.

https://www.shopping-charm.jp/product/2c2c2c2c-2c2c-2c2c-2c2c-2c3439333137

https://www.ja-hareoka.or.jp/specialty/ichijiku.php

 

日本で二番目に栽培されている品種は「蓬莱柿」.江戸時代にポルトガルから伝わった品種(多分)

https://kaju-fruits.com/イチジク品種紹介「蓬莱柿(ほうらいし)」/

https://kotobank.jp/word/イチジク-31277

イチジクは,日本へは寛永(かんえい)年間(1624~1644)にポルトガル人により蓬莱柿(ほうらいし)の名で伝えられ,今日の在来種となった.

名の由来は『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』に「俗に唐柿(からがき)という.一月にして熟すゆえに一熟(いちじゅく)と名づく」によるという.

 

世界に目を向けると---

2020年の世界の生イチジクの生産量は126万トンで,

トルコ(世界全体の25%),

Turkish Fig Dishes

エジプト,モロッコアルジェリアが最大の生産者で,合わせて全体の62%を占める」

https://en.wikipedia.org/wiki/Fig)とのことです.

 

 

食用のイチジクは,人類が最初に栽培した植物の一つと言われています.

https://www.newworldencyclopedia.org/entry/Fig 

http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5038116.stm

「サイエンス誌の記事によると,紀元前9,4009,200年頃のイチジクの化石9個が,古代エリコの北8マイルに位置するヨルダン渓谷の新石器時代初期の村で発見された.
このイチジクは単為結実型であることから,初期の栽培品種であることがわかる.次の作物が栽培化される1,000年も前に,意図的に植えられて栽培されていた可能性がある」
 
なお,上の記事にある「単為結実型」とは,受粉がなくても結実する品種ということで,イチジクの唯一の送粉者であるイチジクコバチの助けを借りずに結実できることを意味しています.
日本に多い桝井ドーフィン,蓬莱柿を含め,栽培種のほとんどは単位結実型になります.
 
無花果と表記されるイチジク属.花は,外から見えませんが----.イチジク属の一つ,イヌビワを例にとって,イチジク属植物の受粉の仕組みの図を掲載しておきます.詳細は,記事をお読みください.

https://www.brh.co.jp/research/lab02/openlab0620

「単為結実型」のイチジクでは,コバチの侵入が必要なく,また,日本には食用となるイチジク(Ficus carica)の受粉に関与するコバチは棲息していません.

イヌビワのコバチはイチジクの受粉を媒介しません.イチジク属の種それぞれに対応して,受粉を媒介する特定のコバチがいます.

https://www.brh.co.jp/publication/journal/032/ss_2

 

イチジクは,生で食べる以外に,ドライフルーツやジャムとして,世界で食べられています.

 
また,人の文化と深く関わっており,例えば,アダムとイブの物語にもイチジクの葉が描かれます.

 

イチジクを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

生きてゐてああよかったと朝露にしつとり濡れし無花果を食む  香川進 氷原

 

しげりたる青葉のひまに無花果の実が殖えてゆく梅雨ふる日々に  佐藤志満 水辺

 

明るき店に無花果をしばし選りぬ帰ればなほ履歴書を書かねばならぬ  近藤芳美 早春歌

 

無花果の繁みに遺(のこ)る少年期も嗅ぎつけられる蟻攀(すが)りゆく  平井弘 顔をあげる

 

もゆる雲 白き皿の無花果をまふたつに裂く義妹(いもうと)とわれと  水城春房 心象水栽培

 

無花果の青葉明るき下ゆくと妻病みてよりわが愉しまず  田谷鋭 水晶の座

 

無花果のうちなる花や前の世にわれほのぼのと命絶ちけむ  塚本邦雄 森曜集

 

無花果のしづまりふかく蜜ありてダージリンまでゆきたき日ぐれ  小中英之 翼鏡

 

恋を好むひと多すぎる無花果を食めば愚かに泣けて泣けて  山田富士郎 アビー・ロードを夢みて