梨を詠んだ短歌  9月上旬中旬の梨主力品種は豊水.果肉はやわらかで多汁.甘味の中にほどよい酸味.栽培面積第2位の品種で親は「幸水」×「石井早生× 二十世紀」. 梨はむと富士にむかひてひらきたるわが口を吹く初秋の風 前田夕暮  こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ 若山牧水  みづみづしかがやく珠をまもらむと袋をかけて梨はしづまる 生方たつゑ  男たる鬱を抱きて帰り来つ梨むく妻へ梨食ふ子らへ 高野公彦

秋の味覚ナシ.

今,ご近所の青果売り場に置かれている主力品種は豊水です.

ほかに置かれていたのは,二十世紀とあきづき.

 

2018年の栽培面積では,豊水は第2位.二十世紀とあきづきは,それぞれ第4位,第5位となっています.

https://www.naro.go.jp/laboratory/nifts/kih/area/pear/index.html

栽培面積第1位の幸水は,早生品種で,すでに出荷が終わっているようですね.幸水人気が高まったせいもあり,ナシは「秋の味覚」から,「夏と秋の味覚」となった感があります.

https://www.pref.chiba.lg.jp/ryuhan/pbmgm/zukan/kajitsu/nashi.html

https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kazyu/attach/pdf/index-21.pdf

今主力の品種,豊水は,果物ナビでは,次のように紹介されています.二十世紀は今の人気品種の親としても重要な役割を担っていますが,豊水も二十世紀の血を受け継いでいることが最近はっきりしたとのこと.

https://www.kudamononavi.com/zukan/jpnpear.htm#NO1

350~400gほどになる大きめの赤梨で,幸水と並んで生産量が多い品種です.比較的日持ちがよく,果肉はやわらかで多汁.甘味の中にほどよい酸味があり食味に優れています.

親は「幸水」×「石井早生× 二十世紀」とされ,1972年(昭和47年)に命名登録されました.当初は「菊水×八雲」と「八雲」の交配ということでしたが,DNA鑑定により親子関係に誤りがあることがわかり,のちに訂正されています.店頭に並ぶのは8月下旬頃からです.

 

下の図は,別のサイトから採ったもの.この図では,豊水の親は不明とされていました.

なお,下の図にはない「あきづき」は,「新高×豊水」×「幸水」とされています.現在人気の品種全ての系統を引いているということですね.

二十世紀とともに,日本ナシの主力であった長十郎は現在ほとんど栽培されていないそうです.長十郎の血を引く品種もほとんどないようですが,新高の親が長十郎かもしれないとのこと.

http://www.yozaemon.net/index_history07.html



ナシを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

梨はむと富士にむかひてひらきたるわが口を吹く初秋の風  前田夕暮 深林

 

こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ  若山牧水 くろ土

 

梨子(なし)二つ葡萄四五房机辺に置き唯に見る物にしてをり吾は  尾山篤二郎 平明調

 

みづみづしかがやく珠をまもらむと袋をかけて梨はしづまる  生方たつゑ 雪の音譜

 

梨の木の若芽は未だのびきらず緑の玉の小さき実をつく  小野真繁 新宿

 

梨の実の黄いろにたるる梨畑木下に居れば曇日あつし  佐藤佐太郎 群丘

 

梨ひとつ腐るに月の差してゐぬおそろしくなりしものの形や  河野愛子 鳥眉

 

男たる鬱を抱きて帰り来つ梨むく妻へ梨食ふ子らへ  高野公彦 淡青