ニンジン3 多くの栽培種がある中,日本では5寸人参が市場を席巻.向陽二号の開発が大きく貢献しているとのこと.この様なニンジンの栽培には長い歴史があります. + ニンジン生産上位県

ニンジンには沢山の栽培品種があります.

世界的にみれば.

例えば,“Carrot” “Europe”でグーグル検索すると,次のような画像が.

f:id:yachikusakusaki:20180215021245j:plain

carrot europe - Google 検索

 

英語版ウィキペディアの「Carrots in a range of colours」と題した画像は,以下の通り.

f:id:yachikusakusaki:20180215021706j:plain

Carrot - Wikipedia

 

しかし,日本のスーパーで見かける品種は,ほとんどが5寸ニンジンと呼ばれるもの.様々な長所を兼ね備えているため,市場を席巻してしまったようです.

かつては,子供が嫌いな野菜のトップであったニンジン.

今では,子供が好きな野菜に変身と聞いていますが,これも,現在販売されている5寸人参の品種改良のおかげとのこと.

 

5寸人参「向陽二号」

5寸人参は西洋人参に分類される品種.西洋人参が渡来する以前に栽培されていた東洋人参は,ほとんど姿を消し,京人参とも呼ばれる金時人参が国内で唯一残った品種だそうです.

f:id:yachikusakusaki:20180215022728j:plain

http://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/1102/yasai1.html

 

「西洋系は甘く,東洋系は人参くさい」などと何となく思っていた私でしたが,この認識は全くの間違い!

西洋人参は,栽培期間が短く、収穫作業のしやすい短根であることから,東洋人参に代わって,以前から広く栽培されていました.

現在の子供にも好まれる人参に大きく変身したのは,「向陽二号」という品種が開発されたことがきっかけだったようです.

 

開発したタキイ種苗の方によると,

国内シェアNo.1の大人気ニンジン「向陽二号」誕生の秘密 | NHKテキストビュー

向陽二号以前に主流であった「黒田5寸」は人参臭が強く子供には敬遠されていたとのこと.同時に,「黒田5寸」は秋まき専用種で,1年を通して収穫することができませんでした.

この2つの欠点を同時に改良できたのが「向陽5寸」という品種.その他,収穫量も多く、耐病性も強い.輸送時に傷むことも少ない.良いことずくめでしたが,種が十分に取れません.その点を改良できたのは,現在の野菜のほとんどに用いられているF1品種の技術.

タネがたくさんとれることはもちろん、春の栽培に優れた晩抽性の系統と、寒さのなかでも根がよく太り、葉が傷みにくい秋の栽培に優れた系統を掛け合わせ,この優れた両親の長所を色濃く受け継いだF1品種が「向陽二号」でした.

現在でも向陽二号は,ニンジンの主力産地の北海道では7〜8割,全国的にも5〜6割のシェアを誇っているそうですが,様々な新しい品種も開発され(ニンジン/新しい品種 という乱暴な検索の仕方でも沢山のものがヒットします),しのぎを削っているようです.

 

ニンジンの歴史

世界中で栽培されているニンジンですが,このニンジンには長い栽培の歴史があります.

日本については,主にhttp://www.bs-tbs.co.jp/food/history/bn0608.htmlから,

また,ヨーロッパについては,主にhttps://en.wikipedia.org/wiki/Carrotによって,

ニンジンの歴史を以下まとめてみます.

現在の栽培されているニンジンは1つの起源に由来していることが,分子遺伝学でも証明されています.

野生種のニンジンはおそらくアフガニスタンからイランにまたがる地域が原産地.この地域は,いまでも多様な野生種が育っているところとして知られ,現在栽培されているニンジンの直接の祖先は11世紀にアフガニスタンに現れた品種とのこと.

日本では,アフガニスタンから東に伝わったものを東洋人参,西に伝わったものを西洋人参と呼んでいます.

この間,長い年月をかけて,苦味の少ない品種が選別されてきたものと考えられています.

ヨーロッパでは,古い遺跡からもニンジンの種が見つかっており,葉菜としてのニンジンはかなり古くから利用されていたようです.

根菜としての人参が初めて伝わったのは8世紀,スペインへイスラム教徒によるとのこと.10世紀の記録では,当時のニンジンは紫色でした(直接の祖先が11世紀のアフガニスタンの野生種だとすると,この時の紫色のニンジンは現在のニンジンとは異なるという事になりますね)

11世紀になると赤や黄色のニンジンの記録が現れ,17世紀にはオランダで現在主流のオレンジ色のニンジンが開発されました.当時のオランダ国旗がオレンジ色だったことと関連があるともされています.

一方,東洋人参は13世紀頃中国に伝わります.日本には16世紀江戸時代初期にやってきました.

ところが東洋人参が日本に伝わる前から,日本には滋養強壮の薬用植物として利用されている「人参」が存在していました.

オタネニンジン朝鮮人参・高麗人参)ですね.ニンジンはセリ科の植物ですが,オタネニンジンは,ウコギ科の多年生植物.しかし,栄養価の高さ(薬効),形態が似ていることから人参という共通の名前になったようです.ただ,このオタネニンジンと区別するため,はじめは「芹人参」と名付けられましたが,その後いつしか「芹」がとれて人参と呼ばれるようになり,江戸時代中期には盛んに栽培され,新しい品種も生まれたようです.

そんな中,江戸時代末期には,西洋人参が海を渡ってヨーロッパから長崎にやってきました.そして明治に入ると,さらに多くの品種の西洋人参が伝来し,現在では主流の栽培種になっています.

 

ニンジン生産県:1位は北海道,「おかわり日本」で雪下にんじんをとりあげた青森県は4位.

ニンジンは,「向陽2号」をはじめとした品種改良の結果,一年中栽培されており,収穫時期によって,春夏,秋,冬の三つのシーズン別に統計が取られています.

通年の1位は北海道で,主に秋もの.

2位の千葉は冬ものが主.

NHKBS「食材探検 おかわりにっぽん」で雪下にんじんをとりあげた青森県は4位で,春夏ものが主ですが.秋ものは北海道に次ぐ量を,冬ものは北海道では生産されないのに対して,雪下ニンジン等の生産が行われているようです.

f:id:yachikusakusaki:20180215023920j:plain

http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/index.html