欲望の資本主義2018(4) 第4章-第5章前半 「ポピュリズムと言うが,グローバリゼーションに対する抵抗の一種じゃないかな」「『スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒』. 2015年に悪魔的な門が開いたのでは.人々が『いい人』でいられなくなったのかもしれない」「 “外側”が無いと,悪が生まれる」『役に立つことだけをしろ』『自分を愛してくれる者は愛し,自分を嫌うものは嫌え』『良くしてくれる者には良くし,意地悪をしてくる者にはやり返せ』 NHKBS「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」

私たちは働く.生きるため,お金のため,社会のため.雨の日も,風の日も.

それは資本主義のルール.でも---.

 NHKBS

「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」

   世界経済のフロントランナー達が紡ぐ,お金と欲望をめぐる物語

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 https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html

欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 

「一方にはテクノロジー分野の発展.そして一方には低成長. 両者は,この10年間分断されていることが分かる.この逆説はミステリーだ」

「新しいテクノロジーがもたらす果実は,賃金体系のトップにいる一握りの人たちが圧倒的な恩恵を受けている」「新しいテクノロジーは,大多数の生産性を向上させるどころか,職を奪う.つまり,人々の生産性が失われていくのだ」

 欲望の資本主義2018(2) 第2章 革命の夢のあとさき

 「資本主義は,カール・マルクスが定めた定義:『資本主義とは,人がお金を商品に投資して,より多くのお金を獲得することを目的としたシステム』」「技術革新は,常に大きな需要があって実現される.でも,労働者が低賃金で購買力がなければ,技術革新は機能しない」「マルクスによれば,お金は労働者の所に行くべきだ.すごく単純化するなら,そういう事だ. しかし彼は労働者にはお金が行きようがないことに気がついた」 

欲望の資本主義2018(3) 第3章 ショウの幕があがる時

「今日の資本主義の世界は,『商品の生産そのもの』になった.見せるための『Showショウ』なのだ」「今のアメリカの政権が富を生み出す方法は,まさしくショウ形式によるものだ」//ウォール街の投資家風の男性「資本主義は,自然な形だと思う.お金も食べ物もなく路上で暮らして,心の問題を抱えている人もいる.見るには悲しいけど,『自由な社会』が払うべき代償だね」 

 

《言葉》第4章-第5章前半

マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)

「皆が、ポピュリズムと言うが,それは,無意味で,的外れな診断だ.今起きている現象には,恐らくそれを表現するために,より適した言葉が見つかるのではないかと思う.これは,グローバリゼーションに対する抵抗の一種じゃないかな」

 

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

「突然,邪悪な勢力,フォース,に目覚めたのだ.僕はポピュリズムと呼びたくない.これは暗い悪,DARK,EVILのようなものだ」

「あれは2015年の終わり頃,『スター・ウォーズ』が公開されたね.『エピソード7』.タイトルは『フォースの覚醒』.少し予言めいているよね.2015年に何かが起こり,悪魔的な門が開いたのではと.

何か構造的な変化が生じたのかもしれない.この状況を表すうまい言葉が見つからないが,もう人々が『いい人』でいられなくなったのかもしれない.『なぜ私が助けなきゃいけないの?』ってね」

 

マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)

彼(シェリング)は『悪は人間の心の中だけでなく,実在するポジティブなフォースだ』と主張している.

どんな組織でも,どんなシステムでも,時間を経て自身を維持するためには,他のシステムを排除しなければならない.外部がないシステムは『異質なもの』を作り出さなければならない.

これが,悪のダイナミズムだ」

 

“外側”が無いと,悪が生まれる.by シェリング

 

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

「資本主義の問題点は,道徳規範を失い,中心が空洞化していることだと考えてきた.しかし,空洞だと思っていたのは,私の間違いだった.

実際には中心には強力で支配的な観念が存在しているようだ.

原則は

『役に立つことだけをしろ』

『自分を愛してくれる者は愛し,自分を嫌うものは嫌え』

『良くしてくれる者には良くし,意地悪をしてくる者にはやり返せ』

この観念は,あらゆるところに根付いていて生まれたときから親しんでいるから,私たちは気がつかないのだ」

 

《内容の記録》

第4章 フォースの覚醒

 ▽経済と政治の錯綜

グローバル化.国境を越えて,資本を増やそうとする人々と,そこから,取り残される人々.

引き裂かれる欲望の世界.

映像 ドナルド・トランプ「壁を作るぞ.議論の余地はない」

右でも左でもない.上でも下でもない.資本主義はどこへ向かう?

 

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

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https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html 

「もともと,私たちは『政治移民にはOK.経済移民にはNO』と言ってきた.『経済移民は良い暮らしをしたいだけ』『それはNOだ』.だが,実際は逆だった.数多くの移民がヨーロッパに来て私たちの代わりに働き,さらに消費をしてきたことを,私たちはOKだと思っていた.移民と犯罪の可能性を結びつけたり,イスラムと関連づけたりすることもなかった.

なのに突然----,状況が政治的になり,移民が仕事ではなく,助けを求めに来た瞬間,私たちは『NO』と言ったのだ.実際は,何千万人もの経済移民を歓迎してきたのに,事態が政治的になった時に『NO』と言ったのだ.

私たちは,理屈に反する本能的な行動をしているね」

 

いつから政治の裏側に経済という本音が張り付いたのか.建前では仲間.でも,実は敵.

矛盾は,なぜ生まれた?

 

▽『ポピュリズム』は的外れ.グローバル化による不平等の発見?

マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)

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https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html 

「皆が、ポピュリズムと言うが,それは,無意味で,的外れな診断だ.今起きている現象には,恐らくそれを表現するために,より適した言葉が見つかるのではないかと思う.これは,グローバリゼーションに対する抵抗の一種じゃないかな.この分野で,なにかが起きているんだ.グローバリゼーションは,基本的には,経済プロセスだから,起きていることを経済的に説明しなくてはならない.政治的にではなくてね.ドイツの人口の12.6%が,排外主義に目覚めて投票を決めたわけではない.そうではなく,むしろ,地球のあちこちで,不公平を目にするようになったため,と考えた方がよい.

まだ十分に話題にされていない国にブラジルがある.今,ブラジルは崩壊しつつある.ブラジルは,今の資本主義の過度な実験場とも言えると思う.知る限り,地球上で最も不平等な国だ.南アフリカよりもね.

経済学者のあなたの方は,この様子をどう考えるかな」

 

▽突然,邪悪な勢力,フォース,に目覚めた.『なぜ私が助けなきゃいけないの?』

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

ポピュリズムは正しい言葉ではないよね.ポーランドでも起きた.

 ガブリエル「そうだ.EU内で起きていることだ」

「ヨーロッパの交渉の中心にいて,EUの理念に賛成していた政権だった.なのに2週間で突然,邪悪な勢力,フォース,に目覚めたのだ.僕はポピュリズムと呼びたくない.これは暗い悪,DARK,EVILのようなものだ.

あれは2015年の終わり頃,『スター・ウォーズ』が公開されたね.『エピソード7』.タイトルは『フォースの覚醒』.少し予言めいているよね.

2015年に何かが起こり,悪魔的な門が開いたのではと.僕は陰謀論とかを調べたりさえもしたよ.

何か構造的な変化が生じたのかもしれない.この状況を表すうまい言葉が見つからないが,もう人々が『いい人』でいられなくなったのかもしれない.『なぜ私が助けなきゃいけないの?』ってね.

キリスト教文化の反応は,イスラム教の国々の反応よりも極端に経済的なものだった.イスラム教の国々は,実際,はるかに多くの難民を受け入れている」

 ガブリエル「そうだ」

 

▽資本主義は国家というよりも経済的な帝国だ.帝国は内部から悪をつくりだすのだ.

マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)

「あなたの『悪』の分析に賛成だ.悪というものを,今一度考えてみる必要がありそうだね.

シェリング(フリードリッヒ・シェリング ドイツ 1775-1854)という哲学者がいて,彼については沢山研究したが,今のところ彼が悪についてベストな説を発表している.

この本の中で,彼は『悪は人間の心の中だけでなく,実在するポジティブなフォースだ』と主張している.

どんな組織でも,どんなシステムでも,時間を経て自身を維持するためには,他のシステムを排除しなければならない.外部がないシステムは『異質なもの』を作り出さなければならない.

これが,悪のダイナミズムだ」

 

“外側”が無いと,悪が生まれる.by シェリング

 

「システムが大きくなりすぎたら---.例えばローマ帝国だ.スターウォーズも『帝国』だったね.ローマ帝国は外部があるという感覚を失った瞬間に,崩壊を始めた.

確かにグローバリゼーションは新たな悪を生み出したのかもしれない.資本主義は国家というよりも経済的な帝国だ.帝国は内部から悪をつくりだすのだ.これが『ナショナリズム』などが復活している背景なのだろう.確かに悪に似た姿をしている」

 

ただ一つの星に住む私たち.

「悪」は個人に生まれるのか.

「悪」は社会に生まれるのか.

 

第5章 イノベーションの呪縛

▽中心には強力で支配的な観念『役に立つことだけをしろ』『自分を愛してくれる者は愛し,自分を嫌うものは嫌え』『良くしてくれる者には良くし,意地悪をしてくる者にはやり返せ』

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

 「資本主義はゾンビに例えることも出来る.ゾンビが醜いからではなく,非常に効率的だからだ.

フロイトによれば,人間の抱える問題は,『増えること』と『食べること』に行きつく.心理学では有名な説だね.

でも,ゾンビはその上をいく.人を『食べる』と同時に『増える』からね.驚くほど効率的だ.でも,私たちは,こんな効率化は望まない.ゾンビは愛する者の魂を奪い,動物以下になってしまうからね」

  「資本主義の問題点は,道徳規範を失い,中心が空洞化していることだと考えてきた.哲学者ラカンの読みすぎかな.しかし,空洞だと思っていたのは,私の間違いだった.

実際には中心には強力で支配的な観念が存在しているようだ.

原則は

『役に立つことだけをしろ』

『自分を愛してくれる者は愛し,自分を嫌うものは嫌え』

『良くしてくれる者には良くし,意地悪をしてくる者にはやり返せ』

この観念は,あらゆるところに根付いていて生まれたときから親しんでいるから,私たちは気がつかないのだ」

 

 

欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 

欲望の資本主義2018(2) 第2章 革命の夢のあとさき

欲望の資本主義2018(3) 第3章 ショウの幕があがる時

欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半  

欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半

[以上,前編]

後編

欲望の資本主義2018(6)第6章 幻想の貨幣愛

欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った

欲望の資本主義2018(8)第8章交換だけが駆け巡る

欲望の資本主義2018(9)第9章 闇の力が目覚める時

欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半

欲望の資本主義2018(11)第10章ゲームは終わらない 後半