フェイクニュース特集 あなたは被害者?加害者?
2017年2月7日(火)放送 NHK「クローズアップ現代+」の内容を,独断で,かなりの割愛の上でまとめました.
フェイクニュース特集 あなたは被害者?加害者? - NHK クローズアップ現代+
に,放送内容のかなり詳細な内容が掲載されていますので,ぜひご覧下さい.
(本ブログの画像もこのサイトのものです)
1. インターネットを通じて事実ではないことを発信する偽のニュース,フェイクニュース.日本でも不確かな情報が拡散しています.
◎「塩水1リットルを一気に飲めばやせられる」若い女性の間でやせられる話題のダイエット法.
ネットで検索すると安全な方法として紹介されているが,実は全くのウソ.
塩水を飲み体調を崩した女性「『海外では流行していて毎日やる』みたいなことが書いてあったので,体にそんなに悪くなさそうな気がしました」
総合診療医徳田安春さん「胃腸に穴があく.大量の血液を吐き出す.吐血と言います.救急搬送になることもあります」
◎「海水温の急激な変化は,マグヌチュード7の大地震の予兆だ」(=フェイク)
◎「福岡の陥没事故でできた穴は放射能で汚染された土で埋められた.恐ろしい事です」(=フェイク)
◎「マイナンバーは役所で手続きすれば抹消できる」(=フェイク)
◎「『WHOが大麻が有害だという根拠はない』と発表した」(=フェイク)
先週の木曜日,この番組で大麻について特集したところ,このフェイクニュースを見た視聴者から「大麻は有害ではないのではないか」という問い合わせが相次いでいるんです.ですが,これはいずれも取材によって間違った情報だと確認できております.
デーブさん「そうですね.本来,パロディーとか風刺は,非常に完成度が高くて,ウイットがあったんですけども,基本的に笑えないんですよね.ただリアクションが見たいだけ,あるいはちょっと迷惑かけたい」
池上さん「最近ですとね,日本人の女の子が韓国でレイプをされたけれども,裁判で無罪になったというフェイクニュースが拡散して,そういうニュースを見たい人がいっぱい殺到して,いってみれば,広告料を稼げるという,そういうものまで出てきている,となると,本当に意図的なフェイクニュースが出ている」
2. いったい,なぜフェイクニュースは拡散してしまうのか.私たち自身が知らないうちに間違った情報の拡散に加担しているかもしれないんです
◎偽の情報だと気づかずに,善意で拡散
去年(2016年),熊本地震の直後,ツイッターに投稿されていた
デマ情報「おいふざけんな,地震のせいで,うちの近くの動物園からライオン放たれたんだが」
動物園の近くに住んでいる10代の女性.余震におびえながら避難している時のこと.この情報を信じてしまった.友人に危険があってはいけないと投稿をすぐに拡散した.
10代の女性「もしかしたらということがあるかと思って.近くにいたら危ないから知らせないとと思って(友達に拡散)しました.」
◎深く考えずに拡散
5,000人以上のフォロワーがいる,東海地方の男性.電話取材に対し,こう答えた.
「見てすぐに,おもしろいと思ってリツイート・拡散しました」
10万のフォロワーに拡散した,都内のある人物は….
「拡散したかどうか記憶にありません」
ライオンが逃げ出したというデマの対応に追われた動物園.不安を覚えた住民などからの問い合わせは100件を超えた.
対応に当たった職員 大木昌之さん「地震にあっているところで,皆さんそれ時点で不安がっているのに,そういった情報を流して,さらに混乱させている.どう考えても許せない話」
偽の情報を拡散させた人は,1時間で少なくとも2万人に.被災地に大きな不安を広げることになった.
フェイクニュースを流した男性は逮捕されたものの,その後,釈放されている.
「ネット情報の特徴」(藤代さん)
◎新聞・雑誌ならば記事は,例えば,「東スポが発信した記事」として発信者と記事が一体のものとして発信・拡散される.
ネット情報は,発信者と拡散する部分が分離し,『誰が書いたか?』が切り離されて,情報だけが一人歩きする.
◎簡単に「シェア」できる仕組みがあり,しっかり確かめて拡散することが難しい.
「法的規制の困難さ」(池上さん)
◎現行法で,例えば地震で動物が逃げたというフェイクニュースの場合.
熊本でライオンが脱走したというフェイクニュースを流した男性は,動物園の業務を妨害した偽計業務妨害で逮捕されたものの,「裁判になった時に有罪に持ち込めるかどうか」を検察側が判断し,釈放.
◎処罰する法的な仕組みを作る⇒言論の自由,表現の自由を妨げるおそれ.
3. 置き去りにされる真実 “お金”優先ネット記事
フリーライター 山本大輔さん「ここも広告ですね.ここも広告ですし」
記事には広告が掲載されており,1回クリックされるたびに数十円が支払われる.記事を書けば書くほど,増える収入.内容が事実かどうかは問われない.
フリーライター 山本大輔さん「ここら辺が多分そういう,ガセネタっぽい記事を書いた時」
人々の関心を集めるため,過激なタイトルをつけると,アクセス数と広告のクリック数が増加.1日数千円の収入につながった.
フリーライター 山本大輔さん「3日で1万3000円」
次第に罪悪感を感じるようになった山本さん.現在は,できるかぎり自分で調べて記事を書くようになったという.
しかし,お金のために不確かな記事を書き続ける人は後を絶たない.
フリーライター 山本大輔さん「情報が多少正確じゃなくても,『赤信号みんなで渡れば怖くない』じゃないが,周りもやっているんだから自分も多少はと考えてしまうんですよね.今思うと情けない感じですけど」
4. 真実?どう見抜く?
フェイスブックの対策
フェイスブックは今,ほかのメディアと連携し,アメリカなどで新たな対策を始めている.
利用者が事実かどうか疑わしい投稿を通報できるシステムだ.
利用者が画面上のボタンを押すと,フェイスブックに通報が届く.
通報が一定数を超えた投稿は,外部の機関が事実かどうか検証する.
大手メディアABCニュースも,その1つ.フェイスブックからの依頼で投稿を検証している.フェイクが疑われる投稿は連日持ち込まれる.
ABCニュース デジタル部門 ザナ・オニール編集長「この記事はフェイスブックの利用者から通報されたものです」
「オバマ大統領がホワイトハウスに自分の銅像を建てた」というニュース.
銅像の写真とともに投稿されていた.担当者は,記事の発信者を直接取材.
カリブ海のプエルトリコにある,実際の銅像の写真を加工したことなどを突き止め,フェイクと断定した.
検証によってフェイクと見なされた投稿には,フェイスブック上で虚偽が疑われていると警告が表示される.
ABCニュース デジタル部門 ザナ・オニール編集長「私たちはジャーナリストのスキルを使って,正確な情報を導きだしていきます.重要なことは,常にフェイクニュースに目を光らせて,何が間違っていて,何が正しいのか,真実を示していくことなのです」
私たち自身の対策は?
藤代さん「家族や友達と,ニュースについて話そう」
「友達や家族と話すと当然,意見が違ってくる.ここでも3人で話すと,いろんな見方がある.それに気付けるのは,実はリアルでニュースについて話すのが,一番いいんじゃないかなと思います」
デーブさん「インターネットが,うその情報をサーバーを読む(さば読む?)」
「さば読むです.特に役に立つ言葉ではないですけど.つまり,疑えということですよね」
池上さん「『おもしろければいい』」それでいいのか?」
「つまり,ネットでもおもしろい,おもしろいって拡散する,でも,それでいいんだろうかということなんですけど.実は,既存のメディアも要するにおもしろいニュースだからいいっていうふうに,私たちもやっているんじゃないか.大事なニュースは何なのかということを,きちんと伝えていくこと,それを私たちがもっと自戒しなければいけないんじゃないかと思います」
雨水(うすい) 雨水がぬるみ,草木が芽吹き始める