あきの のの みくさかりふき,やどれりし うじのみやこの かりほし おもほゆ
秋の野のみ草刈り葺き,宿れりし宇治の都の仮廬(かりほ)し思ほゆ (巻1・7) 額田女(ひめ)王の歌
◎以前,野の薄を刈って,屋根をこさえて宿ったことのある,宇治の行宮(あんぐう)の仮小屋の容子(ようす)が思い出される.(折口信夫 口語万葉集)
◎嘗て天皇の行幸に御伴して,山城の宇治で,秋の野のみ草(薄/萱)を刈って葺いた行宮に宿ったときの興深かったさまがおもい出されます.
かりいほは原文「仮五百」であるが,馬淵の考ではカリホと訓だ.
単純素朴のうちに浮かんで来る写像は鮮明で.且つその声調は清潔である.
◎秋の野のみ草を刈って屋根を葺(ふ)いて、泊まった宇治(うじ)の宮処(みやこ)の仮の宿のことを思い出します。
ここで「み草」は屋根を葺(ふ)く、尾花、菅(すげ)、茅(ちがや)などのこと.この歌の題詞には「明日香川原宮(あすかのかはらのみや)に御宇(あめのしたをさめたまふ)天皇の代 [天豊財重日足姫天皇(あめのとよたからいかしひたらしひめのみこと:皇極天皇のこと))額田王(ぬかたのおおきみ)の歌 [未(いま)だ詳(つまび)らかならず]」とあります。(楽しい万葉集:額田王の歌と記載)
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わがせこは かりほつくらす,くさなくは こまつがしたの くさをからさね
わが背子は仮廬(かりほ)作らす,草無くは小松が下の草を刈らさね (巻1・11)中皇命(なかつすめらみこと)
◎あなたが今旅のやどりに仮小屋をお作りになっていらっしゃいますが,若し屋根葺く萱が御不足なら,彼処の小松の下の萱草をお刈りなさいませ
うら若い高貴の女性の御語気のようで,その単純素朴のうちにいいがたい香気のするものである
(斉藤茂吉 万葉秀歌)
口語万葉集 折口信夫 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集第二巻
万葉秀歌 斎藤茂吉 Kindle版(青空文庫作成ファイル 底本:岩波新書)
楽しい万葉集 http://www6.airnet.ne.jp/manyo/main/index.html
文芸全般に疎い私.特に詩・短歌・俳句は高校授業で学んで以来,全く親しんだことがありません.ただ,あこがれの対象ではあります.全く知らない者が少しでも近づくための手段として,「ただ写すだけ」を暫く続けてみることにしました.当面の対象は万葉集.季節の草花が詠み込まれた歌を中心に,最低20首(四季×5首),できればその倍は写し取ってみたいと思っています.