NHKスペシャル シリーズ東日本大震災 終(つい)の住みかと言うけれど…~取り残される被災者~2(災害復興住宅)-1
NHKスペシャル | シリーズ東日本大震災終(つい)の住みかと言うけれど… ~取り残される被災者~
2019年3月10日(日)
午後9時00分~9時54分
終(つい)の住みかと言うけれど…~取り残される被災者~ 1(在宅被災者)
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/03/12/005703
「ああ,ダメだ.交換した方がいいな」
「これも(土台から柱が)外れてんじゃん」
在宅被災者の場合,私有財産の自宅の修理に使える補助金は最大258万円.それで,家が直しきれなくても,あとは,自助努力するしかありません.しかし,8年がたって,その自助努力も限界に来ている現状が分かってきました.
「今の制度のままでは,これからも災害があるたびに,救われずに取り残されていく人たちが生み出されていく可能性があります」
終(つい)の住みかと言うけれど…~取り残される被災者~ 2(災害公営住宅)-1
大越キャスター
「では,真新しい災害公営住宅に移った人たちの暮らしは,どうなっているのでしょうか?
政府が,復興の総仕上げの象徴と位置づける頑丈な集合住宅.
しかし,そこの暮らしも,また,いくつもの歪み(ひずみ)が,明らかになっています」
5年前,仙台市で最初に完成した荒井東地区の災害公営住宅です.
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高齢者を中心に,およそ300世帯が入居しています.
去年の暮れ,住民たちに衝撃が走りました.
庄司宗吉さん(災害公営住宅自治会長)「新聞や手紙がいっぱいたまってたんですよ.亡くなってたと」
取材者「どんな人だったんですか?」
庄司さん「いや,だから,誰もわかんないですよ」
男性が死後,数ヶ月たった状態で見つかりました.隣人すら,名前を知らなかったといいます.
隣室の住民「引っ越ししたとき挨拶したけど,ドアをたたいても開かないし.会ったこともないし,見たこともないんです」
取材を進めると,亡くなったのは一人暮らしの60歳の男性と分かりました.
孤独死でした.
自治会にも加入しておらず,どんな生活をしていたか,分かりませんでした.
自治会長で,自らも被災した庄司宗吉さんです.
取材者「こちらが,(自治会の)名簿ですか?」
庄司さんは,見守りの必要な住民を把握しようと努めてきました.
取材者「こういうふうに部分的に,(部屋の)番号がとびとびになっているのは?」
庄司さん「これはもう,要するに入ってないということですよ.町内会(自治会)に入ってないということですよ」
現在,自治会には半数しか加入しておらず,残りの住民は,名前すらわかりません.
どこに,誰が住んでいるか教えてほしいと,行政に度々要望しましたが,個人情報の保護を理由に教えてもらえずにいました.
庄司さん「全然分かりません.情報を集めようがないんです」
取材者「町内会に入っていない人の見守りはできるんでしょうか?」
庄司さん「できないです.はっきりいって,限度です」
誰にもみとられずに亡くなる孤独死.
災害公営住宅では,入居者の増加と共に増え続け,去年は76人.前の年に比べ,4割も増えました.
(映像:交流会で体操する人住民たち)
「ちょっとずつ,ほぐれてきたでしょうか?」
この公営住宅の入居者は,もともと宮城や福島など,別々の地域に暮らしていた人たちです.
住民同士の交流会も開かれましたが,集まるのは同じ人ばかり.新しいつながりは,なかなか生まれませんでした.
そうした中で,住民の健康に新たな異変も起きていました.
「どうぞ」「あっ,お邪魔します」
5年前に入居した相澤辰雄さん(90歳)です.それまでに経験したことのない不眠の症状に苦しんでいます.
相澤さん「とにかく眠れないね.それが,毎晩だもの.毎晩」
宮城沿岸の港町,名取市閖上(ゆりあげ)で生まれ,にぎやかに暮らしていた相澤さん.
津波で自宅を失い,80年以上過ごしたふるさとを離れざるをえなくなりました.
相澤さんは,息子や妹の家などを5回も転居を繰り返し,ここに入居後,不眠に悩まされるようになったのです.
周りとの交流は,めっきり減ってしまいました.
相澤さん「なんだかんがいって,友達がいなくなったのが,いちばん俺にとって寂しいね」
2000人以上の被災者を対象にした,最新の調査です.
転居の回数が増えるにつれ,睡眠障害の疑いがある人の割合が高くなっていることが分かりました.
4回以上転居した人では,実に4割近くに上っています.
この調査を行った,東北大学の辻一郎教授です.
移転による健康被害.リロケーションダメージ(移転被害)が起きていると指摘します.
辻教授「引っ越す回数が増えていくにつれ,人と人との関係が疎遠になってくる.あるいは,落ちこぼれていく人がでてくる.
様々な地域のつながりが弱くなってきて,それが睡眠障害を呼んだりしている.
それを放っておくと,もっともっと重度のうつ状態に,あるいはほんとのうつ状態になっていく.
そういった可能性が非常に強い.さらにさらに問題が重度化していくだろう.ということですね」
終の住みかをえたものの,かえって孤立が深まる現状を,行政はどう捉えているのか.
仙台市は,これまで,見守りなどの支援に力を入れてきました.しかし,住まいの再建を機に,住民同士の支え合いに委ねていく方針です.
舩山明夫仙台市健康福祉局局長「(住民は)落ち着きを取り戻すことに向けて,進んできている状況にある,と私たちは考えています.
地域で見守り助け合いが進むような形で支えていくのがふさわしい,というふうに考えております」
自分たちで見守ろうにも,必要な情報が手に入らない.
危機感を強めた自治会長の庄司さんは,行政側と話し合いの場を持ちました.
孤独死した男性が,一人暮らしを分かっていれば,対策を打てたはずと考えています.
(話し合いの録音)
自治会副会長「どなたが入居するのか,連絡がありません.奥さんがいるのか,独り者なのかも分からない.教えてもらえれば,もっと早く対処がとれるのではないか」
行政側「個人情報の保護とか,様々な手かせ足かせがございます」
自治会庄司会長「個人情報,命が実際にかかってるんですよ」
しかし,行政側の回答は,「個人情報は教えられないので,自分たちで対処してほしい」というものでした.
庄司さん「町内会と市とが,困った問題を一体となって解決していかないと,いつまでたってもこういう状態は起こるのではないか」
被災者の見守りを,住民たちが手探りで進めてきた地域があります.
続く
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