柿・柿の実を詠んだ短歌  秋を感じさせる柿.日本の風土に適し,多くの品種が生まれ,家庭の庭にも植えられてきました. 柿の実のあまきもありぬ柿の実のしぶきもありぬしぶきぞうまき 正岡子規  楢山の窪みくぼみの村落に柿の実しるく色づきにけり 島木赤彦  油燈(ゆとう)にて照らし出されしみ仏に紅あざやけき柿の実一つ 斎藤茂吉  柿の蔕(へた)黒くこごれる枝見ればみ冬はいたも晴つづくらし 北原白秋  柿の木に礼をつくして柿の実を梢に三粒捥ぎ残したり 山崎方代

果物の美味しい秋.柿,葡萄,梨,無花果---.みかんやりんごもこの季節に出回りはじめますね.

それぞれ品種改良が進んで,いずれも極早生種は夏からお店に並ぶ中,もっとも秋になったと感じるのは柿かなと思っています.

https://www.shijou.city.osaka.jp/sikyoportal/?page_id=2706

https://www.hanahiroba.com/c/0000000100/0000000101/0000000110/0000008278/shibugaki_tonewase

https://www.google.com/search?富有柿

https://www.hanahiroba.com/c/0000000100/0000000101/0000000110/0000000153/0000008273/kaki_jiro

 

特産果樹生産動態等調査 確報 平成29年産特産果樹生産動態等調査 年次 2017年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

 

柿の季節感が保たれているのは,減りつつはあるものの,家庭の庭に植えられていることが多く,日本全国の秋の景色になっているためもあるでしょう.

加えて,柿では,飛び抜けた早生品種が,生まれていないため店舗で見かけるのも秋限定になっているように思います.

例えば,早生品種「刀根早生」(ご近所で売られている柿のほとんどは平核無(ひらたねなし)柿を渋抜きしたものですが,この平核無の早生品種にあたります):

「収穫時期は平核無よりも2週間ほど早く9月下旬から10月下旬に市場に出回りますhttps://www.kudamononavi.com/zukan/persimmon/tonewase 」とのこと.

2週間だけ早くて「早生」を名乗っている!

 

柿は最も古くから食べられている果物の一つです.

ニッポニカによれば,

https://kotobank.jp/word/かき-2796027

中国では,2500年前の「礼記(らいき)」に栽培の記録があり,日本では「本草和名(ほんぞうわみょう)」(918)に記されているとのこと.

柿は日本の風土に適し,栽培が広がるとともに品種の「特異的分化」により,昭和初期には800〜1000に上る品種があったと推定されています.

 

このように,古くから食べられてきた柿ですが,短歌に詠まれるようになったのは,主に明治以降.

古歌にほとんど詠まれなかったのは,「用途の多い木のわりには卑俗な木または実と考えられていたからか」日本国語大辞典との推測もありますが,そもそも古歌には果物を詠んだ歌がとても少なく,果物が短歌の歌題の対象とされていなかったことが最大の要因かと思います.

 

柿・柿の実を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

柿の実のあまきもありぬ柿の実のしぶきもありぬしぶきぞうまき  正岡子規 竹の里歌

 

つぶら実を日に照らさせて大富士の前に枝張る一本(ひともと)の柿  尾上柴舟 素月集

 

楢山の窪みくぼみの村落に柿の実しるく色づきにけり  島木赤彦 氷魚

 

油燈(ゆとう)にて照らし出されしみ仏に紅あざやけき柿の実一つ  斎藤茂吉 連山

 

干柿(ほしがき)の粉ふくころとなりにけり時雨ぬらすなその干柿を  中島哀狼 背振

 

柿の蔕(へた)黒くこごれる枝見ればみ冬はいたも晴つづくらし  北原白秋 白南風

 

次郎柿枝もたわわに生いたると見つつ行くだにゆたけかりけり  半田良平 幸木

 

柿の木に礼をつくして柿の実を梢に三粒捥ぎ残したり  山崎方代 迦葉