木の芽・芽ぶくを詠んだ短歌2  「木の芽は『このめ』が平安時代の習わし」とのこと.古くは「このめ」と読んだものが,現在は「きのめ」とも読む,ただし,新しい「木の芽田楽」などは「きのめ」が基本の読み方になった?  たかだかに芽吹き光れる欅の木われはたしかに癒えたるらしき 古泉千樫  おほかたは新芽ほぐれし梅林の日にうとき枝の白梅の花 結城哀草果  もろ芽たつ窓あけて吾がなげかふとあたたかき夜を立てる月しろ 小暮政次  木の芽立ち春さり来れど死者たちに遅れて白き人と白雲 佐佐木幸綱

今日は二月にしてはとても暖かな1日でした.ニュースでは,記録的な暖かさが4-5日続くとのこと.

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240213/k10014356901000.html

https://tenki.jp/forecaster/r_fukutomi/2024/02/13/27459.html

土曜日に訪れた鎌倉安国論寺妙法寺を訪れた土曜日は,平均並の温度.

「木の芽月」は旧暦の二月ですから,木の芽吹きにはまだ早い.

それでも紫陽花には新芽が出ていました.

今日は昨日に続いて,木の芽を詠んだ短歌を取り上げますが---

その前に「木の芽」という言葉について,少し調べてみました.

「きのめ」と「このめ」

古今短歌歳時記によれば,源氏物語を引用して,

”「木の芽」は,「『このめ』と読むのが平安時代の習わし」”とのこと.

源氏物語初音:いつしかけしきだつ霞に木の芽(このめ)もうちけぶり---

 

皆さんはどの様に読むでしょうか.まずは「このめ」と読んで,「きのめでも良いと思うよ」といったところ?

 

広辞苑第七版では,見出しに「きのめ(木の芽)」「このめ(木の芽)」の両方が用意されています.ただし,源氏同様,古今和歌集でも読み方は「このめ」.

き‐の‐め 【木の芽】

①木に萌え出る芽。新芽。このめ。

②山椒さんしょうの芽。

こ‐の‐め 【木の芽】

①木に生え出る芽。きのめ。春。古今和歌集(春)「霞たち―も春の雪ふれば」

②山椒さんしょうの芽。きのめ。

③茶の若葉を摘んでいりあぶったもの。煎茶せんちゃ。

 

いつでも「このめ」「きのめ」の両方の読みが用意されているかというと,そうでもない.

「きのめ」だけは,

きのめ‐だち【木の芽立ち】,きのめ‐でんがく【木の芽田楽】,きのめ‐やき【木の芽焼】

「このめ」だけは

このめ‐かぜ【木の芽風】,このめ‐づき【木の芽月】

 

まとめると:

▽古くは「このめ」と読んだものが,現在は「きのめ」とも読む.

▽ただし,「木の芽月」のような,古い熟語は「このめ」のみ.比較的新しい「木の芽田楽」などは「きのめ」が基本の読み方.

▽「木の芽立」(春の意)はやや例外か?「木」の「芽が立つ」で「きのめだち」?

 

なお,精選版日本国語大辞典には,「木の芽」という見出し語は,「このめ」のみで,「きのめ」は用意されていません.解説中に「きのめ」ともよむというただし書きが出てきますが.

 

なお,DeepL翻訳で「木の芽」を英語に訳させると,訳の例は

leaf bud,shoots of a treeに加えて,

”bud of Japanese pepper tree (Xanthoxylum piperitum)”も.

山椒の新芽ですね.

なお,グーグル検索「木の芽」で得られる画像は,ほぼ全て山椒になります.「木々の芽」「木の新芽」などとしなければ,広辞苑①木に萌え出る芽。新芽。の画像は得られません.

https://www.google.com/search?木の芽

https://www.google.com/search?木々の芽

 

木の芽・芽ぶくを詠んだ短歌2

(古今短歌歳時記より)

 

たかだかに芽吹き光れる欅の木われはたしかに癒えたるらしき  古泉千樫 青牛集

 

おほかたは新芽ほぐれし梅林の日にうとき枝の白梅の花  結城哀草果 おきなぐさ

 

芽ぶき立つ柿の林を鳴き移るくろつぐみの声冴え渡るなり  五味保義 一つ石

 

木の芽立(きのめだち)ゆたけき庭のひとところ孟宗の藪おとろへむとす  柴生田稔 春山

 

もろ芽たつ窓あけて吾がなげかふとあたたかき夜を立てる月しろ  小暮政次 花

 

春芽ふく樹林の枝々くぐりゆきわれは愛する言い訳をせず  中城ふみ子 乳房喪失

 

旗となるわが明日なれよ芽ぐむ木にかがみて靴をみがきいるとも  寺山修司 空には本

 

木の芽立ち春さり来れど死者たちに遅れて白き人と白雲  佐佐木幸綱 火を運ぶ