ツワブキ/ツワブキを詠んだ短歌  雨の鎌倉宝戒寺の庭に,ツワブキが見事に花咲かせていました.植物としては地味な印象をもっていましたが, これだけ咲き誇っている様子を見たのは初めてです.  山里の草のいほりに来てみれば垣根に残るつはぶきの花 良寛  村はずれうすひく家の日あたりにかたまり咲けるつはぶきの花 佐佐木信綱  ま広葉に冬陽当たるものどやかに石蕗に花終わりてをりぬ 馬場あき子

今日は,雨.寒い1日でしたが,めげずに鶴岡八幡宮から宝戒寺まで散歩.

紅葉を観るのが主な目的でしたが,その様子は明日のブログに回して,今日は宝戒寺の庭一面に咲いていた石蕗の話題と,石蕗を読んだ短歌の紹介とします.

昨日の妙本寺の続きになりますね.

 

前回宝戒寺を訪ねたのは9月.萩に加えて,白彼岸花が一面に花を咲かせていました.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/09/17/232436

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/09/18/224945

 

11月の今,ツワブキ(石蕗)が要所要所に植えられていて,なかなか見事でした.

石蕗は好きな花です.葉の美しさも含めて.ただ,隅にひっそり植えられていることが多く,植物としては地味な印象をもっていました.

これだけ咲き誇っている様子を見たのは初めてです.

 

ツワブキは艶があり、ハート型でフキの葉に似ていることから「ツヤブキ」の意味でこの名がついたといわれています(https://www.pharm.or.jp/flowers/tsuwabuki.html ).

「石のフキ(蕗)」以外に,「橐吾」と書いてツワブキとする場合がありますが,「橐吾」は,タクゴと読んで乾燥させた根茎の生薬名.ただし,どのような経緯で「橐吾」という名前がついたのかは不明.角川字源には掲載がありませんし,中国名での生薬名は蓮蓬草.橐は「ふくろ」の意で,ツワブキを連想させる意味はなし.

http://kayaku.jp/2064/ https://www.pharm.or.jp/flowers/tsuwabuki.html ).

乾燥した根茎は,健胃、食あたり、下痢、魚による中毒に用いるとのことですが,民間薬としては,ツワブキの葉がよく知られています.葉をあぶり柔らかくなったら打撲、おでき、はれもの、切り傷、火傷などの患部に貼るそうです(http://kayaku.jp/2064/ https://www.pharm.or.jp/flowers/tsuwabuki.html ).

 

薬効については,解明すべき点が多々残っているように思いますが,一般的な使われ方は,葉柄を食用にすること.ただし.フキやコーンフリー同様,

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/03/20/013711

発がん性を持つピロリジンアルカロイドを含むため,灰汁だしをしっかりする必要があります.

https://www.pharm.or.jp/flowers/tsuwabuki.html

 

 

ツワブキを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記 鳥居正博 教育社 より抜粋)

 

山里の草のいほりに来てみれば垣根に残るつはぶきの花  良寛 良寛歌集

 

 

秋草のしどろが端にものものしく生を栄ゆるつはぶきの花  伊藤左千夫 左千夫歌集

 

 

村はずれうすひく家の日あたりにかたまり咲けるつはぶきの花  佐佐木信綱 思草

 

 

今年また冬近づきて橐吾の花にさす日の光(かげ)弱るかも  岡麓 庭苔

 

 

ぎぼうしゆも羊歯(しだ)も枯れ伏しつはぶきの黄に咲きし花はけふぞうつろふ  斎藤茂吉 白桃

 

 

寒き日に石積み重ねものの隈(くま)つはぶきの黄がまぼろしに顕(た)つ  前川佐美雄 捜神

 

 

つはぶきの花群もゆる磯山を越えてこころはしづまりがたし  岡野弘彦 異類界消息

 

 

音の無き時間ながれて石蕗を離れし蝶のいづくへ帰る  大西民子 印度の果実

 

 

ま広葉に冬陽当たるものどやかに石蕗に花終わりてをりぬ  馬場あき子 月華の節

 

 

ツワブキはキク科キク亜科.フキと近縁ですが,属は別.ツワブキ属になります.