フキノトウを詠んだ短歌  蕗の薹は,日本人が春を感じる食材.毒性が報告されているにもかかわらず,何物にも代えがたい味と香り---  みづからがもて来(きた)りたる蕗の薹あまつ光にむかひて震ふ 斎藤茂吉  町中の煤(すす)ふる庭は,ふきの薹たちよごれつゝ 土からび居り 釈迢空  さきがけて地を割りそめし蕗の薹あさ黄みどりひとつを摘みぬ 長澤美津  蕗のたうほろほろにがき香さへしてさやかに吾の手につまれけり 馬場あき子

明月院で出会ったフキノトウ

もっと若い段階の花茎をフキノトウとよぶのかとも思いますが,境目がはっきりしないので,このように開花したものもフキノトウと呼ばせていただきます.

雄花と雌花がありますが,上記画像は多分雌花.

https://ja.wikipedia.org/wiki/フキ

 

 

日本国語大辞典によれば

蕗の薹:蕗の若い花茎.香気とほろ苦い味が喜ばれ、焼いたり蕗味噌ふきみそにしたりして賞味される。ふきのじい。ふきのしゅうとめ。《季・春》 〔文明本節用集(室町中)〕

 

日本人が春を感じる食材ですね.

上記辞書の用例によれば,遅くとも室町時代には広く食べられていたのでしょう.短歌に詠まれるようになるのは明治期以降のようですが.

漢字・音ともに「薹が立つ」の「薹」が使われていますが,「フキノトウで花全体を指すものと意識されていたものと思われる。」とのこと(日本国語大辞典

 

フキは

キク科 Asteraceae,キク亜科 Asteroideae,

フキ属 Petasites,フキ P. japonicus.

フキノトウには,肝毒性や発がん性がある物質が含まれているので,あまり沢山食べないよう,食べる時にはできれば湯がいてからというのがお薦めですが---

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/03/20/013711

フキ味噌の味は何物にも代えがたい---

 

 

フキノトウを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

みづからがもて来(きた)りたる蕗の薹あまつ光にむかひて震ふ  斎藤茂吉 白き山

 

町中の煤(すす)ふる庭は,ふきの薹たちよごれつゝ 土からび居り  釈迢空 海やまのあひだ

 

庭の上に一つ萌えたる蕗の薹わが知らぬ間に妻が摘みける  半田良平 幸木

 

日を受けて開ききりたる蕗の花二つならべる二つうつくし 土屋文明 山下水

 

蕗薹(ふきのたう)のびし庭土ぬらしつつけさふる雨のあたたかく降る  結城哀草果 まほら

 

さきがけて地を割りそめし蕗の薹あさ黄みどりひとつを摘みぬ  長澤美津 車

 

幻覚に見えつつ庭の蕗の薹少年にしてわれ悲哀を持ちき  千代国一 陰のある道

 

蕗のたうほろほろにがき香さへしてさやかに吾の手につまれけり  馬場あき子 早笛

 

 

 

蕗の綿毛と種

https://ja.wikipedia.org/wiki/フキ