ほたるぶくろ(蛍袋)1 早足で鎌倉の街の花々を見て回った5月末.最も美しいと感じたのは,おんめさまのホタルブクロと八重花ドクダミ.ホタルブクロは,花もなかなか趣がありますが,蛍袋という名前により引かれた記憶があります.語源説はいろいろ.いずれにせよ,蛍が飛び交う時期に花を咲かせます.しかし,いつ頃から蛍袋と呼ばれていたのか?調べきれませんでした.少なくとも,和歌・俳句の世界では「蛍袋/ほたるぶくろ」は,戦後使われるようになったようにも---

散歩がてら,早足で鎌倉の街の花々を見て回った5月末の日.

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https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/05/31/222103

最も美しいと感じたのは,おんめさま(大巧寺)のホタルブクロと八重花ドクダミ

見事にアレンジされていて感心しました.

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ホタルブクロ.

いい名前です.花もなかなか趣がありますが,初めてお目にかかった時,蛍袋という名前により引かれた記憶があります.

「蛍を入れて遊んだため」とか,「蛍は“火垂る”でもとは提灯の意」とか言われています.

「遊んだ」という説は,眉唾のように感じますが,蛍が飛び交う時期に花を咲かせます.おんめさまでホタルブクロに出会った同じ日,友人から窓に止まった蛍の動画が送られてきました.

「蛍袋」がお似合いです.

 

しかし,いつ頃から蛍袋と呼ばれていたのか?

 

今のところ調べきれていません.

語源辞典の類は語源のみで使用年代の記載はなし.

例文で初出を提示してくれている日本国語大辞典には例文なし.

大辞林は季語の例として草田男の句を例示していますが,初出というわけではなさそう..

 《季 夏》宵月を蛍袋の花で指す/草田男」

 

ただ,この句.もしかすると,季語として用いられた初期の句かもしれません.

 

鳥居正博「古今和歌歳時記」(教育社).和歌を集めていますが,各項目の前書きがとても役に立ち,ここには俳句も載せられることがあります.

「蛍袋」は「釣鐘草(つりがねそう)・蛍袋」として一つの項目にまとめられていますが,以下,抜粋すると:

 

釣鐘草・蛍袋

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古歌では,両呼称とも所見がない.

江戸期の『毛吹草(けぶきぐさ)(1645刊)以下六月の季として挙げており,椎本(しいのもと)才麿(さいまろ)(1656〜1738)に「咲く花はつりがね草か野中寺」(才麿発句抜粋,1785刊)があり,中村草田男の『銀河依然』(1953年)に「宵月を蛍袋の花で指す」もみえる.仲夏の季語.近現代短歌によく詠まれる.

 

とあります.

そしてその後に,「釣鐘草・蛍袋」をうたった和歌が例示されるのですが---

与謝野晶子斎藤茂吉から原阿佐緒に到る和歌は,全て「釣鐘草」が詠われています.

一方,1951年の若山喜志子の和歌以降は,全て「ほたるぶくろ」.

 

少なくとも,和歌・俳句の世界では「蛍袋/ほたるぶくろ」は,戦後使われるようになった名称と言えそうです.

 

蛍ぶくろの花ほうと吹き生けむとす 若かりし母のなしし如くに 大西民子