本音のコラム
感染症法改正 宮子 あずさ
東京新聞 2021年1月18日
新型コロナウイルス対策として,政府が感性症法の改正を検討中との報道がある.
感染者が知事の入院勧告を拒否した場合,最高で懲役一年,または百万円までの罰金を科すという.
私はこれに強く反対する.
感染症法の前文には,
「過去にハンセン病,後天性免疫不全症候群等の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め,これを教訓として今後に生かす」
という一文がある.
医学関係の学会でつくる日本医学会連合も,この理念から外れるとして,反対を表明している.
私は精神科の看護師として,強制入院は人権上問題があると肝に銘じている.
基本はコロナも同じ.たとえ感染防止が目的であっても,社会の安全を理由とした強制入院には,慎重な上にも慎重であるべきだ.
また,現実的な問題として,罰則付きの強制入院となれば,検査を避ける人が出る.介護,子育てなどを理由に,入院したくてもできない人もいるからだ.
結局必要なのは,必要な人が入院できる支援なのである.
さらにひどいことには,今は,多くの自治体が病床不足.
入院を希望しても入院できない状態になっている.
病床もないのに,命令違反への罰則が議論される支離滅裂.
余りのずれっぷりに,恐怖に乗じた国の支配強化かと心配になってきた.