東京都内で新たに800人超の感染確認 過去最多,大幅に更新 新型コロナ
毎日新聞2020年12月17日 14時22分(最終更新 12月17日 15時45分)
東京都内で17日,新型コロナウイルスの新規感染者が800人を超えたことが,都関係者への取材で明らかになった.
これまで最高だった今月16日の678人を大幅に上回り,過去最多を更新する見通し.
続く感染高止まり 「勝負の3週間」に敗れた政府は再び緊急事態宣言を出すのか
毎日新聞2020年12月17日 15時31分(最終更新 12月17日 15時50分)
政府が「勝負の3週間」と位置づけ,新型コロナウイルスの感染拡大防止の集中的な対策を呼びかけてから,16日で3週間を迎えた.
同日夕方に開かれた感染症対策を厚生労働省に助言する「アドバイザリーボード(AB)」(座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)は,全国の感染状況について「過去最多の水準」と分析.実効性のある対策を打てなかった政府に対して専門家から批判の声が上がる.「勝負」に敗れた政府は,膨れ上がった感染を抑え込むため,再び「緊急事態宣言」を出すのだろうか.
【酒井雅浩,阿部亮介,村田拓也,小川祐希】
「現状認めて」突きつけられた敗北
11月25日に新型コロナ感染症対策を担当する西村康稔経済再生担当相が「この3週間が勝負だ」と呼びかけ,営業時間の短縮に協力した飲食店への支援など集中的な感染症対策を取る「勝負の3週間」が始まった.
当初,西村氏は効果が3週間目に表れてくると語っていたが,脇田座長はAB終了後の記者会見で,全国の感染状況について
「一度は高止まりした後,直近で増加に転じ,過去最多の水準が続いている」と分析.
大都市圏だけでなく地方でも拡大がみられると指摘し,事実上の「敗北」を突きつけた.
「敗北」との認識は,出席した専門家の発言からもうかがえる.
3週間の節目を迎えた16日に,東京都では1日の人数としては最多の678人の感染が確認されたことを受け,政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は
「感染者とそれ以外の人の接触が,高止まりするくらい多いということだ.(接触しないよう感染防止策を)必要だと求めているが,まだ十分に下がっていないのは間違いない」
と述べた.
日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は
「まず現状をしっかり認めることだ.強い要請を国民に出したが,形に表れてきていない.さらに強い対応をしなければならないということではないか」
と語った.
「このままでは経済活動制限しかない」
ABの構成員以外の専門家から政府に対して厳しい意見が相次いだ.
富山県衛生研究所の大石和徳所長は
「政府の対応は場当たり的だ.政府は専門家の感染状況分析に耳を傾け,対策に反映させるべきだった.『何としても第3波を抑え込む』とのメッセージを明確に発信しないと,今の感染状況の改善は望めないだろう」
と訴えた.
けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師も
「『勝負の3週間』と言いつつ,政府は中身のある対策を何もしてこなかった.『GoToトラベル』を続けてきたのは失敗で,地方での感染はこれからさらに広がるだろう.このままでは感染者数が減る要素がなく,経済活動を強く制限するしか対策はなくなってしまう」
と指摘.その上で
「病院や高齢者施設でのクラスター(感染者集団)の発生を防ぐために職員や患者らに定期的にPCR検査をできるよう財政的に支援することや,発熱患者が診療所で早期受診できる体制整備に加え,政府は企業にリモートワークの徹底を強く促すことなどをすべきだ」
と求めた.
感染抑止策に効果が見られなかったことで,医療提供体制の逼迫(ひっぱく)が懸念される状況が続いている.
ABでは
「手術の延期や,救急への対応といった通常の医療を十分提供できない事態が全国で見られている.医療への影響は明白だと打ち出すべきだ」
との意見が相次いだという.
釜萢氏は
「年末年始の医療体制がもたない懸念はある.医療従事者は休日を返上して,という依頼はしないといけないのではないか」
と危機感を募らせた.
一方,政府は旅行需要喚起策「GoToトラベル」を,28日から来年1月11日まで全国一斉に停止すると決めた.
「GoToトラベル」は政府が移動を勧めているという「誤ったメッセージとして伝わっている」
との指摘が専門家から出ていた.
尾身氏は
「終止符を打ったという意味がある」
と評価した上で,
「ボールは市民にある.正月は静かにすごしてほしい」
と呼び掛けた.
「人の動き制限するメッセージを」
ABでは,年明け早々に分析をして,今後の対応を協議する方針だが,メンバーの一人は
「そんなに劇的には減らないのではないかという恐れもある」
と吐露する.
「人の動きを抑制する強いメッセージを出さなければいけない」
と指摘する専門家も.
さらに強いメッセージとして想定されるのは,4~5月の緊急事態宣言を再度発令することだ.
尾身氏は必要性について
「最悪の場合はそうだが,今日は出す時期ではない」
と述べた.
釜萢氏は
「なるべくそれは避けたい.安易にそうならないようになんとかしたいという強い思いを(アドバイザリーボードの)構成員全員が持っている」
とした上で,
「『どういう状況になったら宣言が必要か,シミュレーションを今からしておくべきだ』という指摘があり,それにはみんな賛同している」
と明らかにした.
ABは,必要な状況になれば,緊急事態宣言を政府に求める意見が強まる可能性を示唆した.「勝負」は年末年始に持ち越された.
第18回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(12月16日)資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000706189.pdf