「ようやくの夏本番を前に,止まらぬ感染の拡大」
さらに次のように続きました.
「東京(463人)や愛知(193人),沖縄(71人)に兵庫(62人).今日も各地で過去最多の感染者が確認されました.
全国で新たに確認された感染者は合わせて1557人.一日当たりの感染者が1000人を超えたのは3日連続で,1500人を超えたのは初めてです.
このような感染者の増加に歯止めがかからない状況のように見えます」
今日はこの「7月31日NHKニュースウォッチ9」をとりあげます.
一部は番組内容そのまま,一部はとりとめのない感想/余り鋭くないツッコミ,という乱雑なまとめになっています.
1. このところテレビに現れない安倍首相が取材陣に向かって一言.
「まずは徹底検査.陽性者の早期発見,早期治療をすすめていきます」
「重症化予防は極めて重要であります.リスクの高い基礎疾患のある方,あるいは高齢者の皆さんへの感染を防がなくてはなりません」
重症化予防⇒死亡者減が第一.陽性者の早期発見も大切.この二つはOKとして---
国の方針は「まずは徹底検査」でしたっけ?
そもそも「感染拡大防止/制御」の言葉がない.「経済復興」にも触れていない.
感染拡大防止と経済復興のバランスが最も難しく,悩ましい問題であると多くの人が理解しはじめている時に,首相の一言には違和感.
その場しのぎの言葉で終始してきた方らしいといえばらしいのですが.
2.分科会の判断「感染漸増段階」
“東京と大阪のコロナ感染状況は「感染漸増段階」” だそうです.
東京と大阪のコロナ感染状況は「感染漸増段階」政府 分科会 | 新型コロナウイルス | NHKニュース
しかし,この判断の根拠となる具体的な数値はニュースウォッチ9では示されず,他のサイトからも見つかりませんでした.発表されなかった?これから策定?
根拠を示さない「感染漸増段階」.
スッキリしません.
旧専門家会議の記者会見の際にはこのようなわかりにくさはなかったのですが---
そもそも,分科会の位置づけがはっきりしていない---
3. 重症者の数の推移
緊急事態宣言が出されたときと現在の感染の拡大局面で最も異なっているのが重症者の数.
ニュースウォッチ9の説明はこの事項に関してはよく分かりました.
新型コロナウイルス感染症 重症者における人工呼吸器装着数の推移 - Yahoo!ニュース
最も多かったのは緊急事態宣言まっただ中の5月1日.クルーズ船の乗船者を含め,332人に達しました.
一方,昨日の時点では90人で1/3以下に.感染者全体に占める割合も低くなっています.
ただし,
「感染者の急増に加え,重症者の増え方,感染経路が不明な人の割合,いずれも危険な症候を示しています.対策は待ったなしです」
なお,
「重症者の割合が減っているのはウイルスの毒性が低くなっているためではない」とのこと.
私は知りませんでしたが,ネット上ではこのような噂が広がっているそうです.
国立国際医療研究センター忽那賢志医師
「海外の状況を見ても、ウイルスが弱毒化したという科学的な根拠は今のところない。また、実際に患者を診ていてもそうした実感はない」
「第1波の時は、重症者を見つけるために症状のある人を優先的に検査していたが、現在は検査数が増え、感染の実態が以前より詳細に分かるようになった。軽症や無症状の人が多く見つかるようになったため、重症になる人の割合が少なくなったように見えていると考えられる」
新型コロナが弱毒化しているという根拠はない(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース
「重症者は感染者の増加に1~2週間遅れて増える特徴があるため、今後、重症者が増えるのではないかと強く懸念している。人工呼吸器の装着などの治療には多数のスタッフが必要で医療現場に大きな負荷がかかるため、可能なかぎり重症者は増えないほうがよい。この週末も外出を控えるなど一人一人が自覚を持って感染対策に取り組んでほしい」
(SNSで新型コロナウイルス弱毒化の声「科学的根拠ない」専門家 | NHKニュース)
(新型コロナが弱毒化しているという根拠はない(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース)
4. 分科会:議論は尽くされているのか?
「対策の決定を巡って,ちょっと心配になる声も聞かれます」
「今日,四回目の会合が行われた政府の分科会.この役割を先月まで担っていたのは専門家会議です.
感染症の専門家が,自ら会見を開き自分たちの言葉で提言を行ってきました.しかし,政府は感染防止と経済活動の防止を両立を目指す中で,会議のあり方を見直すことに.
そして経済の専門家などを加えて動き出したのが分科会です.ところが当事者である分科会のメンバーは,今は専門家の議論が尽くされていないのではないかと話しています」
日本医師会常任理事釜萢(かまやち)敏さん
釜萢さん「分科会の結論がとりまとめられたのが政府の政策決定に反映されるという形(分科会の結論⇒政府の政策決定)が,本来望ましいと思いますが,
現状では,政府の方針と分科会の結論があらかじめ摺り合わせられて出来あがったもので,政策決定に到るプロセスがブラックボックス(政府の政策・分科会の結論⇒政府の政策決定)という思いが醸成されるのではないかな」
その思いのきっかけはGoToトラベルをめぐる政策決定のプロセス:
・分科会に諮ることなく開始時期の前倒し=4連休前日のスタートを決定(7月10日).
・感染者が増加傾向に.
西村大臣「明日開きます新型コロナウイルスの分科会で,判断をいただければ」(7月15日)
・分科会開催の直前「東京都を目的としている旅行,東京都に居住している方の旅行を対象から外し,事業を実施する」(7月16日)
⇒直後に分科会開催(7月16日)
政府の方針を了解する形となりましたが---
釜萢さん「議論が尽くされたとは言えない」「東京・神奈川・埼玉・千葉はほとんど一体ですから,そこはひとかたまりとして対策をとるという選択もあったでしょうし,すでの関西もある程度の感染はあったので,地域の指定をどうするかについては,もう少し検討しても良かった」
有馬キャスター「第二波を抑えられるかどうかの瀬戸際の局面ですから,議論は尽くして尽くして尽くしきってもらわないと国民としては納得がいかないですよね」
釜萢さん「おっしゃる通り」
小林さん「私は,感染症が治まった後,需要喚起の政策をやるのは悪いことではないと思っていましたけど,感染拡大期にGoToキャンペーンをやるというのは,そもそもの発想から違っていたので,早く方針転換をやるべきだったと個人的には思います」
「先に政府が方針を発表しているものを,覆すことはあってもいいと思いますけど,政治的な影響力を考えると,なかなかそこまで---.自分が全部リスクをとって発言するところまではいけなかったな〜という感じですかね〜.
分科会の結論というのは事前に決められていた.その枠の中で話をさせられたという印象が強いですね」
有馬キャスター「小林さんはPCR検査を思い切って拡大することが経済再生の近道とおっしゃっているんですけど,どうもそういう議論が進んでいるようには見受けられなくって」
小林さん「遅々として進んでいる.そういう感じなんです.非常にゆっくりゆっくり進んでいるというのが私の実感」
「日本の中小企業は蓄えが食いつぶした状態で8月に入っていく.8月以降にもし緊急事態となると,かなり深刻に倒産や失業という問題が出て来るだろう.政治家が何らかの主体的な判断をすることが,おそらくきっかけになるだろう.もし変わるとすれば,そこに賭けるしかない.という気がしていますね」
なお,PCR検査に関しては小林さんと専門家の方々の意見が異なっているように報道されています.
小林さん「経済を動かしていくためには,検査件数を増やし陽性者の隔離が不可欠」
⇔
専門家「膨大な数の検査を行うことに慎重」
そして,東京新聞・日本経済新聞など幾つかのメディアは小林説に荷担しているように見えます.
また,世田谷区では:
世田谷区がPCR検査を拡充へ「誰でも いつでも 何度でも」:東京新聞 TOKYO Web
「誰でもいつでも何度でも」の検査実現の根拠の一つはニューヨークでの検査!東京新聞や世田谷区長はニューヨークの実態を調べたのでしょうか?
そして,公衆衛生の専門家の説明が理解できていないのでしょう.または理解しようとしていない?
▽PCR検査に関しては,東北大押谷教授の明快な説明がニューズウィーク最新号に掲載されています.そして,この記事に関してはネット上にも公開されています.
【独占】押谷仁教授が語る、PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
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https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/senmonka-bunkakai-2-2
「PCR検査論争」が不毛な理由 同調圧力が支配する日本の感染症対策を考える(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
「あらゆる人に検査を」で得られるのは偽物の安心。PCR検査の特異度が99.9999%でも、議論は変わらない【#コロナとどう暮らす】(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
▽ロックダウンとPCR検査拡大のみに頼っているように見えるアメリカの感染防御は,ほぼ破綻しています.
有効なワクチン開発・接種に到るまでに,死亡者がどこまで増えるのか分かりません.経済もどこまで落ちていくのか---
そして頼みの綱のPCR検査自体も破綻しつつあることをニューヨークタイムズが伝えています.
Coronavirus Testing Labs Again Lack Key Supplies - The New York Times
Testing Bottlenecks Threaten N.Y.C.’s Ability to Contain Virus - The New York Times
PCR検査の限界については明日,本ブログでとりあげます.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/08/02/002755