検査の状況:悲惨 「米国でのコロナウイルス検査を希望する場合は,結果が出るまで何日も,何週間も待つことを覚悟してください」「ニューヨーク市では,平日2万人から3万5千人が検査を受けています.目標を大きく下回っていますが,それさえも地元の検査機関を圧迫しています」「国の検査機関が大混乱に陥っています」「検査施設の許容量への需要は増加するばかりです」「ボトルネックの一因が,物資の供給量が不足していることです」 ニューヨークタイムズ The Coronavirus Briefing

私のメイルには,ニューヨークタイムズから,“The Coronavirus Briefing”という記事が送られてきます.「新型コロナウイルスに関わる記事は無料で読める」と聞いて,登録したためです.

拙い英語読解力ですが,アメリカの状況が何となく分かります.

 

例えば,7月24日のThe Coronavirus Briefing

“The state of testing: dismal「検査の状況—悲惨」”と題した記事がありました.

 

最近はまっているDeepL翻訳無料版の助けも借りて,和訳してみました.

ロックダウンとPCR検査にのみ頼って感染防御戦略のないアメリカ.感染拡大の勢いは衰えを見せません.

そして,現在の頼みの綱の一つPCR検査も機能不全に陥っているようです.

日本以上にワクチン頼みになってきていますが,それまでに何人の命が失われ,経済的打撃はどの程度までで抑えられるのか?

(8月1日の日経新聞の記事では,日本の経済界は「社員の安心・安全のため」と称して希望者全員のPCR検査ができる体制を望んでいるようです.

新型コロナ:PCR目詰まり再び 感染急増で拡充要望、企業は自前も :日本経済新聞

その記事の中で

 ”米ニューヨーク州は7月1日、コロナの検査基準の対象を州全体に拡大すると発表した。クオモ知事は「みんなに検査を受けてほしい。誰も費用はかからない」とし、希望者全員が検査を無料で受けられると説明した。同州の1日あたりの検査件数は直近1週間、5万~7万件に上る”

としていました.ニューヨークタイムズの記事とはずいぶん隔たりがあります.ニューヨークの話ですから,タイムズの記事が実態と考えるのが妥当.

しかし,日経の記者は,ニューヨークのことを引用するときに,ニューヨークタイムズを参考にしないのでしょうか?」)

(なお.ニューズウィーク日本版最新号の押谷仁東北大教授へのインタビューは,PCR検査の意味を最新の知見も踏まえて解説した好記事です.これも一部引用させて頂きました⇒最下欄)

 

The New York Times

The Coronavirus Briefing

July 24, 2020

(DeepL無料版翻訳 一部改変)

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検査の状況:悲惨

米国でのコロナウイルス検査を希望する場合は,結果が出るまで何日も,何週間も待つことを覚悟してください.

国内のアウトブレークが猛威を振るい続けているので,検査の需要は研究所とサプライチェーンを圧倒し,ウイルスの拡散を助けている可能性がある長期間の遅れにつながっています.

 

ニューヨーク市では,最近,平日のほとんどの日に2万人から3万5千人が検査を受けています.目標の5万人を大きく下回っていますが,それさえも地元の検査機関を圧迫しています.州や市のレベルでは迅速検査の能力が向上しておらず,西部や南部での症例の急増により,国の検査機関が大混乱に陥っています.

 

このような遅延により,新規感染を迅速に特定し,接触者の追跡を行う当局の能力が制限されています.

症状を示さず,ウイルスに感染していることがわかるまで隔離されない可能性のある人々からの感染を制限するためには,迅速なテコ入れ(? ターンアラウンドタイム)が重要であると考えられています.

 

しかし,インフルエンザのシーズンが近づき,学生をキャンパスに連れ戻す大学では,頻繁に学生を検査する計画に頼っているため,検査施設の検査達成能力への需要は増加するばかりです.

 

また,ボトルネックの一因となっているのが,機械,容器,化学薬品,容器から容器へ液体を移すために使用するプラスチック製のピペットチップのような物資の供給量が不足していることです.

 

陽性パーセンテージの急増

トランプ大統領は,米国の感染者数の増加を検査の増加のせいにしていますが,感染者数の増加は検査の量の増加をはるかに上回っている,とタイムズ社の分析は明らかにしています.過去2ヶ月間で,検査の平均件数は80%増加し,1日あたり約78万件となりましたが,1日の感染者酢は215%増加しました.

 

 

The New York Times

The Coronavirus Briefing

July 24, 2020

 

The state of testing: dismal 

If you want a coronavirus test in the U.S., be prepared to wait days, even weeks, for the results. As the nation’s outbreak continues to rage, the demand for testing has overwhelmed labs and supply chains, leading to long delays that could be helping the virus spread.

 

In New York City, 20,000 to 35,000 people have been tested most weekdays recently — far below the target of 50,000 — but even that has strained local labs. Rapid-testing capacity hasn’t ramped up at the state and city levels, and case spikes in the West and the South have deluged national labs.

 

The delays have limited officials’ ability to quickly identify new cases and perform contact tracing. Quick turnaround times are considered critical for limiting transmission from people who do not show symptoms and may not isolate themselves until they know they have the virus.

 

But demand for lab capacity is only likely to increase as flu season approaches and universities that bring students to campus rely on plans to test them frequently.

 

Also contributing to the bottlenecks: strained or dwindling supplies of the machines, containers, chemicals and tools, like plastic pipette tips, used to move liquid between vials.

 

The surge, by percentage. President Trump has blamed the ballooning U.S. case count on increased testing, but the rise in infections far outpaces the higher volume of tests, a Times analysis found. Over nearly the last two months, the average number of tests has grown by 80 percent — to about 780,000 per day — while daily case counts shot up 215 percent.

 (このThe Coronavirus Briefingのもとになった記事は次の二つ:

Coronavirus Testing Labs Again Lack Key Supplies - The New York Times

Testing Bottlenecks Threaten N.Y.C.’s Ability to Contain Virus - The New York Times

 

 

ニューズウィーク日本版

【独占】押谷仁教授が語る,PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方

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【独占】押谷仁教授が語る、PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

SPEAKING OF RISKS AND TESTING

2020年7月31日(金)06時40分

石戸 諭(ノンフィクションライター) 

<日本のクラスター対策を主導してきた東北大学の押谷教授.7月6日,独占インタビューを行い,積極的なPCR検査の必要性や新宿区「夜の街」の状況について聞いた.本誌「ルポ新宿歌舞伎町『夜の街』のリアル」特集より>

 

積極的なPCR検査の必要性と現在の新宿区の状況を,厚生労働省クラスター対策班を率いてきた東北大学の押谷仁教授はどうみるか.ノンフィクションライターの石戸諭が押谷に聞いた(取材は7月6日,構成は本誌編集部).

 

──3月の段階で,押谷さんは日本はPCR検査数を抑えていると発言していた.その後は拡大したほうがいいと,方針を転換したかのように報じられていたが.......

 

転換したというようなことは全くない.

メディアがPCR推進派と抑制派という二項対立をつくったことが問題だ.

尾身茂先生をはじめ,われわれ専門家会議は初めからずっと,PCRを拡充すべきと言っている.

(2009年の新型インフルエンザパンデミックの時から,専門家は言い続けていましたが拡充されませんでした.by yachikusakusaki

PCR検査強化、保健所増員…10年前に提言されていたのに…新型コロナに生かされず:東京新聞 TOKYO Web 

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100610-00.pdf )

----中略

PCRを急速に拡充すれば,必ずクオリティーが低下する.

---中略

当初から臨床の先生たちと,2009年の新型インフルエンザのときの発熱外来の状況をつくってはいけない,と言っていた.

---中略

感染リスクの低い人たちを含め多くの人が医療機関や検査センターに殺到することは絶対に避けなければいけない.

---中略

さらに,これはあまり一般に理解されていないが,偽陽性であれば彼らの基本的人権が不必要に侵害されることになる.

---中略

 

──偽陽性が出る確率は,今の段階でどれくらいだと考えればいいのか.

そもそも今は,sensitivity( 感度)とspecificity(特異度)を正確に知ることができない.(編集部注:感度とは,あるウイルスを持つ人のうち検査で陽性と正しく判断される割合.特異度とは,あるウイルスを持たない人のうち検査で陰性と正しく判断される割合)

PCRの感度と特異度を正確に知るには,感染しているかいないかが確実に分かっている人を相当数検査する必要がある.しかし感染しているかどうかを知る方法をPCRに頼っているなかでは,確実に感染している人と感染していない人を正確に分けることはできないことになる.

 

さまざまなデータから,少なくともPCRで正しく陽性と判断される確率は70%くらい.正しく陰性と判断される確率は,100%はあり得ないので99%としても,100人検査すると1人の偽陽性が出る.99.9%だったとしても,1000人検査すれば1人の偽陽性が出る.

 

――それでも,メディアの中にPCR検査絶対論は根強い.中には,片っ端からPCR検査をして陽性者はどんどん隔離せよという声もある.

 

おそらく,このウイルスの伝播パターンを理解していない人が全員をPCRせよ,と言っているのだろう.

 

これは西浦さんの最初のデータで示されたことだが,110人のうち80人くらい,80%近くの人は誰にも感染させていないことが分かっている.十数%は1人にしか感染させていない.ごく一部の数%の人だけ,例外的に非常に多くの人に感染させる.だからこのウイルスは広がっている.つまり,大多数の誰にも感染させない人をいくら見つけても感染制御にはあまり意味がない.

 

──この数%が誰なのかは分からないということか.

 

現時点では正確には分かっていない.日本のクラスターの61例を調べた結果,発症する前に感染させる人がいた.感染させるのは発症する1日前が最も多く,2日前もあった.最近,米サイエンス誌掲載の論文に,全体の45%程度が発症前に感染させていたというデータが出ていた.

 

症状がある人だけを検査していてもその前に感染させてしまう人がいるので,結局は無症状者を含め「国民全員PCR」のようなことをやらなければならなくなるが,たとえそれをやったとしても,正しく陽性と判断される確率は70%だ.しかもこの感度70%というのは発症直後の話で,PCR陽性率が最も高くなるときの割合だ.感染から3日以内の潜伏期間だと,感染していてもPCRが陽性になる確率はほぼゼロだとのデータもある.全体の陽性率を見ると,おそらく感度はもっと下がる.

 

そうすると,国民全員PCRを毎日やらないといけなくなる.だが例えば国民全員PCRを毎日,2週間続けたとしても,今日陰性だった人が明日陽性になるかもしれず,その人は既に誰かにうつしているかもしれない.だから結局,国民全員PCRをやっても感染を制御できない.

 

今われわれが考えているのは,いかにして感染している確率の高い人を選択的に検査していくかということ.軽症者も含めて感染している確率の高い人を見つけるということは非常に難しいが,例えばクラスターを形成した場にいた人たちは感染している確率の高い人ということになる.

 

今その辺で歩いている人たちを,ちょっとPCRしませんかと,献血に協力してくださいというような形でやったとしても,これは感染している確率の非常に低い人たちに検査をするということになる.

 

──新宿区や新宿の保健所は,ホストクラブの関係者を広く濃厚接触者と見なし早期に検査する方法を取っている.これの評価を聞きたい.

 

その方法は,ある程度感染している確率の高い人たちということになる.そのような人たちの間で陽性者を見つけることができれば,周りの感染連鎖を追うことができる.それがきちんとできたのが,2月に大阪のライブハウスで発生したクラスターだった.

----中略

 

いま東京では1日の新規感染者数が100人を超えているが,接客を伴う飲食店などで集団検診をやると,感染している確率が高い人たちなので陽性者が一気に増える.

3月下旬には接客を伴う飲食店関連の感染者はほとんど見えていなかったが,今は検査への協力者が増えたことで見えてきているというのが,感染者数が増えていることの一因となっている.一方で,地域内外への感染連鎖の全体像が,ライブハウスで見えたようにはなかなか見えてこない.

 

──それは当然のことで,他人に明かしにくい秘密は誰しもある.信頼関係が築けない限り積極的に秘密を言いたがらない,ということだろう.

 

まずその人たちに,検査を受けるインセンティブを与えないといけない.

今われわれに対して「歌舞伎町などのお店は閉めるべきだ」と言ってくる人がいるが,そこを閉めるとほかの繁華街にウイルスを拡散させてしまう可能性がある.感染リスクが高い人たちが別の地域に移動し,感染エリアが広がっていく.

 

──3密空間で飛沫が飛び散るというのが一番ハイリスクなのは間違いないとして,感染防止には人と人との距離を取れば十分と言えるのか.

 

症状が出る前に感染させるケースがある以上,咳もくしゃみもしていない人たちが感染させていることになる.これまで考えてきたような飛沫感染ということでは説明できないような感染がかなりの程度で起きていると考えられるので,マスクを外して近距離で会話をするというような環境はできるだけ避けるべきだ.

 

-+-中略

 

──大切なのは,リスクを下げることだろう.文化は大事で,守ろうという人たちが自律的にリスク低減に取り組む必要がある.そうしないと,文化そのものを排除する声のほうが世の中では大きくなっていく.

 

文化を守らなければならないとか,社会不安が増している状況で例えば音楽が必要だというのは当然よく分かる.

一方でわれわれは感染拡大を防がないといけないので,音楽を守るために感染が広がってもいい,とはならない.

主催者なり音楽を聴きに行く人たちがよく考えて,どうやったら自分たちが楽しんでいる音楽を守れるのか,そういう視点でみんなで考えることが必要だと思う.

 

<2020年8月4日号「ルポ新宿歌舞伎町『夜の街』のリアル」特集より>

 

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