「若い人たちが移動して,意図せずに感染を広げていることが分かります.今この時期には,なるべく,県を越えた動きを控えることが重要だということを示すデータだと思います」「GoToキャンペーンも含めた人の動き,人との接触を,この大変な時期には少し抑えて,また---」「強い財政的な支援を医療機関,介護関係の所に,ぜひ」「国のトップが,医療現場に未来に向けたメッセージを,希望というものを,発していく.そういった強いリーダーシップが求められると思います」

NHKスペシャル「新型コロナ“第3波” 危機は乗り切れるのか」

NHK総合1 2020年12月13日 午後9:00 ~ 午後9:50 (50分)

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1. 

コロナ病棟看護師:全身を覆われた状態で,5時間以上働くこともあるといいます. 「忙しいとやっぱり出られないので,なかなか外に.必然的に長時間になっちゃって,おむつを着けて入っている先輩とかもいますね」コンビニなどの弁当がほとんど.家族とも会わず,ホテルで寝泊まり.続けて10ヶ月.「自分の体と心が折れたら終わりって思いながら働いています」 西浦教授の解析:東京都.営業時間短縮⇒増加は鈍りますが,止まりません.---NHKスペシャル - yachikusakusaki's blog

 

2.

武田キャスター「スタジオには政府の分科会で会長を務める尾身茂さん.

東京感染症対策センター専門家ボードの座長の賀来満夫さんにお越しいただきました.よろしくお願いします」

 

「まず尾身さん.勝負の3週間の最終盤にさしかかっているわけですけれども,昨日は感染確認の発表が,全国で初めて1日3000人を超えましたし,東京は,これまでで最も多くなりましたね.今の感染状況を踏まえて,現状どう捉えてらっしゃいますか?」

「そうですね.強力な対策を比較的早くうった地域,例えば北海道などでは,感染増加のスピードがやや鈍化しているところもありますけど,その他の地域では,いわば,高止まり状態になっているんだと思うんですね.

この高止まりというのは一見良さそうですけども,実は,この高止まりの状態が続くと,今,西浦さんの予測がありましたように,重症者が増えて,医療への圧迫が更に強まってしまうということで,今の状態では,私は,人々の動きを少し抑制して,接触を抑制することが,極めて重要だと思っています

 

「その高止まりの一つの要因として,尾身さんは,一昨日の政府の分科会で,人々の県をまたいだ移動について指摘されていました.

県を越えた移動歴のある人が,外の人に感染させた割合が25.2%であったのに対して,県を越えた移動歴がないか,不明な人が感染させた割合が21.8%.県を越えた移動歴のある人の方が,人にうつす頻度が高かったということですけれど.

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これに関連して,もう一つ知っておきたいデータがあるそうですね」

「そうですね.最近分かってきたデータですけど,県を移動歴のある感染者の内,一体どんな人が,どの年齢層が二次感染を起こしたかというデータなんですけ.

一目瞭然なのは10代から50代の比較的若い年齢層が黒棒の高さが高い.移動している人はこの年代.

赤の棒は二次感染させた人の数ですが,これも同様の傾向.若い人たちが移動して,意図せずに感染を広げていることが分かります.

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これを見ますと,今この時期には,なるべく,県を越えた動きを控えることが重要だということを示すデータだと思います」

「GoToキャンペーンの一時停止についても言及されていましたけれど,改めてどんなお考えなんでしょうか」

「GoToキャンペーンも含めた人の動き,人との接触を,この大変な時期には少し抑えて,また,感染が下火になれば,また再開したらいい,というのが私たちの考えですね」

 

「こういった状況にあって,VTRでも見ました通り,医療現場の逼迫は大変深刻です.

今月の8日時点で,政府の分科会が示す四段階の感染状況の内,最も深刻なステージⅣとなっているのが,ご覧の五つの都道府県です.この,ステージⅣというのは,医療の提供体制が,機能不全に陥る恐れがあるとされています.

特に,東京や大阪では,重症患者の病床使用率が50%を上回っています」

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「VTRにもありましたように,医療従事者の負担というのは,限界に近付いている現場もあるわけですけど,賀来さんは,この現場の逼迫度,どうご覧になっていますか?」

「症化した患者さんに対応するためには,ベットの数だけではなくて,スタッフの数が必要なんですね.スタッフの確保が必要.そのことで,新型コロナウイルス感染症に対応することで,他の医療への影響が出てきている.東京都でも,受け入れを調整する現場で,非常に厳しい状況も出てきていますので,今後更に,医療が逼迫していくということが,このままでは間違いないことだと思います」

「今,まさに瀬戸際にいる」「はい,まさに瀬戸際だと思います」

 

「その医療崩壊を防ぐということが,喫緊の課題になってきているんですけど,具体的にどんな支援が必要だとお考えでしょうか?尾身さん」

「VTRにもあったように,医療関係者の心身の疲労が極限に来ている思うんですね.中には離職せざるをえない人もいるんですよね.医療機関にとっても実は,コロナの感染者を受け入れるということは,それ自体が病院経営に非常に圧迫になってるんですね.

そういうことで,残念ながら,ボーナスなんかも減らす病院がけっこう,半数近くあるんですよね.医療関係者の頑張りには頭が下がる思いで,彼らの使命感でやっていて,お金のためにやっているんじゃないだと思うんですけど,長丁場になる可能性があるので,ここは,少なくとも,財政的な支援というものは,今までのレベルではなく,それよりもっと強い財政的な支援を医療機関,介護関係の所に,ぜひお願いしたいと思います」

「賀来さん,いかがでしょうか」

「今,医療現場では,いつまでも終わりの見えない戦いの中で苦しんでいるわけですね.今,尾身先生が言われたように,医療現場における経済支援は,しっかしなければいけない.

もう一つですね,こういう苦しい時期に,より明確な目標と,ゴールをですね,しっかりと示していくことが必要だと思うんですね」

「目標とゴール」

「はい.国のトップが,例えば,ワクチンを何月までに終了する.あるいは,医療支援しっかりするので,そこまで頑張っていこうと,医療現場に未来に向けたメッセージを,希望というものを,発していく.そういった強いリーダーシップが求められると思います」

 

「医療現場が,崩壊の危機に直面している,その背景に,感染者の集団,クラスターが,これまでにない勢いで発生していることがあります.

11月末までのおよそ一ヶ月だけでも,800件余りと,10月の3倍近くにのぼりました.

この内,医療機関でのクラスターの発生は,100件を越えて,31件だった先月と比べると,3.4倍と,急増しているんです.

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クラスターが発生している各地の自治体は,これまでにない事態に追い込まれています」

 

(映像 国立感染症研究所の一室)

各地の感染状況を分析する国立感染症研究所のチームです.

クラスター,更新があるのが北海道旭川市と札幌市」「まだまだ全然収まらない」

 

先月以降,延べ35人を各地に派遣し,対策を支援してきました.

島田智恵主任研究員「もともと脆弱だった自治体で,クラスターが多発するようなことが起こると,一気に,それぞれの病院で,医療崩壊ということに」

 

先週,自衛隊が支援に入った北海道旭川市です.高齢化が進むこの町.第三波で初めてクラスターが発生しました.

その一つ,恵友会吉田病院です.

寝たきりや認知症などの高齢者が入院するこの病院では,200人を越す感染者が出ています.一体何が起きていたのか?

関係者に取材を重ねると,事前の備えが十分に機能しなかったことが見えてきました.

病院で感染が発覚したのは,先月上旬.発熱などの症状があった患者と看護師,9人の陽性が判明しました.

感染拡大に備え,ベットを準備してきた旭川市.この時,32床の空きがあり,全員,転院できるはずでした.

しかし,受け入れられたのは6人だけ.吉田病院に感染者が残ることになりました.

 

映像:保健所 電話応答する職員「新たに,吉田が新規が4名で---」

病院から連絡を受け,転院の調整に当たった保健所です.

 

なぜ,十分なベットがあったのに,転院させられなかったのか.

 

「背中,拭きますよ」

その理由は,感染者のほとんどが寝たきりで,介助が必要だったこと.ベットが空いていても,人手が足りないため,転院させられなかったのです.

旭川市保健所浅利豪部長「介助・介護が必要な患者は,同じ1人でも手間は3倍4倍かかかるといわれています.そこまで,手間がかかる患者さんが搬送されてくるという想定も,実はあまりしていなかった」

その後も新たな感染者が続出.

すぐに転院させられず,院内に止まる状態が続きました.感染者は200人を超えています.

 

何処ででも同じことが起こるかもしれない.備えの難しさが,改めて突きつけられています.