コロナ病棟看護師:全身を覆われた状態で,5時間以上働くこともあるといいます. 「忙しいとやっぱり出られないので,なかなか外に.必然的に長時間になっちゃって,おむつを着けて入っている先輩とかもいますね」コンビニなどの弁当がほとんど.家族とも会わず,ホテルで寝泊まり.続けて10ヶ月.「自分の体と心が折れたら終わりって思いながら働いています」 西浦教授の解析:東京都.営業時間短縮⇒増加は鈍りますが,止まりません.---NHKスペシャル「新型コロナ“第3波”---」

NHKスペシャル「新型コロナ“第3波” 危機は乗り切れるのか」

NHK総合1 2020年12月13日 午後9:00 ~ 午後9:50 (50分)

 

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「新型コロナ“第3波” 危機は乗り切れるのか」 - NHKスペシャル - NHK

新型コロナウイルス感染拡大の“第3波”に直面した日本。連日、各地で新規感染者や重症者が過去最多を更新。国の新型コロナ感染症分科会の尾身茂会長は「個人の努力に頼るステージは過ぎた」と強い危機感を示した。番組では、年末年始に向けた最新の感染予測を踏まえつつ、東京・大阪・北海道など医療や保健福祉体制の実態を報告。最新研究「行動制限分析」などから危機回避の糸口を探る。

 

 

新型コロナウイルスの治療に当たる聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市)です.

 

スタッフ「先生,めっちゃ酸素化が悪くて,意識は良いんですけど」

高齢の重症患者が相次ぐ中,ギリギリの対応を迫られています.

この日も,入院していた70代男性の容態が急変.

スタッフ「大丈夫ですか?相当悪い?」「悪いです.腹臥位(ふくがい)もできないぐらい,今,悪い状態ですね」

複数の基礎疾患を抱えていた男性.最後の砦と言われる人工心肺装置ECMOも体への負担が大きいため,使うことができません.

男性の家族へ,危篤が伝えられました.

電話連濁するスタッフ「待っている間にも,心臓が止まってしまう可能性が,一応ありますので,もし来ていただければフェイスタイム(ビデオ通話)とかにはなりますが,会えるかなと思います」

 

この病院で,重症患者用に用意した病床は,17.その内9床が埋まっています(12月10日時点).

さらに第三波では,中等症患者も急増.重症患者が回復しても,その転院先が見つかりにくくなっています.

電話する医師「受け入れ困難と言うことですね.はい,わかりました.じゃあ他,当たらせていただきます」

 

これまで,神奈川県では65歳以上や,特定の疾患がある人などは,軽症や無症状であっても,原則,入院としてきました.

しかし,今月3日,国は,基準を設けて入院患者の数を調整することを推奨する方針を決めました.

先週,神奈川県は,入院の必要性を点数で判断する新たな基準を導入しました.

 

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合計5点以上が入院の目安.

 

例えば,糖尿病を患う75歳の人の場合,無症状だと合計は4点.

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入院の目安を下回ります

 

既に運用が始まっている入院の調整.

「何歳の人?」「81歳」「かなりハイリスクだね」「11点なんで」

 

医師たちは,やむをえないと考える一方で,ジレンマもあると言います.

聖マリアンナ医科大学病院藤谷茂樹医師「これは,やはり医療資源を適切に使うということで,やむをえない.ベットが埋まって入院させることができなくなると,助かる患者さん」が助けられなくなる」

 

 

医療従事者の負担も限界に近づいています.

都内最大規模の医療機関東京女子医科大学病院(東京新宿)です.

この病院では,133人の看護師がコロナの治療や検査などに当たっています.

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「新型コロナ“第3波” 危機は乗り切れるのか」 - NHKスペシャル - NHK

 

現場の実態を知って欲しいと,看護師たちが取材に協力してくれました.

 

(防護用フェイスカバーを外している映像)

「暑い!あ〜っ」

看護師になって3年の京河祐衣(ゆい)さんです.

集中治療室ICUで重症者の治療に当たっています.

感染を防ぐため,医療用のマスクやガウンなど特殊な装備を身につけます.

「よいしょ,よいしょ」

全身を覆われた状態で,5時間以上働くこともあるといいます.

「忙しいとやっぱり出られないので,なかなか外に.必然的に長時間になっちゃって,おむつを着けて入っている先輩とかもいますね」

 

「お疲れさまです」

感染のリスクを減らすため,人と極力,接触しないように気をつけています.

食事は,コンビニなどの弁当がほとんどです.

「人と会って,ごはんを食べたりとか,話しをしたりとかするのがけっこう好きだったので,みんな,楽しそうにして羨ましいなとかは,うん〜,思います」

 

家族とも会わず,ホテルで寝泊まりしています.

(妹とのビデオ通話)

「ねえねえ,クリスマスコンサート,いつ?」「26日にある」

「行けないね」「行けないの?」

「行けない」「へ〜,残念」

こうした生活を続けて10ヶ月.疲労やストレスがたまっています.

「ほんと,明日から突然来られなくなる時が来るんじゃないかなって思うんですけど.自分の体と心が折れたら終わりって思いながら働いています」

 

 

感染対策を徹底しても,ウイルスを家に持ち帰ってしまう不安が拭いきれないといいます.

ICUで,看護師のリーダーを務める小野美佳さんです.

5歳の息子と家族3人で暮らす小野さん.

自宅に帰ると,まず玄関前で消毒.

「寒いんですよ.冬場」

さらに,家の中でも再び消毒.

(だきつこうとする息子)「手を洗うから,ちょっと待って」

子どもにうつすことだけは,避けたいと考えています.

「多分,私が一番感染源になりうるかなと,家族の中では.子どもって感染しててもあまり分からないっていうので,咳をした時とか,普通の風邪だろうを思っているけど,え〜,みたいに過剰に心配しちゃう」

 

病院では,コロナ専用病棟で働くスタッフの負担を減らそうと,応援の看護師を派遣することにしました.

「11階の血液内科と乳腺・内分泌科から来ました.よろしくお願いします」

応援の期間は一ヶ月程度に限定.精神面でのサポートも随時行い,過度なストレスがかからないよう気を配っています.

「(応援に)みんな来ているので,ついに自分の番かっていうのはありますね」

「今は,ずっと働いているかたの方がしんどいと思うんで」

 

 

今後,重症患者はどのように推移していくのか.

国内の感染状況を分析してきた,京都大学大学院の西浦博教授です.

「少なくとも医療の負荷は,これでは,休まるところを知らない状況が続くと」

西浦さんが自治体の様々な対策が,重症患者数の推移にどのように影響するのか,数理モデルで分析しました.

 

感染者数が最も多い東京都.

何も対策しなかったと仮定すると,12月後半には現在の2倍近くに増加します.

ここに,先月28日から始まった,酒を提供する飲食店などの営業時間短縮の効果を加えます.仮に第二波の時の時間短縮と同様の効果があると想定すると,増加は鈍りますが,止まりません.

それに加えて,不要不急の外出自粛など,より強い対策を直ちに実施すれば,12月の第四週には,重症患者が減少へ転じるという計算結果になったのです.

 

西浦教授「制御が今の状態でいいのかなということは,率直に考えてもらわないと,感染症診療の医療は,もしかするとインフラじゃなくなるのかもしれない.当たり前に社会で享受されているものではなくなる可能性も十分にあるということを考えに入れておかなくてはいけないな〜と」

 

 

武田キャスター「スタジオには政府の分科会で会長を務める尾身茂さん.

東京都感染症対策センター専門家ボードの座長の賀来満夫さんにお越しいただきました.よろしくお願いします」

「まず尾身さん.勝負の3週間の最終盤にさしかかっているわけですけれども,昨日は感染確認の発表が,全国で初めて1日3000人を超えましたし,東京は,これまでで最も多くなりましたね.今の感染状況を踏まえて,現状どう捉えてらっしゃいますか?」

「そうですね.強力な対策を比較的早くうった地域,例えば北海道などでは,感染増加のスピードがやや鈍化しているところもありますけど,その他の地域では,いわば,高止まり状態になっているんだと思うんですね.

この高止まりというのは一見良さそうですけども,実は,この高止まりの状態が続くと,今,西浦さんの予測がありましたように,重症者が増えて,医療への圧迫が更に強まってしまうということで,今の状態では,私は,人々の動きを少し抑制して,接触を抑制することが,極めて重要だと思っています」

 

続く