ヒガンバナを食べるハマオモトヨトウを発見.しかし,ヒガンバナは,葉がない状態でどうやって開花時期を知るのでしょうか?秋の花は,「次第に短日になる」ことを察知して花成ホルモン・フロリゲン(FTタンパク質)が誘導され,葉から茎に移動---.ヒガンバナには当てはまりませんね.「球根内部で花芽形成.土の温度を感知」「バーナリゼーションも必要」なことは分かってものの,フロリゲンの関与の仕方等,不明なことも多いようです.

我が家の庭で,咲き誇っているのは,クジャクアスターパイナップルセージですが---

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「元気だなっ」と最も感じさせてくれるのは,スイセンヒガンバナの葉っぱ.

 

スイセンはこれから花を咲かせる準備段階.

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ヒガンバナは,花茎だけを延ばして開花した後,球根に栄養を与える段階.

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ヒガンバナにとって大切なこの時期.

葉を盛んに食べる虫を発見.

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調べてみるとハマオモトヨトウの幼虫と判明.

ハマオモトヨトウ | 農業害虫や病害の防除・農薬情報|病害虫・雑草の情報基地|全国農村教育協会

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ヒガンバナだけではなく,ヒガンバナ科の植物を好んで食べているようです.

インターネット版日本農業害虫大辞典によれば

加害作物:

【花卉(かき)】アマリリスインドハマユウ,オオハマオモト,キツネノカミソリスイセンタマスダレ,ハマオモト,ヒガンバナなどヒガンバナ科

 

一度に数十個の卵を生むとされ,他にもいるのかと何日か見て回ったのですが,今のところ新たな幼虫も,食べられた痕跡も見られず.

球根を太らせて,また来年の秋のお彼岸前後に花を咲かせてくれるでしょう.

 

しかし,ここでちょっとした疑問が.

ヒガンバナは葉がない状態で花を咲かせる.球根が土の中にあるだけで,どうやって開花時期を知るのでしょう?」

 

なぜ,こんな疑問を持ったかというと----

花芽形成(花芽創始→花芽分化→花芽発達)を促す大きな要因は温度と日長時間といわれています.

そのうち日長時間による制御は,花成ホルモン(花芽形成を促す)フロリゲンを介して行われるとされ,花芽形成⇒開花の時期を決めるメカニズムとして,次のような説明がされているからです.

 

花芽とは,成長して花になる芽.

一定の条件下で,葉となる芽ができずに,花芽が誘導されます.

例えば,秋に咲く菊のような短日植物では,夏至から冬至まで,次第に短日になると花芽が形成され,開花します.

この時,「次第に短日になる」ことを察知して花成ホルモン・フロリゲン(FTタンパク質)が誘導され,葉から茎に移動します.茎頂では,別のFDタンパク質と複合体ができ,花芽を作る遺伝子(AP1遺伝子)をオンにするためです.

花を咲かせるスイッチが押される瞬間 ~フロリゲン複合体の動態を解明~ - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部 京都大院・生命 分子代謝制御学HP | 講座・分野の歴史 アンチフロリゲンの発見と光周性花成を基礎としたキクの周年生産

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花を咲かせるスイッチが押される瞬間 ~フロリゲン複合体の動態を解明~ - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部


 
球根が土の中(=日長時間を知ることができない状態)にあって,葉がない状態(センサーは葉ではない)で花茎だけが伸びてくるヒガンバナ

菊とはずいぶん違います.

葉・茎・花芽が同時にあり,花芽が茎頂にできる短日植物/長日植物は,上記のメカニズムで花が咲くのでしょうが,植物の形態は多様です.また,日長時間で開花時期が決まる植物ばかりではありません.

 

少し調べてみましたが---

「球根内部で花芽形成が行われ,その誘導の主な要因は土の温度」

「いわゆるバーナリゼーション(低温による春化:幼植物の時代に低温にあうことによって初めて正常に花芽を形成)も必要とされる」

は分かっているようですが,フロリゲンの関与の仕方等,不明なことも多いようです.

 

花が咲く時期の制御については,まだまだ分からないことも多いようです.

昨日とりあげた,返り咲き(狂い咲き).

yachikusakusaki.hatenablog.com

そのメカニズムの解明は,まだ,その先になりますね.

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以下に,植物Q&A(日本植物生理学会)の回答を掲載しておきますが---,一般向けに書いてくれてはいるのですが,それでも私には難しい.しかも2006年時点の回答です.

https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1082

質問 彼岸花はどうやって季節を知るのですか?

回答全文

 『 彼岸花はどうやって季節を知るのですか?』について私の考えを述べさせて頂きます。

1.ヒガンバナは普通9月中・下旬に開花し、開花後に葉を地上に展開させ、翌年の5月中・下旬に葉が枯死し、夏を越します。一方、球根内での花芽の分化・発達についてみますと、花芽分化は葉が生育中の4月下旬に始まります。葉が枯れた後の6月中旬に雌ずい形成期、8月下旬に花粉形成期と発達して、9月中・旬に開花します。

2.冬期、最低20℃程度の加温室で栽培すると夏にも葉を展開させて常緑性になります。しかし、このような条件下では、花芽は分化しません。このことから、ヒガンバナの花芽分化には低温遭遇を必要とし、低温はバーナリゼーションとして作用しているようです。

3.花芽分化および雌ずい形成までの発育適温は25〜30℃付近にありますが、分化・発育の可能な温度範囲は10〜30℃で広いことから、自然条件下では温度が上昇に向かう4月下旬から花芽分化が始まるようです。

4.雌ずい形成期に達すると、それまでの発育を促した高温(25〜30℃)ではかかえって発育が抑制され、適温は20℃付近に低下します。自然環境下での開花が9月中・下旬になることや関東での開花が関西より10日ほど早くなるのは、この発育適温の低下によるものといえます。

5.以上のように、ヒガンバナは温度(特に地温)を感じて花芽の分化および発達が進行しているようです。また、花芽分化に対して低温はバーナリゼーションとして作用しているようです。

 

森 源治郎(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)