リンドウ(2) 山野草の代表と見なされてきたリンドウ.島倉千代子「りんどう峠(西条八十作詞)」にあるように,どこの峠にも見られたのでしょうが---.リンドウを探すことも難しくなってしまっているようです. 県花,市町村花にリンドウを指定している所は多いのですが,現在自生しているところはわずかのよう./ 古来,人気があったリンドウですが,何故か,万葉集では詠まれることなく,古今集にもあまり取りあげられていません.

リンドウは生薬「龍胆」として大切に扱われれ,

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/10/31/002839

yachikusakusaki.hatenablog.com

同時に

秋の山野草代表でもありました.リンドウとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版

島倉千代子「りんどう峠(西条八十作詞)」冒頭

“りんりんりんどうの花咲くころサ”

“りんりんりんどうの花咲く峠”


りんどう峠 島倉千代子 1957年1月 

島倉千代子 りんどう峠 - YouTube

もあるように,峠道のどこにでも花咲かせていたのでしょうが---.

 

私は自生のリンドウを見たことがないので,せめて画像でとウェブ検索をしてみたのですが,画像配信サイト以外のものはほんのわずか.それもリンドウ属の別種のものがむしろ多い結果でした.

ウィキペディアの指摘:

「近年、そのような手入れのはいる場所が少なくなったため、リンドウをはじめこれらの植物は見る機会が少なくなってしまい、リンドウを探すことも難しくなってしまっている」 

は正確なよう.

 

リンドウは人気で,県花,市町村花に指定しているところは多い(県2,市町村23)のですが,「自生している」としているのは,熊本県阿蘇市などででむしろ例外的.

リンドウ - Wikipedia

市章・市花・市木・市鳥・市民憲章 – 阿蘇市ホームページ

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かつては多かったという長野県も,例えば志賀高原では「かつてのようにリンドウが咲く郷を取り戻そうと」「リンドウの里づくり」事業が行われている.志賀高原にリンドウの花が咲くとき|トピックス|長野県のおいしい食べ方

原生のリンドウではなく,園芸種のリンドウ栽培が盛んという理由で選んだのが岩手県八幡平市や長野県茅野市

平市 Hachimantai City Web Site|市民憲章と市の花・鳥・木 茅野市のシンボル(市章・市の木・市の花) | 茅野市

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http://ashiro-rindo.com/rindo.html

 

一方,同様のリンドウ保全・育成の取り組みが行われている兵庫県川西市が,自生に加えて,また,リンドウの自生とは縁がなさそうな神奈川県鎌倉市が,市の花にリンドウを選んだ理由は.

「源氏がリンドウを家紋として用いていたという言い伝え(実際には用いていなかったようですが,歌舞伎等では使用)」のためだそうです.

鎌倉市は市章もササリンドウ(リンドウの別名).

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鎌倉市/もっと知りたい!市章「ササリンドウ」 家紋の由来_竜胆紋

 

 

万葉集では詠まれることなく,古今集でも「物名歌」以外には取りあげられなかったリンドウ

かつては「本州、四国、九州に分布し、人里に近い野山から山地の明るい林床や草原に見られ」「人気も高い」リンドウですが,万葉集には詠まれることがなく,古今集でもあまり好まれなかったとのこと.竜胆(リンドウ) 和歌歳時記

 

清少納言が「枕草子 草の花は」で賛美し,

”りんだうは枝ざしなどもむつかしけれど,こと花どものみな霜枯れたるに,いとはなやかなる色あひにてさし出でたる、いとをかし”

 

源氏物語にも庭に植えられたリンドウが何回も描かれている

【源氏物語文中の花】 … 巻9 葵 ・ 28 野分 ・39 夕霧 『 竜胆・りんどう 』 : ★ 野草デジカメ日記★

 

にもかかわらず.

 

和歌歳時記では,「漢名から借りた名であるゆえ、和歌の調べに馴染まないと見なされたためだろう」としています.

実際,一種の遊び歌である「物名歌」には盛んに取りあげられているそうです.

 

442  我が宿の  花ふみしだく  とりうたむ  野はなければや  ここにしもくる 紀友則

  ふみしだく ・・・ 踏み散らす

 「とリウタム ノハナければや」に題(リウタム=リンドウ)が入っている.

古今和歌集の部屋

(巧みですね.粋に通じる気がします)

 

明治以降の歌人はそのような思いは抱かなかったのでしょう.伊藤左千夫太田水穂北原白秋諸氏により,リンドウが詠まれているとのことです.竜胆(リンドウ) 和歌歳時記

一首お借りして写させていただきます.

 

『桐の花』 北原白秋
男なきに泣かむとすれば竜胆がわが足もとに光りて居たり