『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(2)
鴻上尚志さんは『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(講談社現代新書Amazon)で次のように言っています.
その通りだと思います.
上記の著書『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』第一章 外国人がみつけた日本のクール・ベスト20(2009年)からの一部抜粋と,
この本の元となった,NHKBS『COOL JAPAN 発掘!かっこいいニッポン』から,300回記念番組で実施された外国人300人にアンケートに基づく「外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン」ベスト20位〜11位(2016年)を以下の記載します.
『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』
「ママチャリ」と「洗浄器つき便座」
外国大使館員や外資系企業の外国人ビジネスマンの奥様が,日本に来て気に入り,帰国の時に買って帰る二大商品が「ママチャリ」と「洗浄器つき便座」です.
日本のママチャリは,実は取り回ししやすいように前輪が後輪に比べ小さくなっています.今度ママチャリを目撃したら,確認して下さい.こんなところ,日本人の心遣いがあります.
海外にも,子供用のシートを付けた自転車はあります.が,全て後に付けるタイプのものです.外国人の奥様がママチャリを見て感心するのは,子供用の椅子が前についていて,子どもの姿を見ながら運転できる設計になっていることです.「これなら,本当に安心」と,番組に参加した外国人は口々に言います.そして「どうして,私の国にはないんだろう」と続けるのです.
これが,帰国するときに買って帰る理由です.
「洗浄器つき便座」というのは,耳慣れないいい方です.NHKの番組は特定の商品名がダメなので,こういういい方になります.一番有名は商品は,やはり,TOTOの『ウォッシュレット』でしょうか.
これは,日本人の発案ではありません.欧米には,ノズルでおしりを洗う医療用の機械が付いたトイレはありました.ただ,それを商品化して,トイレにコンパクトに組み込んだのは,日本のメーカーです.
じつは,世界でいまひとつ売り上げがのびていません.それにはいくつか理由があります.ひとつは,海外では,硬水が多く(日本は軟水です)ノズルに水がつまって故障しやすいということです.
が一番の理由は,文化的な理由です.西洋では「お尻を洗う」イコール「ホモセクチュアル」というイメージがあるのです.なので「自分はホモセクチュアルではないので,わざわざお尻を洗う必要はない」と考えてしまうのです.
このイメージがある限り,デパートやホテルなどパブリックな場所での導入は進まないのです.
ただし,日本に来て体験し,その清潔さと快適さに感動して,個人的に買っていくという人は少しずつ増えているとメーカーの方はいっていました.それが,帰国の時の買い物ですが,それだけではなく,国に戻ってから注文する人も増えているようです.
そして今は,中国を中心としたアジアの売り上げが伸びているのです.お尻を洗うことに,特別なイメージが強くない国では,文化的な壁はあまりないので,パブリックでもプライベートでも比較的簡単に取り入れられるのです.
「クールジャパン」は,基本は三本の柱に分けられます.「ポップカルチャー」「ハイテク・ジャパン」「伝統文化」です.
マンガやアニメはもちろん,「ポップカルチャー」です.折り紙や和紙は,「伝統文化」,高度な技術はもちろん「ハイテク・ジャパン」です.ただ,この分類は目安に過ぎません.知っていれば,「クールジャパン」を理解しやすい,というだけです.
ママチャリを「ハイテクジャパン」というには少し無理があるでしょうし,アイスコーヒーはこの三つに分類できません.この三つのうち二つまたは三つが絡み合って,新しいものを創った場合も多くあります.
その中で,「洗浄器つき便座」はハイテク・ジャパンを代表する一つだと思います.
外国人は日本人のトイレに驚く
2009年10月に放送した100回記念番組の時に,世界各国100人の外国人にアンケートを採りました.それまで,番組で取りあげたもので,これはクールだと思ったものを上げてもらったのです.
1位は「洗浄器つき便座」でした.
「体験前は無意味で過剰なことだと思っていた」というレベルから,「実際に体験してみると,その快適さに驚く」というギャップ,さらに「自分の国ではなかなか広がらないだろう」という思いが1位に上げたようです.
温水がでることと便座が暖かいことも,得点を上げた理由です.ロシアや東欧など寒い国から来た人たちは,「便座が暖かい」という事実に衝撃を受け,感動します.
それから,「もったいない精神」の具現化として,トイレの給水タンクで手を洗うことができるシステムに感動する外国人も多くいました.給水タンクの上から水が出て,そこで手を洗ってその水がタンクにたまるシステムのことです.これは日本オリジナルの工夫です.
あまり知られていませんが,実は,世界のほとんどのトイレでは水を流す時,「大・小」の区別がありません.ほとんど,というのはアジアで日本スタイルのトイレタンクを導入したところは,「大・小」の区別があるからです.
西洋では「大・小」の区別はありません.これも「もったいない精神」の具現化です.エコに関心のある外国人は熱烈に感動します.
ただ,多くの外国人が「フタが自動的に開くことは,必要なんだろうか?」と思っています.この「ハイテク・ジャパン」は疑問に思っているのです(笑い).
(日本でもはじめは販売に苦戦したこと,そして一つのCMにより,爆発的に広まったことは皆様ご存じの通り)
NHKBSアナザーストーリーズ「1980's CM黄金時代 3人の天才がいた」再録(2) - yachikusakusaki's blog
NHKBS「COOL JAPAN 発掘!かっこいいニッポン」
放送300回記念 「外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン!」 | NHK | cool japan 発掘!かっこいいニッポン2016年5月29日
リサ・ステッグマイヤー「2006年4月に産声をあげたこの番組が,今日300回を迎えました」鴻上尚史「すごい!300回放送したということは,その何倍もクールを発掘したんですね」リサ・ステッグマイヤー「今回は,そのクールをまとめた放送300回記念スペシャルです」
放送開始から10年.これまで取りあげてきたのは日本人にとって当たり前の文化や習慣.それが外国人を驚かせてきました.例えば,「こんな夜中に信じられないわ.花屋さんが開いているわ」(チョウ便利な24時間営業の店)---和包丁,スーパー銭湯,---
今まで出演した外国人300人にアンケートを敢行.これまで登場したクール(1000以上)の中から,本当にかっこいいニッポンTOP20を発表します.
スタジオにはこれまで何回も何度も出演してくれたおなじみの外国人10人に集まって頂きました.
「外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン」
放送100回スペシャルの時に最もクールなものに選ばれた洗浄器つき便座は殿堂入りということで,別格の扱い.
20位 居酒屋(前回11位)Izakaya
外国人が注目したのは料理の食べ方クレイグ(オーストラリア)「オーストラリアでは料理をシェアしないので最初は驚いた」ツィスマリ(ジョージア)「日本ではいろんな料理が楽しめるから,他人の料理をうらやましいと思わずにすむわね」
カナダにも進出(カナダトロントの居酒屋の映像)
(店頭で)アンドリュー(カナダ)「友人のカーラを居酒屋に連れてきたよ.彼女は初めてなんだ.
店に入ると「いらっしゃいませ」「いらっしゃいませ」「いらっしゃいませ」
元気いっぱいのお出迎え.こんなに歓待されることはカナダではないそうです.「ここで靴を脱ぐんだ」席も掘りごたつ式です.
食事はレストランお酒を飲むのはバーという欧米食べるのも飲むのもがっつり楽しめる居酒屋は新鮮だそうです.「おいしいわ」そして店の名物が登場.グラスの上に,もう一つグラス?(グラスに箸を二本.その上に小さなグラスを置き日本酒を入れる「ready?」「やー」「サケ!」「ボム!」「サケ!」「ボム!」「サケ!」「ボム!」テーブルを叩くと小さなグラスが落ちて下の大きなグラスの中へ.日本酒とビールを混ぜて飲むサケボム(sake bomb).日系レストランで流行っているのだとか.帰るときも元気いっぱいのお見送り.
「居酒屋は普通の店より活気があるのがいいよね」「同感だわ.来週末は友達を連れてくるわ」「早くもはまった」
19位 タクシーの自動ドア Automatic Doors of Taxis
ニッポンに来た外国人を最初に驚かせるもの.それはタクシーの自動ドア.雨の日荷物があるとドアが開けにくい.そんな体験から1959年に誕生.今や日本のおもてなしの象徴でもあります.ヴァンソン(フランス)「賢くて武器にも精通する.スゴイ知識を持った人だよ」ジェニー(ペルー)「日本版ジェームズ・ボンドだわ」
18位 忍者 Ninja
世界で知られるきっかけになったのだ,マンガやアニメです.ちなみにこの忍者マンガ(NARUTO)は世界で(英語・フランス語・デンマーク語・インドネシア語・マレー語・フィンランド語・イタリア語・ハンガリー語・ポルトガル語・スペイン語・ドイツ語・ポーランド語---)二億冊以上出版されたそうです.
忍者の気分を味わえるレストラン(忍者レストラン)や,体験教室は外国人観光客に大人気なんです.
17位 古武術 Classical Material Art
忍者をきっかけに本格的に武術を学ぶ人もいます.「外国人が一杯だよ」
古武術とは,平安末期から室町にかけ生まれた実践的な戦闘技術.この道場の門下生100人のうち,80人が外国人でした.ドイツ人警備コンサルタント「日本での武者修行は40回目です」 アルゼンチン大統領警備員「古武術は私の人生だね.人を殴るのは簡単だけど,自分自身を知ることが目的なんだよ.古武術は,人生を楽しむ教科書なんだ」
16位 整列乗車 Lining Up for Trains
続いては駅で見かける光景.ジェラルディーヌ(フランス)「みんなキチンと整列しているのよ.どう?驚くでしょ!!」アシタ(中国)「見て見て!降りる人のために列が別れたよ!」ジェラルディーヌ(フランス)「これが世界中に広まれば良いのに.パリなんかグチャグチャよ」
日本ではあたりませの整列乗車.効率よく乗り降りするためのマナーです.
15位 電動アシスト自転車 Power-Assisted Bicycle
「まるでお父さんが後から押してくれてるみたいだ」オマル(スーダン)「スクーターと自転車のいいとこ取りで免許もいらないなんてクールだね」
14位 紅葉狩(前回9位)Viewing Autumn Leaves
色づく秋を愛でるのは日本古来の楽しみ方です.ジャスティン(オーストラリア)「紅葉が鮮やかで感動しました」でも紅葉狩に渋滞はつきもの.外国人の皆様ご容赦を.
13位 花火(前回4位)Fireworks
「うわー,とてもきれいだ」日本の花火の特徴は鮮やかな色合いと丸い形.外国人も感動の美しさです.
12位 和風旅館 Japanese-Style Hotels
アメリカから来たトレスさん一家は日本の旅館初体験.部屋に入って「まー素敵」畳と床の間の和室にお母さん大感激.長男のクリスチャン君が気に入ったのは大浴場.「家のお風呂とどっちが好き?」「こっちが好き」「なぜ」「お父さんと一緒だから」アメリカでは旅先でも一人で入浴するのが当たり前.食事が終わると係の人が布団を敷きにやって来ました.テキパキとした連係プレイに目を奪われます.「片づけ---,食事も運んでくれるし、布団も敷いてくれるし,お父さんは王様だ」「じゃ,僕は王子様」普段家族で一緒に寝ることはないトレスさん.家庭的な雰囲気に大満足でした」
11位 ラーメン Ramen (食事満足度では1位の寿司に次いで2位.3位は刺身)
エディ(イギリス)「ラーメンは単なる料理ではなく,日本の食文化を体験できるんだよ」イラリア(イタリア)「ラーメンの虜なの」
今や世界はラーメンの虜.海外に進出した日本のラーメン店は500軒以上になるといわれています.そんな中,日本人を驚かせる出来事が.2015年ラーメンのテーマパーク(横浜)にオープンした一軒の店.この店のオーナーは,なんとイタリア人(ルカ・カタルファモさん).独学でラーメンを学び,3年前ミラノで店を出したルカさんが日本に出店したのです.豚骨をベースにドライトマトなどを加えたスープ.イタリア人の感覚を取り入れた九州ラーメンが人気です.ついに逆輸入された日本のラーメン.これはクール.
(以下続く 予定)