東京新聞2016年(平成28年)12月18日''世界と日本 大図解シリーズ''は
「全国のお雑煮 味巡り」
東京新聞:全国のお雑煮 味巡り (No.1282):大図解(TOKYO Web)
冒頭で「 お正月に幸いをもたらしてくれる年神様を迎えるため、地域の産物をもちと一緒に煮て神様と一緒にいただくお雑煮。今も地域や集落、家ごとに使う具材やだし、味つけなども異なるローカル色の強い料理です。食の均一化が進む中でも伝統の味が今なお引き継がれているお雑煮について図解します」とのこと
いつものことながら,新聞見開き大のきれいな図で様々なことを教えてくれます.
Web上にも,お餅,雑煮についてはかなり立派な記事がありますが,これだけ立派な全国のお雑煮の図はみつかりません.
でもweb上の以下のサイトは,その他の点ではかなり詳しい記述があり,どれも特色があって,美しくまとめられています.詳細は分かりませんが,手元の僅かの資料と比較するかぎり,大きな間違いはなさそうな---.
1.お餅大解剖【お餅の歴史】|100%お餅ミュージアム|全国餅工業協同組合
特に3のサイトは本当に立派.ただ残念なのはどなたが運営しているか分からない.内容がよさそうなのに,当方のブログ同様「webの信頼性」を裏付けるものがないのがやや残念.何か論を展開しようとしたとき引用文献にできません.
その点では1.はしっかりと「奥村彪生(あやお)監修」としていて,サイトの運営主体もわかります.それだけで信頼性が上がりますよね.4のサイトはyahoo! shopをとおしてお雑煮の販売も手がけているところ.各地のお雑煮を試してみるのも良いかもしれません.
以下,1と3にある図をお借りし,また,手元にあった本と比較しながら,「大図解」の内容を簡単にまとめてみます(新聞の図は登録すればweb上で見ることができるのでは---.確かめていませんが)
◎「雑煮の由来」
・本来の意味
大晦日の夜,年神様を迎え祀ったあくる日の元旦の朝,供えた餅と地元で手に入る野菜や魚を入れて食べ物にしたのが雑煮.
「大晦日の夜,年神様を迎え祀る」(⇒*).
私の子どもの頃は「父方の長野県の習慣」として大晦日はお年とりと称して,ごちそう=お節にあたるもの+αを食べる.元旦はその残りと雑煮でした.これがむしろ「正式」なんですね.
(柳田国男は)“家と子孫の繁栄を願う先祖と氏神は,稲の実りを守ってくれる田の神や山の神でもあり,一年の安泰を守ってくれる正月の年神でもあるといい,氏神は先祖であり,田の神,山の神,正月にやって来る年神でもある”,という.(新谷尚紀 氏神様と鎮守様 神社の民族史 講談社)
今でも大晦日にしっかりとしたお祝いをしている地域は意外と多いのかもしれません.先日,どの番組だったか(携帯大喜利?)新潟出身のタレントがお節を大晦日に食べると言って司会に突っ込まれていました.可哀想に.司会が知らないだけ!
ただ,私の記憶では,大晦日に正月に食べるお餅を供えてあったかどうか?鏡餅以外には供えてなかったような気がします.今調べた範囲では,鏡餅とお雑煮の餅の関係についてキチンと書いてあるサイトや本は見当たりませんでした.「神棚の餅をおろして食べる」ことに大きな意味がある」とほとんどのサイト・本が記述しているにもかかわらず---.
雑煮の餅は庶民の食べ物.他の年中行事に食べる餅同様,単にめでたい日に食べるものであって,正月といえども特に供え餅でなくても気にならなかった(鏡餅が供えてあるのですから),というようなことがあっても良いし,それが庶民感覚にはあっていると私は思うのですが.
・歴史
お正月の食べ物として広まったのは元禄時代以降.他のサイトでも同様の記載.
始まったのは室町時代で,その頃は正月料理ではなかったようです.「儀礼的な酒宴の席に出された酒肴」とのこと.
正月の料理としては「天文11年(1542)正月元日に初献雑煮」の記録があるあるそうです.
その後,記事のように全国的に広まったのでしょう.
ただ,誰もが元旦にお雑煮を食べられたわけではないようです.
「日本人は何を食べてきたか」(原田信男,角川ソフィア文庫)によれば,
大阪の奉公人は正月3日目に初めて出されたとのこと.餅は少なくとも明治時代までぜいたくな食物だったのです.
また,この「大図解」のメインテーマであるご当地雑煮の歴史としては:江戸時代初期の江戸では味噌味とすまし味があったようです.しかし,江戸時代後期には,既に雑煮の地域性が存在していて,京都・大阪・江戸では今のものと同様の雑煮であったとの記載が残っています.(以上いずれも「もち」より)
◎「雑煮の地域性」
・今も残る個性的な雑煮
「お雑煮は有名な料理人が牽引するようなタイプの料理ではなく,地域や集落で生まれた味が家庭の中で醸成されて受け継がれていく料理.代表的なものだけで100種類以上あるんです」
とお雑煮マイスターの粕谷浩子さんはいう.
そのため,味を白湯する魚介のだしもこれでもかというぐらい,沢山ある.鰹節,昆布,煮干しをはじめ,塩ザケ,するめ,干し貝柱,焼きアジ,クジラ,フグ,アゴ(トビウオ),焼きハゼなど,ハレの日にふさわしい豪華な顔ぶれ.
さらに
「東西文化の分岐点の『関ヶ原』」
と題して
「関東のかつお節,関西の昆布だし」という言葉があるように,味付けの境界線は天下分け目の戦いで有名な岐阜県関ヶ原あたりといわれる.
(小豆文化圏もあるそうで,民俗学的には注目に値する文化とのことです「もち」)
雑煮に使うモチも,東日本は角もち西日本では丸もちが主流で,例外はあるものの関ヶ原のあたりを境目にわかれる.
とありました.
ここで大図解を見て頂きたいのですが---新聞の図全部はいくらなんでも厚かましいし,さすがに著作権に引っかかるでしょう.
詳しさではかないませんが,他のサイトのものを引用させて頂きます.ほんの一部でそれぞれのご当地雑煮は出てこない確率の方が高いのでしょうが,多様な雑煮の地域性を垣間見ることはできます.詳細な説明はそれぞれのサイトを訪れて確かめて下さい.どちらのサイトも訪れる価値が十分ありますよ.
お餅大解剖【お雑煮MAP】|100%お餅ミュージアム|全国餅工業協同組合