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「日本スゴイ」自信のなさの裏返し?(東京新聞2016.12.23朝刊こちら特報部) でもNHKBS「cool japan」は大好きな番組の一つ.「洗浄機つき便座」を殿堂入りさせた番組です. 「クール・ジャパンを知り,楽しむことは,未知なる自分と未知なる世界を知り,楽しむことと同じだと思うのです」鴻上尚史『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(1)

東京新聞2016年(平成28年)12月23日朝刊こちら特報部「テレビで本で『日本スゴイ』ブームの行く先は」

冒頭には

「テレビや本は今年も『日本スゴイ』の称賛であふれ返った。伝統文化もハイテクも全部スゴイ! テレビ各局が力を入れる年末年始の特番も日本礼賛のオンパレードである。だが、ちょっと待て。自己陶酔の先には何が待っているのか。この間、『世界の報道自由度ランキング』などで日本メディアの評判は下落の一途をたどった。戦時下の日本でも『世界に輝く日本の偉さ』が強調され、やがて破局を迎えた。タガが外れ気味の『スゴイブーム』を斬る」とありました.

見出しは「年末年始の特番でも目白押し」「外国人に褒めてもらい,良さ『再発見』」「自信のなさの裏返し」----

この記事の対象になっていた本やテレビ番組は見ていないのでなんとも言えませんが,言わんとすることは分かる気がしました.

でも,私の好きな番組の一つにNHKBS「cool japan 発掘!かっこいい日本があります.

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 | NHK | cool japan 発掘!かっこいいニッポン

 

webサイトの宣伝文句は

「「COOL JAPAN」というキーワードが世界中で飛び交っています。
ファッションやアニメ、ゲーム、料理など、私たちが当たり前と思ってきた日本の様々な文化が外国の人たちには格好いいモノとして受け入れられ、流行しているのです。
COOL JAPAN  発掘!かっこいいニッポン』は外国人の感性をフルに活かして、クールな日本の文化を発掘して、その魅力と秘密を探ろうという番組です。」.司会は劇作家鴻上尚史リサ・ステッグマイヤー

楽しめますし,私の知らない日本の現状・文化等々を新しい視点で伝えてくれます.

司会の鴻上尚志がこの番組を下敷きに著した『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(講談社現代新書)という本が出版されているのを知り,パラパラ読んでみました.

この番組が東京新聞の指摘する「日本スゴイブーム」と一線を画しているのがよく分かりました.

冒頭と最後の部分を少しだけ引用します.NHKの宣伝文句では分からない番組が伝えようとしている内容が少し見えるのではないかと思います.

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 アマゾンイメージ

プロローグ「クールジャパン」とは何か?

「アイスコーヒー」の衝撃

2006年4月からNHKBS放送で,『cool japan』という番組を司会するようになりました.ありがたいことに,番組はずっと続いて,10年目に突入しました.

番組では毎回テーマを決めて八人の外国人と一緒に話し合います.八人の外国人は,タレントではなく,学生や仕事で日本に来たり,夫と共に赴任した人たちです.

番組が始まった当初,「日本でこれはクール(かっこいい・優れている・素敵だ)と思ったものはなに?」と質問しました.

彼らは彼女らは,「洗浄機つき便座」「ママチャリ」「アイスコーヒー」と言いました.

司会をしていた僕は,まず「アイスコーヒー」に驚きました.「どうして『アイスコーヒー』がクールなの?」と素朴に訊くと,イタリア人が「私の国になくて,日本に来て初めて飲んで感動したから」と答えました.番組に出ていた他のヨーロッパ人やブラジル人,ロシア人がうなずきました.

彼ら彼女らは口々に「日本に来て,夏,暑いときにアイスコーヒーを飲んで,本当に美味しかった,自分の国ではどんなに暑くても,コーヒーはホットしかない」と言いました.

僕は本当に驚きました.

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ヨーロッパやブラジルの人たちがアイスコーヒーを発想しなかったのは,「コーヒーは香りを楽しむものだ」という絶対のルールがあるからです.冷たくしてしまうと,香りを楽しめなくなると思っているのです.

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ともあれ,日本でアイスコーヒーを初めて飲んだ時「なんだこれは!?」と抵抗を示した外国人も,何回か飲んでいる内に,「これは美味しい」となる人がほとんどのようです.

「アイスコーヒー」は日本人が知らないところで,「クールジャパン」なのです.

 

日本をちゃんと知る

九年前『cool japan』という番組を始めた時は,まさか,こういうものが外国人にとってクールなもの,つまり「クール・ジャパン」と思われているとは夢にも思いませんでした.やがて,番組を続けていく内に,どうも,日本人が考える「クール・ジャパン」と,外国人が考える「クール・ジャパン」は,違うんじゃないかと思うようになりました.

現在,(番組ではなく,一般的な意味での)「クール・ジャパン」は,いつの間にか,「官主導の『マンガ・アニメ』を中心とした売り込み戦略」みたいに思われ始めました.国が「クール・ジャパン」と名付けて,何でもかんでも売り出そうとしている,そんなイメージです.これに反発するのは,ある意味当然かもしれないと思います.

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経済産業省が2010年にクール・ジャパン室という部署を作ってから,じつは,番組にも反発するメールがくるようになりました.国の方針に従った番組だと思われているのです.

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そんなメールをもらうたび,僕はじつにもどかしい思いをしていました.その文脈で語られている「クール・ジャパン」は,僕が出会った「クール・ジャパン」」とずいぶん違ってるんじゃないか.それがこの本を書く動機の一つになりました.

そもそも僕が『cool japan』という番組の司会を引き受けさせてもらったのは,日本のことをちゃんと知りたいと思ったからです.

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日本の良いところと悪いところを,日本人が願望や感情で決めるのではなく,外国人の具体的な言葉で知りたいと思いました.

 

人生を変えた「ストレート・パーマ」

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アメリカ人の若い女性が「私にとってのクール・ジャパンは,日本の『ストレート・パーマ』」と嬉しそうな顔をしました.一瞬,意味が分からず問い返すと,彼女は照れたように微笑みました.

「私はものすごい天然パーマで,髪がちりちりでした.なんとかしてストレートの髪になりたかったんです.いろんな美容室に行ったんですけど,どうしてもストレートにならなかったんです.そうしたら,」ある美容室で『うちではダメだから日本人の経営している美容室に行け』って言われたんです.半信半疑で行ってみると,日本のストレート・パーマ(英語では,ジャパニーズ・ストレイティングと言っていました)はアメリカの美容室がどうにもできなかった私の縮れたくせっ毛を見事にストレートにしてくれたんです」

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目の前の彼女は,ストレートのさらさらヘアで,とても都会的で自身に満ちていました.彼女はまっすぐに伸びた髪をかきあげながら,本当に幸福そうに微笑みました.

「日本のストレート・パーマが完全に人生を変えてくれたの」

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そして思いました.彼女にとっての日本は,彼女の人生を前向きに変えた国として胸に刻まれるだろう.それは日本にとっても彼女にとっても,そしてアメリカにとっても日本人にとっても悪いことではないだろうと.

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世界にこんな見方があり,こんな考え方がある.多様であることを楽しむことは,きっと自分自身の人生も豊かにし,深くすることになるのです.

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外国人がみつけた日本のクール・ベスト5 2009年10月 外国人100人へのアンケート結果から

1位「洗浄機つき便座」 2位「お花見」 3位「100円ショップ」 4位「花火」 5位「食品サンプル

(同じ内容のアンケート結果に基づく「放送300回記念 『外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン!』」の放映が今年5月にありました.この時「洗浄機つき便座」は殿堂入りしていて,それ以外のベスト20を発表していました.この内容についてはまた機会がありましたら-----)

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最後に

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マンガ家のしりあがり寿さんのツイッターに,「久しぶりにネットやテレビを見ていたら,なにやら『日本はいい国』みたいなメッセージが多くて怖くなった.八十年代のディスカバージャパンのキャンペーンを思いおこせば,あれは『日本を振り返る』みたいな余裕が感じられた.だけど今は『ニッポンにしがみつく』崖っぷちみたいな感じ.ブルブル---」というのがあって,思わずヒザを叩きました.僕が言いたかったことは,こういうことなのです.

もちろん,僕だって,「ストレート・パーマ」や「日本の職人」を知ると,日本人として誇らしくなります.日本人に生まれたことを喜びます.けれど,それと,日本人であるということだけで無条件に偉くなったと感じることは別だと,厳しく自分を戒めるのです.

 

それでは「クール・ジャパン」を知り,楽しむ意味はなんでしょうか.

それは,冒頭に書いたことの続きですが,結果的に自分をよく知ることになるということだと思います.

東洋と西洋,日本とアジア,さまざまなものがぶつかることで,いろんなことが見えてきます.

二つのことがぶつかると,意外なことを思いつきます.もう行き詰まったとか,もうダメだと思った時に,思わぬ方向から発想が浮かび,事態を打開できたことは誰にもあると思います.

そのきっかけをくれるものが,クール・ジャパンだと思うのです.クール・ジャパンを知り,楽しむことは,未知なる自分と未知なる世界を知り,楽しむことと同じだと思うのです.