相模原の障害者施設殺傷事件を受けて政府が成立を目指す精神保健福祉法改正案を巡り,「患者の監視強化につながる」と主張する当事者団体が8日,衆院議員会館で抗議集会を開いた.事件で重傷を負った尾野一矢さん(44)の父剛志さん(73)も参加.改正案が,退院後支援計画をつくる協議会に警察の参加を想定している点を「間違いだ」と批判した. 共同通信6月8日 / うつ病など多くの人に精神疾患の診断名がつきうる時代.一度でも何らかの診断名をつけられて措置入院させられれば,警察が無期限に監視することが可能になる.姜文江

14日夜のテレビ各局ニュース番組/主要新聞ウェブニュースでは「参議院で,いわゆる『テロ等準備罪』新設法案が異例の国会審議を経て明日未明にも成立する可能性」を報じています.

共謀罪:今夜成立図る 委員会採決省略、与党が提案 - 毎日新聞

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そのような中で1週間前の精神福祉法改正案関連のニュース記事をブログに起こすのは,やや時機を逸している気もしますが,同法案の国会審議はいまだに続いているようです(この記事の最後に付け加えました).また,いわゆる『テロ等準備罪』新設法案と精神福祉法改正案は,しっかり比較したわけではありませんが,かなり似かよった側面を持った法案のような気もします(「2人なら共謀罪 1人なら精神保健福祉法」のスローガンを掲げている団体もありました:精神保健福祉法 | 全国「精神病」者集団).

一般のテレビ・新聞では精神福祉法改正案についてほとんど報道がないこともあり,6月7日 精神保健福祉法の改正案: 原昌平/   日本障害者協議会 - yachikusakusaki's blog に引き続いて,再び取りあげたいと思います.

 

精神福祉法改正案に抗議集会

被害者家族「間違いだ」と批判

共同通信 2017/6/8 18:21

https://this.kiji.is/245470347766449660?c=113147194022725109

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 相模原の障害者施設殺傷事件を受けて政府が成立を目指す精神保健福祉法改正案を巡り,「患者の監視強化につながる」と主張する当事者団体が8日,衆院議員会館で抗議集会を開いた.

事件で重傷を負った尾野一矢さん(44)の父剛志さん(73)も参加.改正案が,退院後支援計画をつくる協議会に警察の参加を想定している点を「間違いだ」と批判した.

  改正案は,措置入院患者への関与強化を柱とし,措置入院を決めた自治体が医療機関や警察などと退院後支援計画を作成することを定めている.

 

http://www.jngmdp.org/schedule/4150 

精神障害/精神医療 2017 http://www.arsvi.com/d/m2017.htm 

2017/06/08 11:30~14:30

こんどの精神保健福祉法[改正]案は絶対におかしい!!

6・8院内集会 @衆議院

~これは精神障害がある人々への政府からのヘイトクライムです~

 

 5月17日,参議院本会議において精神保健福祉法改正法案が可決され,衆議院に送付されました.

 

この法案は,当初の趣旨説明文にあったような相模原障害者施設における殺傷事件の再発防止に端を発した立法事実のない法案です.

 

政府は,法案審議中にその趣旨説明を削除するという暴挙に出ましたが,どんなに取り繕うとも,精神保健福祉法を事件の再発防止という法の目的にない治安目的で用いようとすることに変わりはなく、法治国家としてもあるまじきことです.

これは大臣が謝罪すれば済むということでなく,直ちに法案を取り下げるべきです.

 

このような法案が仮に衆議院でも可決されることになれば,精神障害者に対する監視が強まり,精神障害者を危険視する偏見がさらに助長されてしまうことになります.

 

措置入院をした人への退院後支援計画の策定は各自治体の義務となっており,当事者抜きでも可能となったままです.

また,精神障害者支援地域協議会に警察が参加し,個別の情報が警察に伝わる可能性もあります.

 

以上のような大きな問題点を残したまま採決が行われ,数の力で参議院においては可決されるに至りましたが,到底容認できるものではありません.どうか多くの方々と共に声をあげ,この法案を廃案にすべく力を合わせていきましよう.

◇日時:2017年6月8日(木) 11:30~14:30(受付11:00より)

◇場所:衆議院第一議員会館 多目的ホール千代田区永田町2-2-1)

〔共催団体〕(順不同/2017.5.23現在)
病棟転換型居住系施設について考える会、日本障害者協議会(JD)、全国「精神病」者集団、医療観察法予防拘禁法)を許すな!ネットワーク、「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会、こらーるたいとう、ダルク女性ハウス、きょうされん、全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)、大阪精神医療人権センター、大阪精神障害者連絡会ぼちぼちク ラブ、兵庫県精神障害者連絡会

 

 

http://www.asahi.com/articles/DA3S12967767.html

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措置入院の法改正 精神障害者への人権侵害だ 姜文

朝日新聞2017年6月2日

 今国会で,自傷他害の恐れがある精神障害者を強制入院させる措置入院者について,退院後支援計画の作成が義務付けられる精神保健福祉法改正案が審議されている。法案が通れば,計画の作成に警察の参加する協議会が関わることや,個人情報に関する事項が本人同意なく転居先の自治体に通知されることが可能になる.

 

 近年,防犯対策や虐待防止などの観点から地域の話し合いに警察が関与することは多い.私は警察との連携自体を否定するものではないが,法案は精神障害者を虐待の被害から守る目的ではなく,加害者予備軍とみなしている。精神障害者に対する差別・偏見を助長することにならないか.

 

 法案は,措置入院者全員について支援計画作成を義務付けながら,計画の期限などは明記されておらず,計画作成で得られた個人情報の抹消が保障されていない.

うつ病など多くの人に精神疾患の診断名がつきうる時代.一度でも何らかの診断名をつけられて措置入院させられれば,警察が無期限に監視することが可能になる。「共謀罪」法案以上に市民の内心に踏み込み,あいまいな要件で永続的な監視を可能にする.

 

 審議では,計画作成に本人参加を原則とすること,警察の入る協議会では原則として個人情報は取り扱わないことなどは、運用で対応すると繰り返し答弁された.しかし,条文上明記されないのであれば,前記の懸念は残る.

 

 法案は,医療に対する不信感を生じさせかねない点で,適切な医療を必要とする精神障害者の医療を受ける権利すら侵害する.これらの深刻な人権侵害は,運用上のガイドラインで対応すべきではなく,法律に明記して歯止めを設けるべきである.

 

 法案提出の背景には,昨年に相模原市の障害者施設で起きた殺人事件があったが、精神障害と事件の関連性は認定されていない。参院の審議では,改正する根拠について批判が集中し,審議途中に厚生労働省は法案概要から再発防止に関する改正趣旨を削除した。趣旨が変わったなら法案も撤回すべきで,犯罪予防策が必要なのであれば,精神保健福祉法改正ではなく,正面からそのための法制度を提案するべきである.

 (きょうふみえ 弁護士)

 

審議経過情報

国会での法律の審議状況を調べたのは初めてです.

法案の名前をかなり正確に記載できれば,あとは" 国会 "  " 審議状況 " で調べることができることがわかりました.

閣法 第193回国会 34 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案

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