「生きたかった 相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの
大月書店」より
やまゆり園事件に寄せて
武田麻衣子 精神障害当事者，社会福祉法人はる（東京都世田谷区）
人間というものは，本当に正直なものだと私は思っています．私も幼いころ，自宅の近くに大きな精神科の病院があり，正直怖かったです．私も早い頃からこの病気になりましたが，実際，自分がこの世界に必要ないとか，差別されることもありました．
「困ったわね，こういう人がこの辺りに住まれると」という態度を幾度となくとられました．けれど，自分が社会の一員であることに間違いはないと考えて，当たり前のように服薬しながら暮らしています．
けれど，やまゆり園事件のようなことが起きてしまい，好奇の目で見られていたことに気がついてしまい，悲しいです．外で自分の何気ない話をするのでさえ，ひどく気をつけねばならなくなり，グループホームでも，眠る直前にリビングの鍵を確かめたりしています．
ただでさえ悩みの多い病気なのに，支援者まで信じられなくなったら，私たち障害者はますます生きづらくなって困ります．
私は，たとえ自分が障害者であろうと，地域の方にご迷惑をかけず，自分なりに少しでも快適に生きたいです．
お願いです．もう，こんな怖い事件の話は知りたくもありません．テレビでニュースを見たとき，心の目をつむって，あえて忘れてしまいました．それほど私は怖かったのです．この気持ちはきっと私だけではないと思います．私たちは毎日生活するだけでも疲れます．健常者より多分ずっと疲れていると思います．でもそんな文句を言う障害者は誰もいないです．
お願いです．ただでさえ涙が出るほど悲しい病気です．せめて，これ以上の苦しみを私たちにつくらないでください．悲しいです．
私たちは必死で生きています．皆さん同じでしょうが，私たち障害者も同じです．
