コリアンダー1:葉(パクチー)の好き嫌い 葉も実も利用されるコリアンダー.日本でタイ語のパクチーとして広まった葉は,大きな問題を抱えています.人によって好き嫌いがはっきり分かれること.東アジアでは21%の人が嫌いと答えるとの調査もあります.遺伝子が関係しているらしいと日本語の検索でわかりますが,はっきりさせるために原著を当たってみました.「嗅覚受容体遺伝子近傍の遺伝子変異がコリアンダーの嗜好性に影響を及ぼす」.要約と背景をDeepL翻訳で転載させていただきます.

スパイス(スパイス&ハーブ)について,まとめています(すでに取り上げたシソ目シソ科のハーブは省きます).

今日はコリアンダー

 

スパイス(スパイス&ハーブ)8

コリアンダー1 葉(パクチー)の好き嫌い

コリアンダー(Coriandrum sativum)は,葉も果実も利用される,よく知られたスパイス(ハーブ&スパイス).

セリ科特有の美しい花と葉.熟した実は芳香をもちます.

https://en.wikipedia.org/wiki/Coriander https://housefoods.jp/products/catalog/cat_1,spice2,youfu,coria.html https://www.google.com/search? S&B コリアンダーシード

 

葉は,パクチー(タイでの呼び名)が日本語の一般名になっているように思います.タイ料理ブームによって,何年か前に一気に広まりました.

Coriander Thai Cuisine

南アジアやメキシコで人気の香草で,様々な名前で呼ばれています.

シャンツァイ(香菜 中国)/ ザウムイ(ベトナム)/ ダーニヤorコトミール(dhaniya or kothmir インド) / シラントロ(cilantro メキシコでの呼び名 /スペイン語

 

 

嗅覚受容体遺伝子近傍の遺伝子変異がコリアンダーの嗜好性に影響を及ぼす

このコリアンダーの葉(パクチー).大きな問題を抱えています.

人によって好き嫌いがはっきり分かれること.私もどちらかと言えば苦手です.しかし,好きな方は本当に好きで,何にでも入れて食べている!

日本語で「パクチーの好き嫌い」と検索すると----

https://www.google.com/search? パクチーの好き嫌い

その原因が遺伝によるものらしいと言うことがわかります.

しかし,日本語のどの記事も,何を言わんとしているのかがどうもはっきりしません.情報の大元に当たっていないからだと思います.

 

そこで,「パクチーの好き嫌いは遺伝によるものらしい」という記事の大元となった研究論文を当たってみました.

専門的な言葉が随所に出てきて,わかりにくい部分は残りますが,一連の日本語のあやふやな解説よりははっきりします.

嗅覚受容体を構成するDNAの一つの塩基の違いにより,パクチーの好き嫌いが決まってくる可能性を示した論文かと思います.

 

以下,論文のABSTRACT(要約)とBACKGROUD(背景)の部分をDeepL翻訳で転載させていただきます.

 

その前に---

同じジャーナルに掲載された別の論文(Flavour volume 1, Article number: 8  2012)に,どのぐらいの割合でパクチーの好き嫌いが分かれるかを調べた結果が掲載されいました.

その数字は以下の通りです.東アジアでは嫌いな人が21%ですが,パクチーをよく食べている国では,嫌いな人は少ないという結果です.この違いが全て遺伝的なものか,習慣がそうさせたのかは不明です.

https://flavourjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/2044-7248-1-8

「嫌いな人の割合は3%から21%であった.コリアンダーが嫌いな被験者の割合は,東アジア人で21%,白人で17%,アフリカ系で14%,南アジア人で7%,ヒスパニック系で4%,中東系で3%であった.」

 

 

A genetic variant near olfactory receptor genes influences cilantro preference

Flavour volume 1, Article number: 22 (2012)

https://flavourjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/2044-7248-1-22

Nicholas Eriksson, Shirley Wu, Chuong B Do, Amy K Kiefer, Joyce Y Tung, Joanna L Mountain, David A Hinds & Uta Francke

 

ーDeepL翻訳ー

嗅覚受容体遺伝子近傍の遺伝子変異がコリアンダーの嗜好性に影響を及ぼす

(ニコラス・エリクソンら)

 

Abstract 要約

背景

シラントロ またはコリアンダーとして知られるCoriandrum sativumの葉は,世界中の多くの料理に広く使われている.しかし,コリアンダーは良性の料理用ハーブとは言い難く,好みが両極端に分かれることがある.多くの人がコリアンダーを好む一方で,石鹸や汚れのような味や臭いがすると主張する人もいる.この石鹸のような,あるいは刺激的な香りは,コリアンダーに含まれるいくつかのアルデヒドに起因するところが大きい.コリアンダーの嗜好性には遺伝的な要素も疑われているが,特定のメカニズムについては今のところ何もわかっていない.

研究結果

ここでは,コリアンダーが石鹸のような味がするかどうかを回答したヨーロッパ系の14,604人を対象としたゲノムワイド関連研究(a genome-wide association study)の結果と,コリアンダーが好きかどうかを回答した11,851人(独立した一群)を対象とした関連解析結果を示す.我々は,コリアンダー嗜好群において確認された,石鹸味の感知と有意に関連する一塩基多型(SNP)を発見した.このSNP,rs72921001(p=6.4×10-9,A対立遺伝子あたりのオッズ比0.81)は,11番染色体上の嗅覚受容体遺伝子のクラスター内に存在する.これらの嗅覚受容体遺伝子の中にはOR6A2があり,コリアンダーに特徴的な匂いを与えるいくつかのアルデヒドに対して高い結合特異性を持っている.また,我々のコホートにおけるコリアンダーの石鹸味の検出の遺伝率を推定したところ,一般的なSNPによってタグ付けされる遺伝率は約0.087と低いことが示された.

結論

これらの結果から,コリアンダーの味覚知覚には遺伝的要素があることが確認され,コリアンダー嫌いは嗅覚受容体の遺伝子変異に由来する可能性が示唆された.我々は,嗅覚受容体遺伝子群の1つ,おそらくOR6A2が,ヨーロッパの集団におけるコリアンダーからの石鹸臭の検出に寄与する嗅覚受容体である可能性を提唱する.

 

Background背景

コリアンダー(Coriandrum sativum)は,少なくとも紀元前2千年頃から栽培されてきた植物である.その果実(一般にコリアンダーシードと呼ばれる)と葉(シラントロ またはコリアンダーと呼ばれる)は,多くの料理の重要な構成要素である.特に,南アジア料理では葉と種子の両方がよく使われ,ラテンアメリカ料理では葉がよく使われる.

コリアンダーの有用性は何世紀にもわたって議論されてきた.プリニウスは,コリアンダーには重要な薬効があると主張している.「vis magna ad refrigerandos ardores viridi」(「緑色でありながら,非常に涼しく爽やかな性質を持っている」).ローマ人は,モレトゥム(今日のペーストに似たハーブ,チーズ,ニンニクのスプレッド)を含む多くの料理に葉と種子を使用した.北京語のコリアンダー(xiāngcài)は,文字通り「香菜」を意味する.

しかし,特に葉は長い間,熱烈な憎しみをも掻き立ててきた. 例えば,ジョン・ジェラードは「毒々しい」葉を持つ「非常に臭いハーブ」と呼んだ.

コリアンダーがなぜこれほどまでに認識が分かれるのかはわかっていない.コリアンダーを嫌う人の割合は,家系によって大きく異なるが,曝露頻度などの環境要因の違いによってどの程度説明できるかは明らかではない.双生児研究において,コリアンダー嫌いの遺伝率は,匂いについて0.38(信頼区間(CI)0.22-0.52),風味について0.52(CI 0.38-0.63)と推定されている.

コリアンダーのにおいは,しばしば刺激的または石鹸のようであると表現される.証明はされていないが,コリアンダー嫌いは味よりもむしろ匂いに大きく左右されることが疑われている.コリアンダーの主要な香気成分は,様々なアルデヒド,特に(E)-2-アルケナールとn-アルデヒドから成る.コリアンダーに含まれる不飽和アルデヒド(主にデカナールとドデカナール)は,フルーティー,グリーン,刺激的と表現され,(E)-2-アルケナール(主に(E)-2-デセナールと(E)-2-ドデセナール)は,石鹸,脂肪,「コリアンダーのような」,または刺激的と表現される.

いくつかの遺伝子ファミリーが味覚と嗅覚に重要である.TAS1RとTAS2Rファミリーは甘味,うま味,苦味受容体を形成している.嗅覚受容体ファミリーは,ヒトゲノム中に約400の機能的遺伝子を含んでいる.各レセプターは一連の化学物質に結合し,特定の匂い物質や味物質を認識することができる.これらの受容体の多くにおける遺伝的差異が,味や匂いの感じ方に関与していることが知られている.