多くの家庭の食卓に,必ずと言って良いほど見られるキュウリ.
中国語の胡瓜(西域民族・胡の瓜という意味)を日本風に読むことで,キュウリと呼ばれるようになったと思われますが---
17世紀の日葡辞書(にっぽじしょ)の記述から,はじめはキウリと発音されていたと考えられています(日本国語大辞典).
以前は表記も様々で,例えば,黄瓜と書かれている例はよく知られています(ニッポニカ).木瓜と書かれているのを見たことがありますが,これは「ボケ」と読むのが一般的.明らかな間違いですね.
https://japancrops.com/cultivars/cucumber/bloomless-kyuri/
注意すべきは,少数派ながら,非常に嫌悪感を覚える味を感じる人がいることです.私の知人にも複数います.
アメリカ人にも少なからずいるそうで,遺伝的なものとの説もあります(キュウリの苦みについては証明されていませんが,一部の苦み成分の感受性は遺伝的に異なることは知られています).https://www.newworldencyclopedia.org/entry/Cucumber.
https://discover.hubpages.com/food/i-hate-cucumbers
そして,歴史的に見ると,ポピュラーな野菜として世界的に認識されたのは,かなり新しいのかもしれません.
キュウリの原産地はインドとされています.
10世紀には日本へ入っていたにもかかわらず
(「和名抄(10世紀)」に記載されていること,平城宮跡から種子が出土したことなどから 日本国語大辞典),
近世までは野菜として重視されませんでした.
水戸光圀は「毒多し、植えるべからず、食べるべからず」と説いているそうです.(ニッポニカ https://kotobank.jp/word/キュウリ-764093 )
古代ローマではかなり広まっていたヨーロッパでも,中世のイギリスではキュウリに対する偏見
(キュウリに嫌悪感を抱く人が必ずいるので,必ずしも偏見とは言ませんが--)
が見られたそうです.(ニッポニカ,日本国語大辞典)
どのような経緯でキュウリがポピュラーな野菜になったのかは調べきれていませんが,その過程では,各国の新たな食生活に合わせた,新しい品種の選別も重要な役割を果たしたと思われます.
現在,日本で主流の品種は,華北型・白イボ・ブルームレスの品種.
まとめては見たものの---
専門家でない私には,わけがわかりません.以下,わからないまま,それぞれの解説を引用してみますが,最近の日本の傾向は,あまりにも「見た目重視」であるような気もします.
▽華北型:世界のキュウリには多くの品種がありますが,次の五つに大別できます.(ニッポニカ https://kotobank.jp/word/キュウリ-764093 )
:華南型,華北型,ピックル型,スライス型,温室型
華南型は日本に古くからあった品種.
華北型は,日本へは明治以降定着した,肉質がより優るとされる品種
▽白イボキュウリ:華北型の内,初めに伝わったのが黒イボキュウリ.白イボ品種より皮が厚く味が濃いとされています.
白イボキュウリは,緑色が鮮やかで,皮が薄く,歯切れがよいのが特徴.(alic:https://www.alic.go.jp/content/001162842.pdf )
▽ブルームレス
ルーラル電子図書館( http://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#koumoku=14738 )によれば,
:キュウリなどの果皮表面に生じる白いロウ質粉状の物質をブルーム(ワックスブルーム)と呼び、キュウリではほとんどの品種で程度の差はあれ発生します.しかし、ある種のカボチャを台木としてキュウリに接ぎ木するとブルームのないキュウリが収穫できます.
ブルームレスキュウリはブルームが生じなくなるほか,果皮の光沢が増し,外観は美麗になります.一方,果実の内容としては,果皮が硬くなる反面,果肉が柔らかくなる傾向があり,品質低下が指摘されています.しかし,ブルームが農薬と勘違いされるためか,消費者がブルームレスキュウリを指向することや,その他の外観の良さも消費者に好まれ、現在、普及しているキュウリのほとんどがブルームレスキュウリになっています.
一方,「白い粉はみずみずしさと美味しさの証」として,販売に力を入れている所もあります.理解できます.
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000028283.html